民事再生(個人再生)

退職金が多いと個人再生は大変?証明書を取り寄せる時の理由は?

個人再生では退職金の存在が1つのポイントになります。

退職金の有無や金額は個人再生後の返済額、必要書類の提出、双方の側面から大きな影響力を持ちます。

退職額が多額になると、当初の予想よりも返済額が大きくなる原因になります。勤続年数の長い正社員が個人再生を検討する場合は特に注意が必要です。

さらに、退職金に関する提出書類は他の書類と比べると取り寄せのハードルが高く、退職金がネックで手続きがスムーズに進まないこともあるほどです。

目次

個人再生した場合の職金への影響は?

個人再生をすすめていくうえで、勤務先の退職金は手続きに大きな影響を与えます。

多額の退職金は、個人再生手続き後の返済額が当初予想したよりも増える原因になります。また、裁判所に提出する退職金見込み額証明書も、その他の書類に比べれば取り寄せるのにやや面倒を要したりします。

個人再生では債務者の保有している財産の種類および金額を洗い出す必要がありますが、退職金は財産の中でも最もネックとなる項目の代表格と言えるでしょう。

退職金が財産にカウントされるのは一般の感覚からするとおかしな感じもします。しかし、個人再生手続きや破産手続きの世界では、退職金は債務者の財産と扱われるのが通常なのです。

退職金が個人再生の返済額に与える影響

個人再生手続き上、退職金の金額は個人再生後の借金の返済額に影響を与えることが多いです。

退職金の金額は債務者の「清算価値」に計上されます。

清算価値は、債務者が仮に破産した場合に、債権者が目当てにする財産の総額を言うのですが、この清算価値は高ければ高いほど返済額も上昇しやすい仕組みになっています。

清算価値の考え方はやや複雑なので詳細は別の記事に譲りますが、とりあえず清算価値が返済額の基準となるという点を押さえておきましょう。(必ずしも清算価値が返済額の基準になるとは限りません。他に最低弁済額や可処分所得も基準となり得ます。)

併せてチェック!

例えば、清算価値が200万円の場合。

清算価値の200万円が個人再生後の返済総額になり、これを3年かけて返済していく計算になります。

200万円÷36ヶ月=約56,000円

となりますので、手続き後は毎月56,000円返済してくことが必要になります。

手続き後の返済額は低ければ低いことに越したことはなく、毎月の56,000円を確保できそうにないのなら、最悪、個人再生を諦めざるを得なくなります。

要するに、清算価値は低ければ低いほど個人再生が上手くいく可能性が高くなり、手続き後の債務者の負担も軽くなるのです。

逆に清算価値は高ければ高いほど個人再生に悪影響を与えます。

清算価値は債務者の保有する財産の合算ですが、その財産の一つに退職金が含まれます。そして退職金額が高ければ高いほど、清算価値は高くなります。

では、退職金は全額まるまる清算価値に含める必要があるのでしょうか?

勤続年数にもよりますが、公務員や大企業の職員の場合、退職金の額だけで1,000万円以上になることも珍しくありません。

1,000万円を清算価値に計上すれば、それだけで個人再生後の返済額は跳ね上がってしまいます。

個人再生での退職金見込み額は全額清算価値に含める必要がある?

実のところ退職金見込み額はまるまる全額を清算価値に計上する必要はありません。

具体的には、退職金見込み額の8分の1を清算価値に含めれば足ります。

さらに「見込み額」とは、現時点で退職したとしたら支給されるであろう退職金額のことを指し、定年時点で支給される金額ではありません。

退職金が原因で返済額が跳ね上がらないよう調整されているのです。

退職金が途中で減額されることはあり得ますし、必ず定年まで務め続けるとは限りませんので、現実的にもバランスの取れた扱いになっていると言えるでしょう。

個人再生における退職金見込み額の計算の具体例

退職金見込み額の計算を具体例で考えてみましょう。

なお、清算価値に含める財産の種類には以下のようなものが挙げられます。

  • 現金:現金の額
  • 預貯金、財形貯蓄:預貯金の額
  • 積立式保険(終身保険、養老保険、学資保険等):解約返戻金の金額
  • 自動車やバイク:査定額。
  • 不動産:査定額。宅ローンが未払いなら査定額からローン残高をマイナスした金額が財産に計上されます。
  • 株式、投資信託:時価
  • 貸付金(人に貸したお金):未回収の金額
  • 売掛金:未回収の金額
  • 退職金(現時点で退職した場合の退職金):退職金見込み額の8分の1
  • 損害賠償請求権:交通事故など、加害者への損害賠償請求権が発生している時もその金額が財産に含まれます。
  • 過払い金 :18%超のカードローンの利用歴がある場合は過払金の発生可能性あり、回収見込額が財産に含まれます。

例:公務員Aさんの財産

  • 退職金見込み額:1,200万円
  • 終身保険の解約返戻金:100万円
  • その他の財産の合計:60万円

この場合、清算価値は、

(1,200万円÷8) + 100万 + 60万円 = 310万円

となります。(管轄裁判所によっては、310万から99万円を控除して良いとされることもあります)

清算価値が310万円なので、Aさんはこれを3年かけて返済していくことになります。月額にすると約87,000円ですね(310万円÷36ヶ月=約87,000円)。

Aさんの例からも、退職金がいかに個人再生に影響を与えるかが理解できるはずです。

退職金見込額や、保険の解約返戻金など、普段は財産だと意識しないような項目も清算価値に含まれるので、全てを合算すると、思った以上に高額になることがあるのです。

勤続年数の長い公務員や大企業の会社員は、退職金見込み額が多額になる傾向が強いので注意が必要です。

なお、退職金や保険の解約返戻金が影響して清算価値が高まった結果、3年での分割返済が無理そうだということであれば、裁判所にお願いし、分割回数(最大で60回まで伸ばすことが可能)を伸ばしてもらうことが1つの対策になるでしょう。

分割の伸長が認められるか否かは裁判所の判断に委ねることになります。

個人再生の退職金見込み額の計算が8分の1ではすまないケース

清算価値に計上する退職金見込み額は8分の1で計算するのが原則ですが、下記の場合にはさらに上回る金額を計上することになっています。

近々退職することが決まっている場合

退職日が差し迫っている場合は、退職金見込み額をまるまるもらえる可能性が高いとして、退職金見込み額の4分の1が清算価値に計上されることになります。

例えば、1200万円の退職金を受け取る見込みであれば、4分の1の300万円が清算価値に含まれることになります。

定年間近の会社員は、このルールに引っかかる可能性があるので注意したほうがいいでしょう。

すでに退職金を受け取っている場合

退職金受け取り後、手元に残っている退職金額がそのまま清算価値に計上されます。

退職金を受け取ったまま1円も使っていないのであれば、退職金見込み額が全額計上されますので、退職金が多額だと清算価値がかなり大きくなるのではないでしょうか。

個人再生に必要な退職金見込み額証明書

これまで述べてきた通り、退職金額は個人再生の手続きに大きな影響を及ぼします。

退職金見込み額は債務者の財産を把握するうえで重要な情報になりますので、会社が発行する書面でもって明確に金額を示す必要があります。

だいたいとか、およその金額ではダメで、当然ですが本人の自己申告では裁判所は認めてくれません。

根拠となる書面を提出してきちんと金額を示す必要があるのです。

具体的には会社が発行する(原則、会社印が押印されたもの)、退職金見込み額証明書が必要です。

書類名に限定はありませんが、「現時点で退職したら、具体的にいくらの金額が支給されるのか」が明記してあることが必要です。

単に退職金見込み額が記載してあるだけではダメで、基本的には代表印が押されているものでなければいけません。支給権限のない者が保証した金額にはなんら信頼性が期待できないからです。

さらに日付も重要と言えます。退職金額は年月の経過とともに増えていきますので、どの時点での支給額なのかも見逃せない事実だからです。

退職金見込み額証明書の申請先ですが、通常の会社であれば、お勤め先の人事課や経理課にお願いすることになります。

退職金見込み額証明書を申請すると個人再生の手続きが会社にバレる?

退職金見込み額証明書の取り寄せには心理的な抵抗を感じる人がいるのも事実です。

会社としても発行する機会が滅多にない類の書類でしょうから、発行に際して「なんに使うの?」と問われる恐れもあります。

借金を抱えていることを会社に打ち明けられる人、あるいは既に明かしている人であればそれほど気にならないでしょう。しかし、借金の存在や債務整理手続きを内緒にしておきたい人にとっては、退職金見込み額証明書の取り寄せは高いハードルになり得ます。

そこで退職金見込み額証明書を申請するにあたっては、それなりの理由を事前に用意しておいたほうがいいでしょう。

個人再生における退職金見込み額証明書取り寄せの理由

一般的に理由としてよく使われるのは「住宅ローンの融資申請」です。

多額の融資には、退職金など借主の潜在的な財産も貸し出しの判断材料にされうるので、住宅ローンの融資申請を理由にするのはもっともらしい理由になります。

実際のところ、住宅ローンの申請時に本当に退職金見込み額証明書が求められるかは微妙なところですが、相手がよほど融資に詳しい人でない限り細かく突っ込まれることはないでしょう。

住宅ローン以外では、教育ローンの申請や連帯保証人になる契約もよくある理由として紹介されます。

最近、FP(ファイナンシャルプランナー)にライプランの設計や生命保険の相談をする人が増えていますが、FPとの面談でも退職金見込み額を聞かれることがあります。老後に必要な資金や生命保険の適切な保障額を計算するには、死亡後、あるいは退職後に会社から支給される金額を知ることが、正確な計算には必要不可欠だからです。FPへの相談も理由の1つになり得るでしょう。

個人再生の退職金見込み額証明書が不要になる場合

以下の場合は、会社発行の退職金見込み額証明書が不要になることがあります。

  • 就業規則や社内規則から退職金額の計算方法がわかる場合
  • 勤続年数が短い場合

会社によっては、就業規則や社内規則に退職金額算出の計算方法が記載してある場合があります。そのケースでは、規則の写し及び規則記載の計算方法に沿って割り出された、具体的な退職金額を証拠書類として裁判所に提出することで、会社発行の退職金見込み額証明書が不要になることがあります。

ただし、個人再生の申し立て後、裁判所から「退職金見込み額証明書を追加で提出してください」と言われてしまえば、従わざるを得ないでしょう。

勤続年数が短い場合も退職金見込み額証明書が不要になり得ます。勤続年数が短いと退職金が少ない、あるいはゼロであることがほとんどだからです。

このあたりは管轄裁判所によって扱いが異なり、勤続年数が5年以内なら不要、3年以内なら不要など、年数に違いがあるようです。

しかし、このケースも先ほどと同様です。個人再生の申し立て後、「退職金見込み額証明書を追加で提出してください」と、裁判所から言われてしまう可能性は残ります。

勤続年数が長くても退職金が出ない会社の場合は?

勤続年数にかかわらず、そもそも退職金が出ない会社も存在します。

しかしその場合でも、退職金が「無いことを証明」する必要がありますので、退職金が無い旨が記載された退職金見込み額証明書が必要になるのです。

ただし、就業規則や社内規則に「退職金は無しとする」といった内容の記載があれば、その写しの提出で足りると思われます。

なお、アルバイトやパート社員など明らかに退職金が見込まれない雇用形態で働いている場合は、勤続年数にかかわらず退職金見込み額証明書は求められないのが通常です。

個人再生と退職金に関するまとめ

個人再生をすすめるうえで、退職金の存在は手続き後の返済額、必要書類の提出、双方の側面から大きな影響を与えます。

退職金見込み額が多額になると、清算価値が高まり予想よりも返済額が大きくなる原因になります。公務員や大企業の会社員など、勤続年数の長い正社員が個人再生を検討する場合は特に注意する必要があるでしょう。

また、退職金見込み額証明書は、他の書類に比べると取り寄せのハードルが高く、この点がネックで手続きがスムーズに進まないこともあります。

個人再生の認可を得るには、当初予想しなかったことが障害になることもありますので、信頼できる弁護士に依頼することがとても大切です。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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