特定調停

特定調停における減額方法や減額幅って?他の債務整理とも比べてどう?

債務整理をするにあたって、どの程度借金を減らせるのかは債務者にとって気になるポイントです。任意整理や特定調停、個人再生、自己破産といった方法がありますが、中でも債権者との交渉で借金減額を目指す特定調停では、どの程度減らせるのか知っておきたいでしょう。

そこで、本記事では、特定調停における借金減額の方法やどの程度減額されるのかについて詳しく解説します。任意整理や個人再生、自己破産とも比較していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

特定調停における借金減額方法

特定調停では、債務者と債権者が交渉することによって、返済額の減額や返済条件の緩和を目指します。借金減額方法は、主に

  • 引き直し計算による減額
  • 交渉による減額

の2つです。どのように借金の減額が行われるのか理解しておきましょう。

引き直し計算による減額

特定調停で減額できる借金は、引き直し計算という方法で算出されます。引き直し計算とは、利息制限法の上限金利15~20%を基準に、債務を計算しなおす方法です。債権者から開示してもらった取引履歴を上限金利15~20%に合わせて計算しなおすことによって、過払い金が発生する場合があります。上限金利15~20%のところ、金利25%で借りていたならば、超過した5%分を払いすぎているとなるのです。

引き直し計算で算出された過払い金をもとに、借金を減額し、特定調停後の返済計画を取り決めます。

交渉による減額

引き直し計算による減額が前提ですが、特定調停は債権者との交渉で調停内容を取り決めるので、交渉次第ではさらに減額できる場合もあるでしょう。「自分で貸金業者と交渉するのは難しそう」と考えるかもしれませんが、特定調停は簡易裁判所が任命して調停委員や裁判官が債務者と債権者の間に立って、交渉を主導してくれます。

任意整理などを弁護士・司法書士に依頼せず個人で行っている場合には、債権者との交渉がまとまらなかったり、不利な条件で同意されたりするおそれもあります。その点、特定調停は簡易裁判所が仲介し、最適な交渉が行われるので借金の減額をしやすいです。

ただ、大幅な減額を要求したとして、債権者にとって妥当と判断されなければ、簡易裁判所は交渉を進めません。あくまで妥当な減額交渉が前提であり、思い切った交渉で大幅に借金を減らしたいという場合にはデメリットを感じるかもしれません。

特定調停ではどのくらい減額できるのか

引き直し計算や交渉によって借金の減額を目指す特定調停ですが、実際どのくらい減額できるのでしょうか?減額できるシーンや難しいシーンを確認していきましょう。

金利によっては大幅な減額を期待できる

特定調停の借金減額は、引き直し計算が前提となります。そのため、これまでに借りていたお金の金利が上限金利15~20%よりも高ければ高いほど、返済しすぎていることになるので、大幅な減額が可能です。

同じ数の債権者から借金をしている方がいても、債権者の金利次第で減額幅は人それぞれ異なります。例えば、上限金利15~20%内A社・B社・C社から借りている男性と金利25%でD社・E社・F社から借りている女性がいたら、後者の女性の方が特定調停でより借金を減らせるでしょう。

取引期間が長いほど減額できる

債権者の中には、長年取引をしている債権者がいる債務者も多いでしょう。取引期間が長いと、それだけ返済を行っているので、もし上限金利15~20%を超えた金利で長く返済していたならば、過払い金が多く出ることになります。

AさんとBさんが同じ債権者で同じだけ借金をしていたとして、その債権者の金利を25%としましょう。Aさんが半年、Bさんが1年利用していたら、Bさんの方が半年分高い金利で返済していることになり、減額可能な過払い金が出てくるのです。

交渉によっては減額できない場合もある

金利や取引期間に応じて大幅な減額も期待できる特定調停ですが、必ずしも減額できるとは限りません。特定調停における交渉において、返済計画に同意できない、返済条件に折り合いがつかないなどの状況になると、調停は不成立になり、特定調停は失敗に終わります。

書類作成や出廷などの手続きに手間をかけても成果を得られるとは限らない点を念頭において、特定調停を行いましょう。

特定調停での借金減額の注意点

特定調停では必ずしも減額できないと触れましたが、その他にも特定調停の借金減額には注意点があります。特定調停で借金減額を実現できるのかに関わるので、しっかり理解しておきましょう。

引き直し計算で過払い金が出ないこともある

特定調停で使われる引き直し計算ですが、上限金利15~20%を超えた金利で借りた債務があることが、減額の条件となります。債務を抱える債権者すべてが上限金利15~20%におさまっていたならば過払い金は出ず、想定した結果は得られません。

上限金利は、2010年6月法改正によって引き下げられました。

  • 100万円以上の借入は上限金利15%
  • 10万円~100万円未満は上限金利18%
  • 10万円未満は上限金利20%

と定められています。上限金利の引き下げをきっかけに、上限金利内でお金を貸す貸金業者が増え、引き直し計算で過払い金が出にくい傾向があります。

将来利息をカットできない

借金をすると、元金を返済しなければならないのは当然ですが、金利に応じて利息が加算されていきます。はじめは大きな額でなくても次第に利息は膨らんでいき、債務者は辛い返済を強いられます。

これから加算される予定の利息を将来利息と言い、任意整理であれば、将来利息のカットも実現でき、債務整理後の返済の負担が少なくなります。一方で、特定調停では将来利息をカットすることはできません。調停成立後に発生する将来利息を支払わなければならないこともあります。

貸金業者が交渉に応じない場合もある

貸金業者によっては、交渉に応じようとしない業者もあります。特定調停は、債務者と債権者の交渉あっての債務整理なので、協力を得られないと借金の減額や返済条件の緩和は実現されません。

貸金業者目線で考えてみると、本来返済されるはずのお金が返ってこなくなるので、できれば債務整理ではなく、しっかり貸したお金を回収したいのが本音です。簡易裁判所の裁判官や調停委員が間に立ちますが、希望の内容で必ず交渉がまとまるとは限りません。

交渉が長引くと遅延損害金を請求される

債権者との交渉がなかなかまとまらないこともあり得ます。債権者からの取り立ては、特定調停の申し立てをもって一旦ストップします。既に債権者への返済が滞っていた場合、ストップした期間の返済を回収できていないことになるので、交渉がまとまらず長引くと遅延損害金を請求されてしまいます。

遅延損害金は、上限金利15%~20%より高く、21.9~29.2%で請求されます。借金を減らす目的があったにも関わらず、結果的に借金が膨らみかねません。任意整理であれば遅延損害金のカットを交渉できますが、特定調停ではできないので注意が必要です。

特定調停では過払い金を請求できない

引き直し計算で算出された過払い金は、返済しすぎたお金であり、取り戻したいと考えるのが自然です。しかし、特定調停の手続き内では過払いを請求することはできません。債権者や調停委員が過払い金請求の判断をすることが難しいためです。

債務整理=過払い金請求と捉えがちですが、特定調停と過払い金請求は別の手続きとなっています。過払い金請求をするなら、特定調停の申し立てを一旦取り下げ、弁護士・司法書士に依頼して過払い金請求訴訟を起こす必要があります。費用や手間が多くかかってしまうので、過払い金も取り戻したい方にとっては、特定調停は不向きでしょう。

特定調停以外の債務整理での借金減額の違い

債務整理には、特定調停以外に任意整理や個人再生、自己破産といった方法もあります。特定調停の減額方法や減額幅と比較して、それぞれの債務整理との違いをご紹介します。

任意整理と共通点が多い

任意整理は、借金の減額方法では特定調停と共通していて、引き直し計算や債権者との交渉で行われます。違いとしては、特定調停は簡易裁判所に申し立てを行いますが、任意整理は裁判所を通さずに債権者との交渉を行います。個人で任意整理をするのは、債権者との交渉が上手くいかないおそれもありますが、弁護士・司法書士に依頼するのが一般的で、専門家の力を借りてスピーディーかつ成功率高く債務整理できるのが特徴です。

特定調停にはできない将来利息・遅延損害金のカットや過払い金請求も任意整理なら行うことができます。特定調停よりも借金をより減額できる可能性が高く、債務整理後無理のない返済を行えるでしょう。

デメリットとしては、任意整理は弁護士・司法書士に依頼するのが一般的であり、弁護士・司法書士費用が必要になります。費用の相場は5万円~30万円ほどと言われているので、費用を捻出できない場合は任意整理を選択できないこともあるでしょう。また、特定調停も同様ですが、借金を帳消しにするのではなく、あくまで減額であり、3年~5年程度で返済すること、返済能力があるかが求められます。

個人再生

個人再生は、裁判所に再生計画案を提出することで申し立てを始められます。再生計画案は、債務の一部を3年で返済する案のことです。再生計画案が認められると、減額された借金を3年で返済し、その他の債務が免除されます。

個人再生で減額できる借金は、100万円までの減額または債務の合計の5分の1までの減額と定められています。特定調停や任意整理は借金額が多すぎると利用できませんが、個人再生であれば利用できる場合が多く、大幅は借金減額を期待できます。また、個人再生には、住宅ローンを債務整理対象から除外できる制度が用意されています。住宅を維持しつつ、借金を減額できる債務整理の方法と言えます。

注意点として、再生計画案が認められなければ、個人再生を行うことはできません。減額後の借金を返済する能力が認められなかった場合などは難しくなるでしょう。個人再生ができなければ、自己破産に移行することになります。

自己破産

自己破産は、債務整理の中でも、最終手段として利用される方法です。裁判所に自己破産を申し立て認められると、借金の支払い義務が免除され、これまでの債務が帳消しになります。特定調停や任意整理、個人再生で対応できない場合に、自己破産をすれば借金をなくして再スタートを切れます。

借金が帳消しになる代わりに、自己破産にはデメリットも多いです。債権者へ平等に返済するために、住宅や自動車、保険、現金、預金など財産を失います。自動車はローンを完済していて中古車市場で20万円以下なら手元に残せるなど、条件によっては財産を残せるものの、価値の高い財産は返済に充当されます。

財産を返済に充当した後に残った支払い義務は債務者ではなく、保証人・連帯保証人に移ります。分割請求ではなく、一括請求で支払いを求められるので、保証人・連帯保証人に返済能力がなければ、債務者に連鎖して任意整理や個人再生、自己破産といった債務整理が必要になる場合もあります。保証人・連帯保証人に相談してから自己破産するかを検討しましょう。

まとめ

本記事では、特定調停の減額について、減額方法や減額幅について解説しました。

特定調停では上限金利をもとに債務を計算しなおす引き直し計算によって、減額幅が算出され、交渉の材料となります。高い金利で借りている債権者の有無、交渉次第では、借金の減額を期待できます。

しかし、特定調停の借金減額には注意点が多くあります。金利によっては減額を期待できないことや将来利息・遅延損害金を請求できないこと、貸金業者が交渉に応じないことなどの注意点があり、成立する確率は決して高くありません。自力で解決するのが難しければ、まずは弁護士に相談しましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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