債務整理

債権者・債務者の関係とは?債権ってどんな権利?

債権者とはお金や物・サービスを与えた相手に対価を請求する権利を持っている人のこと。債務者とはお金や物・サービスを提供してくれた相手に返す義務を負う人のことです。債権者と債務者はどのような関係になるのか、債権とは具体的にどのような権利のことなのかを徹底解説します。債務者は義務を果たせないと強制執行などの法的手続きをされかねません。給料の差押えといった最悪な事態を避けるためにも法律のプロに相談しましょう。

目次
  1. 1. 「債権者」とは請求する権利がある人のこと
    1. 1.1. 税金や年金などは役所や税務署が債権者となる
  2. 2. 「債権」とは請求できる権利のこと
    1. 2.1. 契約により発生する債権
    2. 2.2. 契約書を交わさなくても契約は成立する
    3. 2.3. 事務管理により発生する債権
    4. 2.4. 不当利得による債権
    5. 2.5. 不法行為による債権
  3. 3. 請求する側の債権者とされる側の債務者
    1. 3.1. 債権者が行使できる効力とは
  4. 4. 知って得する!債務者についての役立つ知識
    1. 4.1. 連帯債務者とは
    2. 4.2. 第三債務者とは
  5. 5. 契約内容により異なる債権者と債務者の関係
    1. 5.1. 双方に債務の義務がある売買契約の関係
    2. 5.2. お金の貸し借りにおける債権者と債務者の関係
    3. 5.3. 債権者と債務者が同一になることも
  6. 6. 債権者と債務者以外の第三債務者の存在
    1. 6.1. 債権者にとって重要な第三債務者
    2. 6.2. 債権執行で第三債務者に請求がいく場合
    3. 6.3. 債権譲渡で債権が移転する場合
    4. 6.4. 債権譲渡の通知の重要性と対抗要件を満たすための2つの方法
  7. 7. 督促状が届いたら債務者がやるべきこと
    1. 7.1. 督促状を放置すると一括請求させることも
    2. 7.2. 督促状は借入先から届くとは限らない
    3. 7.3. 給料などの財産差押えを予告する催告書
    4. 7.4. 裁判所から「訴状」が届いたときの対処法
  8. 8. 債権者からの一括請求で返せない時の解決法
    1. 8.1. 「債務整理」も解決法のひとつ
  9. 9. 昔の債務の督促状は時効成立の可能性も
    1. 9.1. 5年、10年と返済も請求もなければ時効は成立する
    2. 9.2. 「時効の援用」手続きをしなければ成立しない
  10. 10. 担保を持つ債権者と持たない債権者
    1. 10.1. 担保とは万一返せなくなった場合の保証
    2. 10.2. 保証人は「人的担保」、不動産は「物的担保」
    3. 10.3. 債権者にとっては担保があっても回収不能は避けたい
    4. 10.4. 何を請求するかにより異なる債権の種類
    5. 10.5. 特定物債権
    6. 10.6. 種類物債権
    7. 10.7. 金銭債権
    8. 10.8. 利息債権
    9. 10.9. 選択債権
  11. 11. 債務者と債権者の関係 ―身近な例―
    1. 11.1. 土地や家を売買した場合の関係
    2. 11.2. 消費者金融からお金を借りた場合の関係
  12. 12. 債権者が債務者に行使できる5つの効力
    1. 12.1. 土地や家を売買した場合の関係
    2. 12.2. 消費者金融からお金を借りた場合の関係
    3. 12.3. 債権者が債務者に行使できる5つの効力
    4. 12.4. 公的に有効な「訴求力」
    5. 12.5. 裁判や法律で決まったことを実行する「執行力」
    6. 12.6. 約束が守れなかった際に発生する損害賠償請求権
    7. 12.7. 回収不能と判断すれば契約解除になることも
  13. 13. 債権者が債権回収のためにしてくること
    1. 13.1. 強制執行で給料の差押えをしてくる
    2. 13.2. 債権回収のプロに債権を譲渡することも
    3. 13.3. 債権者が死亡したら返済しなくてもいい?
    4. 13.4. 債権者の相続人が債権も引き継ぐ
  14. 14. 債権譲渡以外の回収方法とは
    1. 14.1. 民事調停など法的手段による債権回収方法
    2. 14.2. 借りた物とは別の物で返す「代物弁済」
  15. 15. ケースバイケースの債権・債務関係
    1. 15.1. どちらも債権者であり債務者になる「労働契約」
    2. 15.2. 片方が債権者、もう一方が債務者の「片務契約」
    3. 15.3. まとめ

「債権者」とは請求する権利がある人のこと

「債権者」とは、お金を貸した相手に返済するよう請求する権利を持っている人のことです。お金を借りている側を「債務者」と呼び、個人の場合もあれば会社の場合もあります。

クレジットカードでキャッシングをした場合はカード会社が債権者です。住宅ローンを組めば銀行や信用金庫などの金融機関が債権者となります。

税金や年金などは役所や税務署が債権者となる

債権者が請求できるのはお金だけではありません。法律上の定義では、「特定の人に対し、特定の行為や給付を請求する権限を有する人」となっています。「物」や「サービス」などを提供した場合、提供したお店や会社のことを「債権者」と呼びます。

また、債権者となるのはクレジット会社や銀行、お店や会社だけではありません。税金や社会保険料、年金などは管轄の役所や税務署などが債権者となります。

「債権」とは請求できる権利のこと

「債権」とは貸したお金や物などを請求する権利のことですが、具体的にどのような場合に債権が発生するのか説明していきます。

契約により発生する債権

一番イメージしやすい債権といえるのが、「当事者の合意により契約したことで発生する債権」です。
たとえば電気店でテレビを買った場合、「売る」「買う」という契約が成立します。これを売買契約といいます。この場合、債権者はどちらになるのでしょうか。

テレビ代金の支払に関して

債権者⇒電気店 債務者⇒購入者

テレビの引き渡しに関して

債権者⇒購入者 債務者⇒電気店

契約書を交わさなくても契約は成立する

民法では、売買契約において契約書を交わさなくとも契約は成立します。「これ売ってください」「お買い上げありがとうございます」と両者が合意すれば、口頭であっても債権者・債務者の関係は成立します。

事務管理により発生する債権

事務管理というとわかりにくいですが、本人からお願いもされないのに他人が勝手にした行為、いわゆる「お節介」「余計なお世話」のことです。

勝手に修理した費用を請求する権利

たとえばAさんが1カ月家を留守にしたとします。留守中に大型台風でAさんの家の窓ガラスが割れてしまい雨が吹き込んでいます。

ちょうどAさん宅の前を知り合いのBさんが通りかかりました。「そういえば1カ月留守にするって言ってたよなぁ」と思い出したBさんは、近所のホームセンターで材料を購入し、Aさんに断ることなく修理をしました。

Aさんが帰宅するとBさんは事情を説明し、修理にかかった費用をAさんに請求しました。この場合、Bさんは「事務管理者」となりAさんに費用を請求できる権利(債権)を得ることになります。

本人の意思に反していなければOK

ただし、善意とはいえ本人の承諾もなしにやった行為です。この場合、Aさんは絶対に費用を払わなければいけないのでしょうか。

民法では以下のように定めています。先ほどの例に当てはめて説明します。

管理者の通知義務

AさんがBさん(管理者)以外の人からすでにその事実を聞いて知っている場合を除き、BさんはすみやかにAさんに修理したことを報告しなければなりません。

管理者による事務管理の継続

「Aさんがまだ戻ってこないのに、Bさんは自分の都合で修理を途中で放り出してはいけません。」

つまり、要らぬお節介であったとしても、本人(Aさん)が喜んでいるのであれば、「BさんはAさんから委任されてやった」のと同様にみようではないかということです。

不当利得による債権

「不当利得」とは、正当な理由や権利がないのに得をしてしまうことです。それによって損をした人は、その人に不当に得た利益を返すよう請求することができる権利を「不当利得による債権」と呼びます。

過払い金請求は不当利得の返還請求になる

たとえば「過払い金」がそうです。貸金業法という法律では、カード会社などがお金を貸す場合につける金利に上限が設けられています。

法定金利よりも高い金利でお金を借りているとしたら、カード会社などの貸金業者は不当な利益を得ていたということになります。払い過ぎていた利息分を返してほしいと請求する権利があるわけです。

不法行為による債権

「不法行為」とは、故意や過失により他人に損害を与える行為のことです。不法行為によって生じた損害に対して請求する権利のことを「不法行為による債権」と呼びます。

交通事故や相手の暴力によりケガをした際の治療費や慰謝料がこれにあたります。この場合も、契約書などはなくとも債権は発生します。

請求する側の債権者とされる側の債務者

おさらいになりますが、「債権者」とは請求する権利を持っている人のことで「抵当権者」とも呼びます。借金でいえば、銀行やカード会社、消費者金融などは債権者となり、債務者にお金を返すよう請求する権利があります。

一方、「債務者」とは請求に応じる義務がある人のことです。通常は約束の期日に返済している人のことは債務者とは呼びません。あくまでも住宅ローンやキャッシングなどの返済を滞納している人の総称で、お金を借りたら期日までに返す義務を負うが発生します。

債権者と債務者の違いは、請求する側なのか請求される側なのかという点です。請求する権利を持つ側か、支払う・引き渡す義務を負う側かという違いでもあります。

債権者が行使できる効力とは

債務者が債権者の請求に素直に応じない場合、どうなるのでしょうか。債権者は以下のような効力を債務者に行使することができます。

(1)給付保持力
(2)訴求力
(3)執行力
(4)損害賠償請求権
(5)契約の解除

給付保持力とは、約束通りに返してもらったものは、あとで債務者が返してと言ってきても返さなくてよいという効力です。

訴求力とは、債務者が返してくれない、支払ってくれない場合に、債権者が裁判所に訴えることができる効力のことです。

執行力には、「貫徹力」「掴取力」の2点も含まれます。
詳しくは後述いたしますので、ここでは債権者と債務者の違い、債権者は5つの効力を持つということだけ覚えておいてください。

知って得する!債務者についての役立つ知識

「債務者」とひとことで言っても、実はさまざまな種類があります。ここでは「連帯債務者」と「第三債務者」について説明しておきます。

連帯債務者とは

債務者は一人とは限りません。「連帯債務者」とは、夫婦や共同経営者など主たる債務者と同じ地位、同じ責任と義務がある債務者のことです。

たとえば、Aさんと共同経営者のBさんの場合、Aさんが主たる債務者でBさんが連帯債務者だとします。

同じ責任と義務が発生しますので、債権者のCさんは、AさんにもBさんにも請求することができます。どちらか一方に全額請求してもよいですし、それぞれに半分ずつ請求しても構いません。

第三債務者とは

たとえば、銀行(債権者)からお金を借りたAさん(債務者)は、妻の入院費用や子どもの教育費などで生活が苦しく、銀行への返済が滞っていました。

債権者である銀行は、Aさんの持っている財産(債権)として給料の差押え手続きをしました。この場合、「第三債務者」となるのが勤め先の会社です。

本来であればAさんが会社から直接給料をもらいます。ところが、これ以上請求しても無理だと債権者である銀行が判断した場合、法的手続きをとり第三債務者である勤め先に直接「差押え」という形で請求することができます。

債権により異なる第三者債務者

第三者債務者は債権の内容により以下のような人や会社が対象になります。

債権が給料の場合・・・雇い主
債権が預金の場合・・・金融機関
債権が売掛金の場合・・・取引先

債務者が死亡すると相続人に請求がいく

では、債務者が死亡した場合、債権者は誰に請求すればよいのでしょうか?
実は債務者が亡くなってしまうと、債権者は債務者の相続人に請求することができます。

相続と聞くと自宅や別荘、所有するビルなどの不動産や預金、宝石、有価証券といった財産を「もらえる」というイメージがあります。相続はこうしたプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も対象となり、プラスの財産だけを相続することはできません。

配偶者や子ども以外の相続人がいることも

民法では、相続人の優先順位が以下のように決まっています。配偶者が生きている限りは常に相続人となり、配偶者以外では次の順番で相続人となります。

第1順位・・・子ども
第2順位・・・孫、ひ孫
第3順位・・・父母、祖父母
第4順位・・・兄弟姉妹

ただし、これはあくまでも民法で決められた「法定相続人」です。故人が遺言書で、法定相続人以外の相続人を指定していた場合は異なってきますので注意が必要です。

契約内容により異なる債権者と債務者の関係

なんらかの債権が発生すると、債権者と債務者の間には切っても切れない関係が生れます。借金などの債務を抱えている場合、この関係を理解することがとても重要です。ここでは、その関係性について詳しく説明します。

双方に債務の義務がある売買契約の関係

物を売り買いする「売買契約」には、債権者と債務者という関係が発生します。この関係は、売買契約書がなくても成立します。では、売主と買主のどちらが債権者でどちらが債務者になるのでしょうか。

売主・買主の両方が債権者であり債務者になる

売買契約の場合、「双務契約」といって売主、買主の両方が債権者であり債務者となります。
たとえば1,000円の商品があったとします。買主には代金として1,000円を売主に支払う義務が発生し債務者となります。売主は1,000円を受け取る(請求)権利が発生し債権者となります。

一方、代金1,000円を支払った買主には商品を受け取る(請求)権利が発生し債権者となります。この場合、売主は商品を買主に渡す義務が発生し債務者となります。

このように、売主も買主も両方が債権者として請求する権利を持ち、債務者としての義務を負うことりなり、この契約のことを双務契約と呼びます。

賃貸借契約など売買契約以外の双務契約

売買契約以外にも双務契約はあります。以下のような契約が双務契約に含まれます。

賃貸借契約

アパートやマンションをはじめ店舗やレンタルオフィス、レンタカーなど物の貸し借りをする際の契約。

委任契約

弁護士や司法書士など法律に関する案件を依頼する際の契約。

寄託契約

貸金庫やコインロッカーなど貴重品を預かって保管する契約。

雇用契約

労働力を提供することで対価として報酬をもらう契約。

これらの契約は、売買契約のように物の売り買いではありません。賃貸借契約の場合、物件や車といった「物」は存在しますが、あくまでも貸す・借りるというやり取りであって、売り買いではありません。

これらの契約は、サービスや労働力、場所などの提供をする対価としてお金や物を受け取ることで、双方に権利と義務が発生するため双務契約となります。

お金の貸し借りにおける債権者と債務者の関係

次に金銭消費賃貸契約について債権者と債務者の関係を見てみましょう。
消費賃貸契約とは、消費する目的で借りた物と同じ物、同じ量を将来返すことを約束する契約のことです。お金の貸し借りについての契約は「金銭消費賃貸契約」となり、債権者が貸主、債務者が借主になります。

返済不能になれば抵当の財産が没収される

金銭消費賃貸契約の中でも住宅ローンなど借入額が多い場合、契約の際に債務者は財産を抵当に入れることがあります。

「抵当」とは、債務者が返済不能になった場合、その代わりとして債権者に差出し返済に充ててもらう財産や権利ことです。債権者が債務者に貸したお金を返してもらえなかったということにならないための対策です。

たとえば住宅ローンの場合、抵当になるのは債務者が購入した家が一般的です。返済不能となれば債務者は抵当に入っている家を、住宅ローンを借りている銀行に差出すことになります。銀行は抵当として受け取った家を競売にかけ、売れたお金を返済に充てます。

保証人がいれば保証人に請求がいく場合がある

アパートやマンションなどの賃貸借契約を結ぶ際、保証人をつけることはよくあります。金銭消費賃貸契約においても、万一に備え契約条件として保証人をつけなければならないことがあります。

たとえば、消費者金融からお金を借りた場合、債務者が返せなくなる可能性があります。その際、債権者である消費者金融は、債務者に代わり保証人に返済を請求することができます。

債権者と債務者が同一になることも

これまでは債権者と債務者は別の人でしたが、債権者と債務者が同一の場合もあります。たとえば親会社が子会社に融資をしているケースです。この場合、親会社が債権者となり子会社は債務者になります。

吸収や合併で債務を消滅させることができる

子会社が赤字続きでどうしても親会社に返済できない場合、子会社を吸収することで借金を「相殺」することができます。

「相殺」とは、同じ債務を支払う義務を負う2人が、対当な額により債務を消滅させることです。法律で認められている方法です。この場合、親会社が子会社を吸収したことで債権者と債務者が同一になります。

A社(債権者)から融資を受けているB社(債務者)が合併する場合も同じです。互いの資産や負債などを統合し新しい法人となり、相殺することでB社から引き受けた債務を消滅させることができます。

債権者と債務者以外の第三債務者の存在

債権者と債務者の関係について見てきましたが、ここでは第三債務者の存在について説明します。
「第三債務者」とは、債権者にとっての債務者に対して債務がある「債務者の債務者」のことです。

債権者にとって重要な第三債務者

たとえば、Aさんがクレジットカード会社からお金を借りているとします。この場合、Aさんはクレジットカード会社にとっての債務者、クレジットカード会社はAさんにとっての債権者です。

一方、Aさんは友人のBさんにお金をしています。AさんとBさんの間には、Aさんが債権者、Bさんは債務者という関係が成立します。この場合、カード会社にとってBさんは「債務者(Aさん)の債務者」ということになります。

債権者にとって、貸したお金や物を返してもらえなければ一大事です。債権を回収するには、第三債務者の存在は重要になります。では、第三債務者がかかわるケースについて具体的に見ていきましょう。

債権執行で第三債務者に請求がいく場合

債権者、債務者、第三債務者が関係するケースとしてよくあるのが「債権執行」です。
債権執行とは本来の債務者が返済不能となった場合、債権者が第三債務者から返済してもらえるよう裁判所に申立てる手続きのことです。

給料や預金などが対象となる差押えのことで、強制執行のひとつです。差押えられる財産が、債務者本人ではなく債務者の債務者である第三者債務者であるのが特徴となります。

たとえば、Aさんが銀行からお金を借りてマンションを建て、賃貸経営を始めたとします。
Aさん、銀行、入居者の関係は以下の通りです。

Aさんの借金に対して⇒⇒⇒銀行は債権者、Aさんは債務者
賃貸物件に対して⇒⇒⇒Aさんは債権者、入居者は債務者
銀行に対して⇒⇒⇒Aさんは債務者、入居者は債務者の債務者(第三債務者)

Aさんは入居者から回収した家賃を返済に充てていましたが、借金の返済が何カ月も滞るようになってしまいました。こうなった場合、債権者である銀行は第三債務者である入居者から債権を回収することができます。
ただし、実際にAさんが借金返済を滞った場合には、銀行はマンションを差し押さえることで回収することがほとんどです。

債権執行手続きの手順

債権執行をする場合、以下のような手順となります。
申立てをする人は債権者ですが、申立てをする場所は債務者の住所がある地域の裁判所となります。

1.申立て
2.差押命令
3.差押え
4.取立てまたは配当

債務者の住所がわからない場合、給料を差押えたいのであれば債務者が勤務する会社、預金であれば銀行の住所がある裁判所に申立てをすることになります。

実際に差押えを実行(取立)できるのは、債務者に差押命令が送達された日から1週間経過してからです。

給料の差押えは月給の4分の1まで

給料を差押える場合、給料全額を差押えてしまっては債務者が生活できなくなります。

原則として差押えができる範囲は、月給の4分の1までと決められています。月給が44万円を超える場合は、33万円を除いた額が差押えの対象となります。

債権執行の申立てに必要な書類

申立てには以下のような書類を裁判所に提出しなければなりません。

(1) 債権差押命令申立書

「債権差押命令申立書」は、表紙に差押えを求める旨と債務名義を証明する書類について記載します。差押えをするための申込書のようなもので、表紙と(2)~(4)がセットになって申立書となります。

(2) 当事者目録

債権者と債務者、第三債務者がいる場合は第三債務者の氏名と住所。法人は社名と代表者名を書きます。

(3) 請求債権目録

「請求債権目録」は、債務者に対して債権者が持っている債権を書いた書類です。「元金〇〇〇円」「遅延損害金〇〇〇円」というように請求したい内容を書きます。

(4) 差押債権目録

「差押債権目録」は、どのような物を差押えるのかを書いた書類です。
例)給料(基本給と通勤手当を除く諸手当)から給料所得税・住民税・社会保険料を差し引いた残額の4分の1

(5) 債務名義の正本

債務名義の原本のことです。謄本では強制執行できません。債務名義を作った裁判所や公証人役場で発行してもらえます。

(6) 送達証明書

「送達証明書」とは、債務名義の正本(謄本でも可)が債務者に届いたことの証明書のことです。債務名義を発行してもらった公的機関(裁判所か公証人役場)に申請すれば発行してもらえます。

(7) 資格証明書

債権者、債務者、第三者債務者が法人(会社や銀行など)の場合に必要です。発行には法人の商業登記事項証明書か代表者事項証明書が必要になります。法務局へ申請れば発行してもらえます。

(8) 申立手数料

申立をするための手数料として、債務名義1通につき4,000円分の収入印紙が必要です。債権者や債務者が複数いる場合は、1名につき4,000円分の収入印紙が必要となります。収入印紙は債権差押命令申立書の表紙に貼ります。

(9) 各目録のコピー

当事者目録、請求債権目録、差押債権目録のコピー各1部が必要です。

(10) 返信用封筒

長形3号サイズの封筒で、表面に宛名として債権者の住所と氏名を記載します。

(11) 返信用切手

陳述催告を申し立てる際に必要です。

「債務名義」とは、債権執行をするための根拠を示す文書ことです。債務執行が認められれば、債権者は債務者の給料や預金を差押えできます。しかし、簡単に債務執行を認めてしまうと、債務者の生活を脅かすことになります。

簡単に強制執行が行えないよう、債務執行をするには裁判所に所属する執行官が強制執行することを許可した公文書が必要になります。この公文書が債務名義です。

債務名義には、請求権が存在すること、請求する内容、債権者、債務者の有無などが書かれています。

債権譲渡で債権が移転する場合

「債権譲渡」とは、回収する内容はそのままで債権だけを譲渡することです。会社と会社の間で行われることがほとんどなので、一般の人には馴染みのない言葉だといえます。

第三債務者の債権が債権者に移転する

たとえばA社はB社に対し売掛金があるとしましょう。この場合、債権者はA社、債務者はB社になります。B社には取引先のC社に未回収の売掛金があります。この場合、B社が債権者、C社が債務者になります。

B社は経営不振のためA社に売掛金を支払うことができません。そこで返済に充てるため、B社の持っている債権(未回収の売掛金)をB社からA社に移転するのが「債権譲渡」です。

債権譲渡では、債権者(A社)のことを「譲受人」、債務者(B社)のことを「譲渡人」と呼んでいます。

債権譲渡の通知の重要性と対抗要件を満たすための2つの方法

債権譲渡とは、先ほどの例でいえばB社が持っているC社の債権をA社に譲渡することです。C社はA社にとって第三債務者となります。そこで重要となるのが「債権譲渡の通知」です。

通知の重要性は対抗要件を満たすため

通知が重要な理由のひとつが、新しい債権の債務者(第三債務者)への「対抗要件」を満たすためです。

対抗要件とは、第三債務者に未回収の売掛金や貸付金の返済を請求する効力を持つための条件のことです。対抗要件を満たさなければ、債権者である譲受人は第三債務者に対して債権の主張をすることができないからです。

代理人として譲受人が債権譲渡を通知する方法

譲渡債権の通知は、譲渡人(B社)が第三債務者である新しい債権者(C社)へ送るのは基本です。譲受人であるA社がC社へ直接、譲渡債権の通知を送ることはできません。

しかし、譲渡人であるB社の代理人としてC社へ通知することは可能です。代理人として通知するには、まずはA社とB社の間で債権譲渡契約書を作成し契約を交わす必要があります。

C社に送る通知書(債権譲渡通知書)には、債権の内容や債権を譲渡したこと、譲渡人・譲受人の連絡先などを記載します。

通知書は自分でも作成できますが、譲渡を法的に正当化するには弁護士に依頼して作ってもらったほうがスムーズです。作成費用は弁護士事務所によっても異なりますが、1通につき3万円~5万円ぐらいが目安になります。

債権譲渡を通知する際の3つの注意点

債権譲渡の通知を送る際に注意しなければならないことが3点あります。

(1) 債権者代位としては通知できない

債権者である譲受人A社が譲渡人B社の代理人として、新たな債務者であるC社に通知したからといって権限が移行したわけではありません。つまり、債権者代位権はないということです。

「債権者代位権」とは、時効などで債権が回収できなくなることを防ぐため、債務者の財産などの権利を行使することができる権利のことです。

この例でいえば、C社はB社への返済を滞納していたとします。A社はB社に督促するよう催促しますが、B社はいっこうに督促しません。この場合、B社に資産がないことを確認できれば、A社がC社に直接督促できる権利のことを債権者代位権といいます。

問題となるのは、C社に複数の債権者がいた場合です。A社から督促されたからといってA社にばかり返済させるわけにはいきません。そのために債権者代位権が認められていないのです。

(2) 債権譲渡が無効になることもある

譲渡された債権に譲渡禁止特約があると債権は無効になります。「譲渡禁止特約」とは、債権者である譲渡人と債務者の間で、他の人に債権を譲渡しないと約束する契約を交わしていることです。

B社とC社の間で譲渡禁止特約を交わしていれば、A社がB社から債権を譲渡されたとしても無効となってしまうため注意が必要です。

(3) 債務者が信用できるかどうか

せっかく債権を譲渡されたとしても、新たな債務者に返済能力がなければ債権を回収すること自体が難しくなります。「不良債権」ということです。譲渡の際には新たな債務者が信頼に値するかどうか、返済する能力があるかどうかをしっかりと見極めることが大切です。

信用できるかどうか判断が難しい場合は、譲渡担保という方法で譲渡してもらいましょう。「譲渡担保」とは、債権譲渡の際、譲渡人の会社の財産を担保とする方法です。譲渡担保しておけば、万一譲渡債権が回収できなくとも担保となっている財産を差押えることができます。

債権譲渡登記により対抗要件が取得できる

債権譲渡をする際に債務者が多数いる場合、債務者全員に内容証明で債権譲渡の通知を送る費用や手間も馬鹿になりません。これらの費用や手間を省く方法として多くの企業が利用しているのが「債権譲渡登記制度」です。

債権譲渡登記制度とは、債権譲渡したことを公にするために記録される登記のことです。この制度の最大のメリットは「対抗要件」を取得できることです。

すでにお伝えしてありますが、対抗要件とは第三債務者に返済を請求する効力を持つための条件のことです。せっかく債権を譲渡されても、対抗要件を満たしていなければ債権を主張することはできません。そのためにも債権譲渡登記制度を活用しましょう。

債権譲渡登記の手順

この制度を利用するには、他に債権譲渡されていないかを確認するため「登記事項概要証明書」を取得する必要があります。譲渡人の住所がある法務局でとることができます。

次に、東京法務局へ債権譲渡登記の申請をします。この申請には譲渡人と譲受人の両者が揃って出向かなければなりません。申請には両者の代表者資格証明書なども必要です。

こうした手続きは思っている以上に手間がかかります。ひとつ書類を忘れても申請ができません。法律的な知識も伴います。債権譲渡通知の作成と一緒に弁護士に頼んでしまうケースが多いのもこのためです。

督促状が届いたら債務者がやるべきこと

支払いが遅れた際に届く督促状。難しい言葉が並んでいるからと読まずに放置している方も少なくありません。支払いは遅れれば遅れるほど遅滞損害金がつき、返済しなければならない金額はますます膨らんでいきます。

そうならないためにも、ここでは督促状に書いてある内容について、督促状が届いたらどうすればいいかの対処法についてお伝えします。

督促状を放置すると一括請求させることも

督促状で一番重要となるのは、「いつまでに支払なさい」という支払期日です。文面としては「〇月〇日までに返済がない場合は期限の利益を喪失します」のような言葉で書かれています。

「期限の利益」とは、債務者が受ける利益のことです。「いついつまでなら待ってあげますよ」と猶予を与えられたということです。

「期限の利益を喪失する」とは、「せっかく猶予を与えても支払わないのなら、借金の残り全額は一括で請求します」という意味になります。

督促状には、他にも遅れている分の「遅滞損害金」「延滞利息」が滞納額に加算されていることもあります。遅れれば遅れるほど支払う額も膨らんでしまいますので、督促状が届いたら放置せず、早めに返済するようにしましょう。

督促状は借入先から届くとは限らない

督促状は実際にお金を借りたカード会社や消費者金融から届くとは限りません。「サービサー」といって債権回収を専門にする業者から督促状が届くことがあります。

サービサーを名乗る会社は多数ありますが、サービサー法で法務大臣の許可を受けた会社しか債権回収が認められていません。最近は正式に認可を受けたサービサーを装った架空請求も増えています。サービサー(債権回収会社)から督促が届いたら、認可を受けている会社かどうか忘れずに確認するようにしましょう。

給料などの財産差押えを予告する催告書

債権者やサービサーから届く督促状を無視していると、今度は「催告書」といって裁判しますよと予告する督促状が届くようになります。督促状の内容とあまり変わらないと思うかもしれませんが、中身は大きく異なります。

「〇月〇日までに残りの借金を全額返済しない場合は、裁判所での法的手続きにより給料の差押えを強制執行し返済に充てます」

といった内容が書かれています。「返すつもりがないなら強制的に財産を差押えますよ」という意味で、強制執行が決まってしまえば債務者はこれを拒否することはできません。

ただし、催告書は差押えの予告であり強制執行が決定したわけではありません。この段階で一括返済をすれば回避できますので、催告書が届いたら一刻も早く支払うようにしてください。

裁判所から「訴状」が届いたときの対処法

催告書も無視していると、いよいよ裁判所から訴状が届きます。ここで重要なのは、訴状が届いたということは債権者もしくは債権回収業者が訴訟を起こしたということです。

訴状が届くと裁判所に出廷する義務が債務者に発生します。指定された日に出廷するよう書かれた「口頭弁論期日呼出状」が訴状に同封されてきます。

出廷できない場合は、初回弁論期日までに出廷できない理由を「答弁書」に書いて提出します。「一括では払えないので分割にしてほしい」といった希望を書いておけば、強制執行などの開始を遅らせることもできます。

また、債務者の代理人として弁護士が出廷することも可能です。「仕事を休めない」「体調を崩している」など代わりに出廷してほしい場合は、信頼できる弁護士にお願いしてみましょう。

債権者からの一括請求で返せない時の解決法

督促状が届いてから差押えになるまでの流れをおさらいしてみます。

(1) 債権者から督促状が届く
(2) 期日までに払わないと一括請求される
(3) 財産の「差押予告通知」が届く
(4) それでも払わないと裁判所より「訴状」が届く
(5) 「支払督促」が届く
(6) 差押えが実行される

「債務整理」も解決法のひとつ

督促状の次には催告書(差押予告通知)が届き、やがて訴状が届くようになります。このような事態になってしまったら一括返済するしかありません。

それでも一括返済ができなければ、最終的に給料や預金などの財産を差押えられてしまいます。そんな緊急事態を解決する方法のひとつが「債務整理」です。

弁護士に依頼すれば取立てや支払いもストップ

債務整理は自分でも行うことはできます。しかし、弁護士に依頼することでしつこい取立てがストップし、一時的にですが支払いを停止することもできます。

また、弁護士が業者と交渉することで借金の残額を分割にできたり、ケースによっては過払い金が発生し、払い過ぎていたお金が戻ってくることもあります。

昔の債務の督促状は時効成立の可能性も

めったにないことですが、かなり以前に借りたお金に対する督促状が届くことがあります。「これって時効でしょ?」と勝手に判断してしまうと危険です。では、どのような危険があるのでしょうか。

5年、10年と返済も請求もなければ時効は成立する

債務者が滞納していた場合、通常、債権者は督促状を送るなど返済を促す行動をとります。こうした行動を起こさないと、法律では「消滅時効」となってしまいます。

消滅時効とは、権利があるのに一定期間行使しないと時効となって権利が消滅してしまう制度のことです。消滅時効の期間は、銀行やクレジット会社などが5年、個人や信用金庫などは10年となります。銀行からの借金であれば、5年間何も請求してこなければ銀行は請求する権利を失うということです。

「時効の援用」手続きをしなければ成立しない

ただし、一定期間が過ぎれば勝手に時効が成立するわけではありません。そのためには債務者が「時効の援用」を行う必要があります。時効援用には以下の3つの条件が揃っていなければなりません。

(1) 5年もしくは10年間、返済もせず債権者から請求もされていない。
(2) この期間に借金があることを認めていない(債務の承認)。
(3) この期間に差押えや催告など法的手続きをされていない。

時効が成立すれば債務は消滅し信用情報が消えることも

「債務の承認」とは、債権者から取立ての電話があった場合、「もう少し待ってください」「〇〇には払います」といった返事をしてしまうことで、借金があることを認めてしまうことです。

「1回だけ」「1万円だけ」というように少しでも返済したことがあった場合も、やはり借金を認めたことになりますので注意が必要です。

これらの条件をクリアしていれば時効援用は可能です。時効が消滅すれば債務がなくなるだけでなく、信用情報が消えることもありますのでメリットは大きくなります。

担保を持つ債権者と持たない債権者

債権・債務に時効があることも理解したところで、債権者について別の角度から見てみましょう。
債権者には、「一般債権者」と「担保債権者」の2種類あります。一般債権者とは、担保を含まない債権を持っている人のこと、担保債権者とは担保を含む債権を持っている人のことです。

では、この場合の「担保」には、どのような意味があるのでしょうか。

担保とは万一返せなくなった場合の保証

「担保」とは、将来不利益が発生した際にそれを補う保証のことです。たとえば、会社が運転資金や設備投資などで銀行に融資を申し込む際、万一返せなくなった場合の保証として社長の家などを担保にすることがあります。

住宅ローンを組むときなども、担保は購入した住宅なります。返せなければ手放すこととなり、住宅は競売にかけられ、そのお金でローンの返済に充てられます。

保証人は「人的担保」、不動産は「物的担保」

担保には、「人的担保」と「物的担保」があります。

人的担保・・・債権者以外の「人」による担保のことで、いわゆる「保証人」のことです。
物的担保・・・不動産や株、有価証券などお金の代わりとなる特定の財産のこと。

債権者にとっては担保があっても回収不能は避けたい

担保は債権者にとってあくまでも万一に備えての「保険」です。担保があるから安心というわけではありません。

債務者が自己破産した場合、家や車、株や有価証券などの財産を売却し、そのお金で債権者に返します。債権者が複数いる場合は分配することになります。

その額は借金の残額(債権額)よりもはるかに安くなります。たとえ担保があったとして債権者からしてみれば、回収不能という事態だけは避けたいところでしょう。

何を請求するかにより異なる債権の種類

債権者にもさまざまな種類があると説明しましたが、債権にもさまざまな種類があります。債権者が何を請求するかによって種類も違ってきます。

特定物債権

売買契約においてよくあるケースですが、ある特定の物を請求することを「特定物債権」と呼びます。特定の物とは、中古車や中古の家、原画や1点もののアクセサリーなど代わりがない物のことです。

売買契約の場合、債務者は債権者に対し「善管注意義務」があります。売主は買主に品物を渡すまでは、自分の物以上に大切に扱わなければならない義務があるということです。

万一、品物を壊したり傷つけたりしてしまえば代わりのきかない特定物だけに、債権者は債務者に対し損害賠償責任を負うことにもなりかねません。

種類物債権

「種類物債権」とは、一定の種類と一定の数量を指定した債権のことです。特定物債権に対して「不特定物債権」とも呼ばれます。「ミカン5キロ」「キャベツ3個」というように、種類と量だけが指定されているだけなので代替品があり交換が可能な物となります。

中古車の場合は1台1台状態も異なるため特定物債権となり、まったく同じ物は用意できません。一方、新車の場合ならメーカーと車種が同じであれば、納車の際に傷が見つかったとしても代替品を用意することができます。

金銭債権

「金銭債権」とは、お金の請求をすることができる債権のことです。
先に説明しましたが、代金に対しては売主が債権者、買主が債務者となり、品物に対しては買主が債権者、売主が債務者となります。

利息債権

「利息債権」とは、貸したお金の利息を請求することができる権利のことです。
通常、借金を返済する際に「元本+利息」を支払います。借金の債権というと元本も利息も一緒にしがちですが、元本は金銭債権、利息は利息債権になります。

選択債権

「選択債権」とは、物やお金などいくつか選択肢があり、その中から1つを選んで請求することができる権利のことです。

たとえば、親が子どもに「志望校に合格したらピアノかエレクトーンを買ってあげる」というような約束をした場合です。選択権は債務者となり、この場合であれば親となります。

債務者と債権者の関係 ―身近な例―

請求する側の「債権者」と請求される側の「債務者」。債権者は請求する権利を持ち、債務者は請求に応じる義務があります。両者は個人の場合もあれば会社など法人の場合もあります。両者がどのような関係にあるのか、身近な例を通して具体的に見てみましょう。

土地や家を売買した場合の関係

土地や家を売り買いした場合にも、債権者と債務者の関係が発生します。この場合、「売買契約」の関係です。

Aさんが不動産会社から土地を買ったとします。買主のAさんは債権者として、不動産会社に「登記簿上の所有者の変更手続きをし、約束の期日までに土地を明け渡してほしい」と請求することができます。

売主も買主も債権者であり債務者になる

売主の不動産会社は債務者として、すみやかに所有者の変更手続きを行い、期日までにAさんに土地を明け渡す義務を負うことになります。

このように物の引き渡しという面では、債権者は買主のAさんになり、債務者は売主の不動産会社になります。では、金銭のやり取りについてはどうでしょう。

先に説明したとおり、支払いに関しては売主が債権者となります。買主であるAさんに土地の代金を支払うよう請求することができ、Aさんは債務者として売主に支払う義務を負うことになるわけです。

消費者金融からお金を借りた場合の関係

銀行や消費者金融からお金を借りた場合、借入をする際に契約を交わします。お金を貸した側は債権者、お金を借りた側は債務者となります。「金銭消費賃貸契約」の関係です。

債権者はお金を支払うよう請求する権利があり、債務者は返済の義務があります。相手は商売でお金を貸しているので利息がつきますので、借りた分とあわせて返済する法的義務を負うことになります。

金銭消費賃貸契約においては、借金を返す債務のことを「貸金返還債務」、返済を受け取る債権のことを「貸金債権」と呼んでいます。

債権者が債務者に行使できる5つの効力

請求する側の「債権者」と請求される側の「債務者」。債権者は請求する権利を持ち、債務者は請求に応じる義務があります。両者は個人の場合もあれば会社など法人の場合もあります。両者がどのような関係にあるのか、身近な例を通して具体的に見てみましょう。

土地や家を売買した場合の関係

土地や家を売り買いした場合にも、債権者と債務者の関係が発生します。この場合、「売買契約」の関係です。

Aさんが不動産会社から土地を買ったとします。買主のAさんは債権者として、不動産会社に「登記簿上の所有者の変更手続きをし、約束の期日までに土地を明け渡してほしい」と請求することができます。

売主も買主も債権者であり債務者になる

売主の不動産会社は債務者として、すみやかに所有者の変更手続きを行い、期日までにAさんに土地を明け渡す義務を負うことになります。

このように物の引き渡しという面では、債権者は買主のAさんになり、債務者は売主の不動産会社になります。では、金銭のやり取りについてはどうでしょう。

先に説明したとおり、支払いに関しては売主が債権者となります。買主であるAさんに土地の代金を支払うよう請求することができ、Aさんは債務者として売主に支払う義務を負うことになるわけです。

消費者金融からお金を借りた場合の関係

銀行や消費者金融からお金を借りた場合、借入をする際に契約を交わします。お金を貸した側は債権者、お金を借りた側は債務者となります。「金銭消費賃貸契約」の関係です。

債権者はお金を支払うよう請求する権利があり、債務者は返済の義務があります。相手は商売でお金を貸しているので利息がつきますので、借りた分とあわせて返済する法的義務を負うことになります。

金銭消費賃貸契約においては、借金を返す債務のことを「貸金返還債務」、返済を受け取る債権のことを「貸金債権」と呼んでいます。

債権者が債務者に行使できる5つの効力

債務者がいつまでたっても返済してこない場合、債権者は債務者に対して5つの効力を行使できます。ここではその効力について具体的に説明します。

不当利得にならない給付保持力

債務が履行されたことで、給付を保持しても不当利得にはならない効力のことです。
わかりやすく言うと、約束通りに返してもらったものは、相手が「やっぱり返して」と言ってきたとしても返す必要はないということです。

逆のパターンもあります。自己破産後に何らかの理由で、債務者が債権者に返済したいと申し出た場合も同じです。自己破産したのですから返さないのが普通です。しかし、債務者が返したいというのですから、債権者はそのまま受け取ることもできます。この効力が「給付保持力」です。

破産宣告をしても債権が消滅したわけではない

ちなみに、借金などの債権は債務整理をし、破産宣告をしたからといって消滅するわけではありません。「免責」といって、返済する責任がなくなった(自然消滅)だけです。

公的に有効な「訴求力」

「訴求力」とは、債務者が約束通りに返済してくれない場合、債権者は裁判所に「公的に有効な債権」であることを訴えることができる効力のことです。

訴求力が裁判所に認められれば、債権者は「支払督促」や「民事調整」の手続きを行うことができます。給料などの財産を差押えるための「債務名義」という文書を裁判所から発行してもらえるのも訴求力の効力によるものです。

裁判や法律で決まったことを実行する「執行力」

「執行力」とは、裁判や法律で決まったことを実際に行うことです。執行力には、「貫徹力」と「掴取力(かくしゅりょく)」の2種類があります。

(1)貫徹力・・・裁判で出た判決のとおり債務者に請求できる効力のこと。
(2)掴取力・・・強制的に請求することができる効力のこと。

執行力があれば強制的に財産を差押えできる

債務者にとって恐ろしい効力が掴取力です。強制的に請求するとは、給料や預金口座などの財産を差押えることです。

勤務している会社の連絡先や債務者の預金口座がわかれば、本人の承諾がなくとも強制的に差押えることができるというわけです。

約束が守れなかった際に発生する損害賠償請求権

債務者が約束を守れなかったため債権者に損害が発生した場合、債権者は債務者に対して損害賠償を請求することが可能です。

たとえば、Aさんが3カ月後にパン屋さんをオープンする予定で準備を進めていたところ、貸主の都合で店舗の引き渡しが半年後になってしまいました。

用意してあった宣伝用のチラシは使えなくなり、3カ月後の予定で仕入れていた材料のうち消費期限が過ぎてしまうものもあります。すでに予約を受けていた大口の注文はキャンセルしなければなりません。これらの損害について、Aさんが貸主に請求できる権利が「損害賠償請求権」です。

回収不能と判断すれば契約解除になることも

債務者が債権者からの請求に約束通り応じられなかった場合、債権者は契約を解除することができます。貸金業者に借金があり返済ができない場合は、契約の解除ではなく一括請求を求められます。

債権者が債権回収のためにしてくること

債権者が債務者に行使できる効力について説明しましたが、ここでは債権者が債権を回収するために具体的にどんなことをしてくるかについて説明します。

強制執行で給料の差押えをしてくる

滞納が続いている債務者に、債権者がしてくることのひとつが強制執行です。強制執行といえば給料の差押えです。差押えが実行されれば、裁判所から勤務先に通知が届きます。そうなれば借金があることは会社にバレてしまいます。

だからといって強制執行が決まれば、債務者はそれを拒否することはできません。「それじゃあ生活できないよ」と思われるかもしれませんが、先にもお伝えしたように給料の全額を差押えられるわけではありません。月給の4分の3は手元に残ります。

債権者が勝手に差押えに来るのは違法

もしもいきなり債権者が家に押しかけてきたとしても、車や家具を差押えることはできません。あくまでも裁判所から依頼を受けた公的機関が差押えをします。もし債権者が来て勝手に財産を押収すれば、住居侵入罪や窃盗罪に問われることになります。

債権回収のプロに債権を譲渡することも

差押以外にしてくるとしたら債権の譲渡です。債権は債務者の知らないところで、第三者に譲渡されてしまうこともあります。債権の譲渡には原則、債務者の同意は必要ありません。

ですので、差押えは債権者が勝手にすることはできませんが、債権の譲渡は債権者が勝手にしたとしても違法にはならないのです。

債権回収会社に譲渡されたら対処が困難

債権の譲渡に関する例が、債権回収を専門に行う会社への譲渡です。債権者は回収不能と判断すると、債権回収会社へ債権を安く売却します。

債権回収会社は回収のプロです。訴訟や強制執行など法的手段も熟知しています。債権回収会社に債権が譲渡されてしまったら、一般の方では対処が困難だと思ってください。

債権者が死亡したら返済しなくてもいい?

個人でお金の貸し借りをしていた場合など、返済を終えないうちに債権者が亡くなってしまうこともあります。その場合、債権者の権利はどうなるのでしょうか。

債権者の相続人が債権も引き継ぐ

「債権者が亡くなったんだから、借金は返さなくてもいいんでしょ?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、債権者が死亡した場合、債権は相続人が引き継ぐことになります。

相続人から督促が届いたら、当然、これまでお伝えしたとおり対応しなければなりません。ただし、相続人は一人とは限りません。複数いる場合は、相続人のうちの一人に代表者として返済する方法もあります。

相続人がわからない場合は「弁済供託」をしておく

もしも誰に返していいかわからない場合は、「弁済供託」といって法務局にお金を預けることもできます。債権者の手元に渡っていなくても、弁済供託しておけば形として返済したことになり、あとから利息や遅延損害金を請求されることはありません。

債権譲渡以外の回収方法とは

債権譲渡については、執行のための手順や申立てに必要な書類、債務者の債権を債権者に譲渡する方法や代理人として譲渡人が債権譲渡を通知する方法など、すでに詳しく説明しました。

ここでは補足として、債権譲渡以外の債権回収方法について説明します。すでにお伝えしたことと重なる内容もあると思いますが、おさらいのつもりで読んでみてください。

民事調停など法的手段による債権回収方法

法的手段には「支払督促」「民事調停」「民事訴訟」「強制執行」の4つがあります。どれも目的は「債務名義」を取得するためです。

債務名義については先に説明してありますが、本来の債務者が返済不能となった場合、第三債務者から返済してもらうための法的手続きに必要な公文書のことです。

手続きも簡単で費用も安い「支払督促」

「支払督促」とは、裁判所を通じて債務者へ催促の通知を送るための法的手続きです。この手続きを通し「仮執行宣言付支払督促」を取得できれば、債権者は執行文をもらわなくても債務者に強制執行することができます。

支払督促は手続きが比較的簡単で申立ての費用が安くすみます。ただし、債務者から異議申し立てをされたら訴訟を起こさなければなりません。

話し合いによる解決が目的の「民事調停」

「民事調停」とは、裁判官と一般市民から選ばれた調停員のいる場で、話し合いにより解決することを目的にした法的手続きです。話し合いで無事に解決できれば「調停調書(債務名義)」が取得できます。

支払督促と同様に手続きが簡単で申立ての費用が安くすみます。ただし、強制力がないため話し合いで解決しなければ債務名義を取得することができません。

債権者にとって一番負担が大きい「民事訴訟」

「民事訴訟」とは、法廷で裁判官が債権者、債務者の言い分を聞き、証拠と照らし合わせた上で判決を下す法的手続きです。債権者にとっては一番負担の大きな債権回収方法となります。

訴訟の途中でも話し合いで解決すれば「和解」となります。判決書もしくは和解調書に基づき、強制執行の申立てをすることができます。

財産を差押えることができる「強制執行」

「強制執行」とは、債務者の財産を強制的に差押えることができる法的手続きです。強制執行の申立てには債務名義が必要です。また、実際に差押えを行うのは債権者ではなく、以下の執行機関となります。

不動産・債権の場合・・・執行裁判所
動産(貴金属や骨董品など)の場合・・・地方裁判所に属する執行官

借りた物とは別の物で返す「代物弁済」

債権譲渡と似た債権回収方法が「代物弁済」です。代物弁済とは、債権者の同意を得た上で、債務者が借りた物とは別の物で返すことです。

たとえば、お金を借りたら通常はお金を返しますが、借りたお金と同じぐらいの価値がある不動産などで返すことを代物弁済といいます。代わりの物で返した時点で完了となりますが、不動産の場合、所有権の移転を本登記しなければ完了とはなりません。

この他にも、債権譲渡以外の債権回収方法には、時効が迫っているときに有効な「債権者代位権の行使」、互いの債権と債務を「相殺」する方法があります。

ケースバイケースの債権・債務関係

債権者と債務者の関係で、両者がどちらの立場にもなる「双務契約」。すでに売買契約における双務契約については説明しました。ここでは労働契約における双務契約、贈与契約や消費賃貸契約などの片務契約について説明します。

どちらも債権者であり債務者になる「労働契約」

売買契約と同じく、どちらも債権者であり債務者でもある契約が「労働契約」です。
スーパーでアルバイトをする学生を例に見てみましょう。

スーパー側から見ると、アルバイトの学生は雇っているのだから「働け」と要求する権利(債権)があります。それと同時に、学生に対しては労働対価としてアルバイト料を払う義務(債務)があります。

アルバイトの学生から見ると、雇ってもらったのだから働く義務(債務)があります。それと同時に、労働を提供したのだから対価としてアルバイト料をもらう権利(債権)があります。

労働に対して

債権者・・・スーパー
債務者・・・アルバイトの学生

アルバイト料に対して

債権者・・・アルバイトの学生
債務者・・・スーパー

片方が債権者、もう一方が債務者の「片務契約」

「片務契約(へんむけいやく)」とは、どちらか一方が債権者、もう一方が債務者となる契約のことです。片務契約には「贈与契約」「消費賃貸契約」があります。

無料で物やお金を譲渡する「贈与契約」

片務契約で多いのが「贈与契約」です。贈与契約とは、贈与する人が一方的に債務者となる契約です。

たとえば、Aさんが乗らなくなったトラックを友人であるBさんに、無料で譲渡する契約をしたとします。BさんはAさんにトラックを引き渡してくれと請求する権利(債権)が発生し、AさんはBさんに引き渡す義務(債務)が発生します。

しかし双務契約と違うのは、無料で譲渡するためAさんからBさんに代金を請求する権利(債権)は発生しません。BさんもAさんに支払わなければいけない義務(債務)を負う必要はありません。

使ってなくなる目的の「消費貸借契約」

賃貸契約でも消費が対象の「消費賃貸契約」も片務契約になります。消費賃貸契約はお金を消費する目的で発生する契約です。この場合、借りた物は借りたままの状態で貸主に返すのが原則となります。

たとえば、Aさんは同僚のBさんを誘ってランチを食べにレストランに入りました。食事を終えて支払いをしようとした際、財布を忘れたことに気づきAさんはBさんからランチ代1,000円を借りました。

AさんはBさんに1,000円を返す義務(債務)が発生し、BさんはAさんに1,000円を請求する権利(債務)が発生します。

しかし、AさんにはBさんに「返して」と請求することはありませんので債権は発生しません。一方、BさんもAさんに何かを返さなければならない義務はありませんので債務は発生しません。あくまでもAさんには債務が、Bさんには債権が発生しただけです。

まとめ

債権と債務、債権者と債務者の関係についてかなり詳しく説明しましたがいかがでしたか。
法律用語も多く難しかったかもしれませんが、基本は債権者の権利も守りつつ、債務者が生活できるよう考えられているのが法律です。

お金に関しては、個人であっても法人であってもトラブルに発展しやすくなります。「このままじゃまずいかな」と思ったら、一人で考え込まず法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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