民事再生(個人再生)

小規模個人再生と給与所得者等再生はどちらを選ぶべき?

「個人再生を考えているけど、小規模個人再生と給与所得者等再生どちらを選ぶべき?」
「小規模個人再生と給与所得者等再生の違いはどんなところ?」
この記事では、そんな人のために小規模個人再生と給与所得者等再生の違い、そして小規模個人再生と給与所得者等再生どちらを選ぶべきなのか解説していきます。 これから個人再生を考えている人で、小規模個人再生と給与所得者等再生どちらを選ぶべきか迷っている人は、ぜひこの記事を参考にしてください。

目次

小規模個人再生と給与所得者等再生の違い

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2つの手続きがあります。 小規模個人再生と給与所得者等再生の主な違いは

  • 給料の変動幅が少ない人は給与所得者等再生が選べる
  • 給与所得者等再生は債権者の同意が不要
  • 給与所得者等再生の方が弁済額は高く設定されることが多い

という3点です。

それでは具体的に小規模個人再生と給与所得者等再生では、どのような違いがあるのでしょうか。 これから個人再生を考えている人は、小規模個人再生と給与所得者等再生の違いをしっかり把握していきましょう。

給料の変動幅が少ない人しか選べない給与所得者等再生

個人再生と給与所得者等再生の違い1つ目は、申請条件の違いです。 そもそも個人再生を申請するための条件は

  • このままの状態が続くと支払い不能に陥る可能性がある
  • 将来的にも継続して収入を得られる見込みがある
  • 債権額の合計が5,000万円以下である

この3点が定められています。

給与所得者等再生の場合、この条件に加えて「給与所得などの変動幅が少ない安定収入があること」という条件が追加されます。

「給与所得などの変動幅が少ない安定収入があること」と「将来的にも継続して収入を得られる見込み」というのは似ているようですが、前者には具体的な数字が定められています。

給与所得などの変動幅が少ない安定収入があると認められるのは、過去2年の給料変動幅がおおむね20%以内におさまっている必要があります。

給料が一定の会社員であればまず条件を満たすでしょうが、月によって収入に差がある個人事業主や成果報酬の会社員は条件を満たすことが難しいでしょう。

そのことを考えると、給与所得者等再生の条件を満たせるのは、会社員もしくは年金受給者くらいでしょう。アルバイトやパートでも条件を満たせなくはないですが、実際に申請してみないと申請条件をクリアできるかどうかはわかりません。

給与所得者等再生は小規模個人再生の特則の中の一つなので、申請できる人に限りがあります。

そのため個人事業主など収入が安定していない人は、そもそも給与所得者等再生が選べません。

債権者の同意が必要かどうかの違い

小規模個人再生と給与所得者等再生の違い2つ目は、債権者の同意が必要かどうかの違いです。

小規模個人再生では再生案の内容に対して、過半数以上の債権者の反対、または反対した債権者の債権額の総額が借金の半額を上回るとき、再生計画案が適用されません。

しかし給料所得者等再生の場合、債権者への再生案確認はおこなわれるものの、債権者の同意なく個人再生が認可されます。

つまり給料所得者等再生を選択した場合、裁判所が個人再生を認可すれば、個人再生が認められます。

実際債権者が反対して個人再生が認められないケースもあるので、人によっては給料所得者等再生を選択したほうがいいでしょう。 しかし現実的には債権者の同意が得られないケースは、かなり少ないです。 平成30年の司法統計データでは、以下のような数値がでています。

平成30年に申立があった小規模個人再生11,473件のうち、小規模個人再生が棄却または却下されたのはわずか25件。つまり小規模個人再生全体のうち、個人再生できなかったのは0.2%程度です。後ほど詳しく解説しますが、小規模個人再生と給与所得者等再生では、債権者の同意が必要かどうかの違いはあります。

最低弁済額の違い

小規模個人再生と給与所得者等再生の違い3つ目は、最低弁済額の違いです。 最低弁済額とは、個人再生で減額された借金をその数字以上にしなければならいことで、金額が少ないほど今後の返済が楽になります。小規模個人再生の場合、最低弁済額は以下のように定められています。

借金総額 最低弁済額
100万円未満 借金総額
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1,500万円未満 借金総額の20%
1,500万円以上3,000万円未満 300万円
3,000万円以上5,000万円未満 借金総額の10%

一方給与所得者等再生の場合、小規模個人再生の最低弁済額もしくは法廷可処分所得2年分以上に設定されています。

法廷可処分所得とは「給与所得―税金(所得税、住民税、社会保険料)-必要最低限の生活費」で計算されます。

このときポイントになるのは必要最低限の生活費なのですが、これは実際の生活費ではなく生活保護などの支給額を基準として計算されます。

例えば東京や大阪といった大都市に住んでいる35歳男性の場合、最低生活費は年間49万9,000円です。

つまり給与所得-税金の手取りが300万円の人であれば、法廷可処分所得は約250万円。 その2年分ということは500万円ということですね。

そのため小規模個人再生を選択する場合と給与所得者等再生を選択する場合では、最低弁済額に数百万円の差が出ることもよくあります。この違いは小規模個人再生と給与所得者等再生の大きな違いですね。

手続きの進め方自体に大きな差はない

ここまで小規模個人再生と給与所得者等再生の違いを解説してきましたが、手続き自体は小規模個人再生と給与所得者等再生で大きな差はありません。

個人再生では再生案を債権者に説明する機会がありますが、これは小規模個人再生と給与所得者等再生どちらでもおこなわれます。

同意が必要なのは小規模個人再生で、同意が必要ないのは給与所得者等再生という違いだけです。

その他の違いは申込み条件と最低弁済額の違いなので、手続き自体に大きな差はありません。個人再生では再生案の提出など、提出すべき書類が多いです。小規模個人再生と給与所得者等再生どちらを選んだ場合でも手間はかかるので、その点はしっかり頭に入れておきましょう。

小規模個人再生と給与所得者等再生どちらを選択すべき?

ここまで小規模個人再生と給与所得者等再生の違いを解説してきましたが、この違いを踏まえたうえで小規模個人再生と給与所得者等再生では、どちらを選択すべきなのでしょうか。

ここからはシチュエーション別に、小規模個人再生と給与所得者等再生どちらを選ぶべきなのかを解説していきます。小規模個人再生と給与所得者等再生どちらを選ぶべきか悩んでいる人は、どちらを選ぶべきか考えながら見ていきましょう。

給与所得者等再生を選択できるのは給料が安定している人のみ

そもそも給与所得者等再生を選べるのは、給料が安定している人のみです。個人再生において給料が安定しているとみなされるのは、過去2年の給料変動幅がおおむね20%以内におさまっている場合のみ。

つまり先月の給料が30万円の人が、今月20万円であった場合、その時点で対象から外れます。このことを考えると、個人事業主や経営者は給与所得者等再生を選択できない場合が多いです。

そのため給与所得者等再生選択できるのは、毎月収入が変わらない会社員や年金受給者に限られます。

収入が安定していない人は、強制的に小規模個人再生を選ばざるを得ませんね。

借金の減額を考えると小規模個人再生がおすすめ

小規模個人再生と給与所得者等再生の大きな違いとして、最低弁済額の違いが挙げられます。

小規模個人再生の場合、最低弁済額は借入額に応じて計算されますが、給与所得者等再生は法廷可処分所得に基づいて計算されます。

そのため収入が多ければ多いほど、給与所得者等再生を選んだ人は弁済額が多くなってしまいます。

個人再生を選択するということは、借金を整理して生活を立て直すことが目的です。 自己破産ではなく個人再生を選んでいるということは、住宅がある場合も多いと思うので、個人再生で減額できる借金はできるだけ減額したいですよね。

そのため借金の減額を少しでもしたいのであれば、小規模個人再生を選ぶべきでしょう。 小規模個人再生であれば借金の減額効果が大きいので、今後の生活を考えるとプラスの面が大きいです。

個人再生をしても減額が少ないのであれば、手間や費用がかかる個人再生のメリット自体が薄れてしまいます。

このようなことを考えると、借金の減額効果が大きい小規模個人再生の方がメリットは多いですね。 平成30年の司法統計データでも、平成30年に申立があった小規模個人再生は11,473件に対して、給与所得者等再生は813件。実に14倍もの差があります。

これはそもそも給与所得者等再生が選べない人が多いという点もありますが、給与所得者等再生を選べる人でも実際は小規模個人再生を選んでいる機会が多いということ。つまりそれほど小規模個人再生の借金減額効果は大きいということですね。今後のことを考えて借金を少しでも減額したいのであれば、小規模個人再生がおすすめですよ。

債権者の同意が得られないのであれば給与所得者等再生

それでは給与所得者等再生を選ぶメリットはないのでしょうか。もちろんそんなことはなく、給与所得者等再生を選ぶメリットとしては、債権者の同意なしで手続きができるという点が挙げられます。

小規模個人再生では再生案の内容に対して、過半数以上の債権者の反対、または反対した債権者の債権額の総額が借金の半額を上回るとき、再生計画案が適用されません。 弁護士や司法書士といった専門家の手を借りて再生案を作った場合、金融機関が再生案に反対することはまずありません。そのため借金に占める割合で金融機関が多いのであれば、減額効果が大きい小規模個人再生を選んだ方がいいでしょう。

しかし個人や取引先からの借り入れが多い場合、給与所得者等再生を選んだ方がいい場合があります。

小規模個人再生が認められないのは、過半数もしくは債権額のうち半額の権利をもつ債権者の反対があった場合です。

そのためAから100万円、Bから100万円、Cから300万円の借り入れがあった場合、AとBが再生案に賛成しても、Cが反対した場合個人再生が認められません。

つまり場合によっては1人の反対で、個人再生が認められないケースがあります。 事前にこのような事態が想定できるのであれば、給与所得者等再生を選んで確実に個人再生を認めてもらって方がいいでしょう。

個人や取引先からの借り入れが多い場合、再生案の確実性よりも借金の減額自体に反対して再生案が認められないことも考えられます。

債権者の借入額と個人再生を申請したときどのような反応をするか、想像してみましょう。 そのときあまりいいイメージが浮かばないのであれば、給与所得者等再生を選んだ方がいいかもしれませんね。

小規模個人再生で反対される可能性について

給与所得者等再生を選ぶかどうか検討している人は、債権者からの反対が理由であることが多いです。それでは実際に小規模個人再生で手続きを進めたところ、実際に反対されるケースというのはどのくらいあるのでしょうか。ここからは小規模個人再生の手続きで反対される可能性について解説していきます。

小規模個人再生の決議では消極的同意が採用されている

小規模個人再生で再生案に賛成か反対かの決議は、書面で回答が求められます。 まず個人再生の手続きでは、債権者名簿を裁判所に提出しなければなりません。債権者名簿には会社名・債権額・住所などが記載されており、個人再生の申立があった旨は債権者名簿に基づいて通知されます。

その後再生案が完成したときの通知も債権者名簿に基づいて書面が交付され、期日までに書面の提出をしなければなりません。

小規模個人再生の場合、書面の返送がなければ再生案に賛成したとみなされます。これを消極的同意と言いますが、これは申立人にとって有利な制度です。

つまり再生案に反対するためにはわざわざ書面で反対をしなければならないので、反対するのはよほど反対を考えている人に絞られます。

また手続きは書面でおこなわれるので、債権者と直接出会うこともありません。

弁護士や司法書士といった専門家に個人再生の手続きを利用した場合、受任通知というものが債権者に送付されます。

受任通知を受け取った債権者は申立人に直接連絡できなくなるので、債権者と申立人が直接会うことはありません。

このように小規模個人再生決議は、かなり申立人に配慮された内容になっています。小規模個人再生の決議が不安だという人も、実際の手続きは多少有利であることを把握してもらえればと思います。

明確な反対者がいないのであれば小規模個人再生は認められることが多い

小規模個人再生の決議では消極的同意が使われるため、明確な反対者がいなければ個人再生が認められるケースが多いです。 実際平成30年の司法統計データでも平成30年に申立があった小規模個人再生11,473件のうち、小規模個人再生が棄却または却下されたのはわずか25件。 小規模個人再生が棄却または却下されたのは、全体のわずか0.2%です。 そして平成30年に申立があった小規模個人再生は11,473件に対して、給与所得者等再生は813件です。 このようなデータからも、明確な反対者がいなければ小規模個人再生は認められることが多く、そのことがわかっているから小規模個人再生を選択している人が多いです。 そのため小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらを選ぶべきかという結論は、基本的には小規模個人再生を選ぶべきという結論に至ります。

個人再生は今後の生活のことを考えて手続きを進めるべきなので、借り入れの減額効果が大きい小規模個人再生を選ぶメリットが大きいです。小規模個人再生は債権者の同意を得なければならないというハードルがありますが、小規模個人再生の決議では消極的同意が用いられます。そのため実際のところ、小規模個人再生は認められるケースがほとんど。 そのようなことを考えると、小規模個人再生を選んだ方がいいでしょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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