民事再生(個人再生)

個人再生委員とは?

個人再生委員とは、個人再生を適正かつ円滑にすすめるために選任される専門委員のことです。

しかし、個人再生委員は必ずしも債務者の味方というわけではなく、第3者の立場で、公平な目線で仕事を行うのが彼らの役割です。

個人再生委員が選任されると、費用や手続きの側面で色々な手間が生じます。面談で借金や生活状況に関する様々なことを聞かれたりもします。

しかし、個人再生委員の裁判所の判断に与える影響は大きく、個人再生委員に対しては間違いのない態度で接することが重要です。

個人再生委員と上手に接するためにも、個人再生委員の仕事内容や役割について押さえておくことはとても大切です。

目次

個人再生委員とは?

個人再生をすすめるにあたり、手続きの途中で個人再生委員が裁判所から選任されることがあります。

個人再生委員とは、簡単に言うと、裁判所をサポートする役割を担う専門員のことで、破産処理の経験豊富な弁護士から選ばれます。

書類の内容や法律の要件など、個人再生手続きが適性かどうかのチェックは基本的には裁判所が行います。しかし、東京などの大都市では申し立て件数が多く、裁判所だけで全ての仕事をこなそうとするとパンクしてしまいます。

そのような問題を避けるため、再生委員に仕事の一部を任せることで仕事を効率かつ適正にすすめることができるようになるのです。いわばアウトソーシングみたいなものですね。

なお、個人再生委員は全ての案件で選任されるわけではなく、弁護士がついている案件では、むしろ選任されないのが原則です。ただ、東京地方裁判所では原則と例外が逆で、全案件一律、個人再生委員が選任される扱いになっています。東京に住む方が個人再生を希望する場合は、必然的に個人再生委員とかかわることになります。

個人再生委員の役割とは?

個人再生の行う仕事は民事再生法223条に記載されています。

民事再生法223条によると、個人再生委員の仕事は大きく分けて次の3つに大別されます。

  • 債務者の財産および収入状況を調査すること(223条第1項)
  • 再生債権の評価に関して裁判所を補助すること(同条第2項)
  • 債務者が適正な再生計画を作成するために必要な勧告をすること(同条第3項)

この3つのなかで裁判所の補助は多少例外的な位置付けにありますので、債務者本人に個人再生委員が密接にかかわってくるのは状況調査と勧告、特に状況調査がメインと考えていいでしょう。

個人再生委員が選任された場合、債務者本人は再生委員と面談し、面談後も収入状況や財産状況など、借金や生活に関する事柄について逐一聞かれることになります。

その都度正確に正直に伝えることが求められますし、嘘や虚偽の報告はしてはいけません。そのようなことがあった場合、最悪、個人再生手続きは認可を得られず失敗に終わります。個人再生委員には誠実に対応しましょう。

個人再生委員の仕事を時系列で確認してみましょう。

  • 事務所への依頼
  • 個人再生の申し立て(書類の提出)、個人再生委員の選任
  • 履行可能トレーニングの開始(個人再生委員による分割予納金の管理、申し立て書類の調査)
  • 個人再生委員との面談
  • 個人再生手続きの開始決定、開始決定の判断に関する意見書の提出
  • 再生計画案の提出、計画案に対する勧告
  • 書面決議に付する決定又は再生委員の意見書を聞く旨の決定、決定に関する意見者の提出
  • 認可・不認可の決定、認可・不認可の判断に関する意見書の提出

時系列を見て分かる通り、手続きの節目で、個人再生委員は裁判所に意見を提出することになっています。個人再生委員の意見は裁判所の判断に大きな影響をもたらします。個人再生を成功させたいのであれば、再生委員の印象を悪くしないことは必要不可欠なポイントと言えるでしょう。

履行可能トレーニンングの開始(分割予納金の入金管理)

履行可能トレーニングとは、東京地方裁判所を中心に実施されている返済能力を確認するためのシステムです。

履行可能トレーニングが開始されると、債務者本人は個人再生後に必要となるであろう金額を1ヶ月に1回程度、合計6ヶ月の期間にわたり、実際に支払うことになります。

履行可能トレーニング期間中に入金するお金は、債権者への返済に充てられることはなく、再生委員の報酬の支払いに充てられることになります。

毎月の振込先は個人再生委員が指定した口座になるところがポイントで、こうすることで、個人再生委員自身が債務者の返済能力を把握しやすくなっているのです。

言い方を変えれば、個人再生委員への報酬を分割支払いさせることで、同時に返済が可能かどうかを見極めることが履行可能トレーニングの趣旨とも言えます。

履行可能トレーニング中に毎月支払うお金のことを分割予納金と言います。「分割」と呼ぶくらいなので、一括で支払うことはできず、あくまでも毎月一定額を分割で支払う必要があります。

毎月の入金額は債務者によって変わりますので、6ヶ月間入金を続けることで、再生委員の報酬を超えてしまうことがあります。このような場合、払いすぎたお金は手続き終了後に本人に返金されます。返金されたお金は本人のものですので、債権者の支払いに充ててもいいですし、貯金として持っておくのもありです。

なお、履行可能トレーニングは東京地裁、さいたま地裁、横浜地裁、水戸地裁と、関東方面の裁判所が中心になって実施されています。

それ以外の裁判所でも、債務者本人に毎月の返済分を(債務者自身の口座に)積み立てさせるなど、何らかの形で履行可能性のチェックが行われるのが通常です。

履行可能トレーニングに失敗するとどうなる?

再生委員の分割予納金を払えないことは致命的です。

分割予納金を支払えないことは、将来にわたり返済していけないことを意味します。ここでつまずくと、個人再生委員が認可不相当の意見書を裁判所に提出する可能性もあります。

個人再生委員の意見は裁判所の判断に大きな影響を与えることは既に述べた通りです。そして個人再生手続きのなかでも重要部分を担う履行可能トレーニングで失敗することは、個人再生委員が持つ印象にかなりのダメージを与えると思ったほうがいいでしょう。

分割予納金の遅延、滞納は絶対に避けるべきですし、そのようなことを避ける為にも、不要な出費はできるだけ控えるのが無難です。

個人再生委員による申し立て書類の調査

個人再生委員がまずやることは、本人が裁判所に提出した申し立て書類のチェックです。その後に控える債務者本人との面談の材料になります。

必要書類に不備があったり、個人再生委員に気になる点があれば、それらを解消する書類の提出や説明を追加で求められます。

必要書類に不備が多いとそれだけで個人再生委員の印象が悪くなりますので、必要書類はできる限りきちんとしたものを揃えて提出する必要があります。

個人再生委員と債務者本人の面談

裁判所から選ばれた個人再生委員は、裁判所に提出された申し立て書類をチェックするとともに、債務者本人との面談の日取りを設定します。

申し立てから3週間以内に意見書を提出しなければいけない都合上、個人再生委員は、申し立て後2週間以内に面談日を設定するのが通常です。

面談の場所や面談時間を含め、面談の詳細は(弁護士に依頼していれば)代理人弁護士の事務所に連絡が入りますが、多くの場合、面談は個人再生委員に選任された弁護士の事務所で行われます。

面談で何が聞かれるかは、案件ごとに変わりますし、その再生委員の性格や特徴によってもちまちなので、予想が難しいところではあります。申し立て書類の内容は把握しておくことが前提になりますので、最低限、申し立て書類に目を通すくらいのことはしておきましょう。

とはいえ、個人再生手続きを弁護士に申立を依頼している場合には、申立代理人の弁護士も同行・同席してくれます。必要以上に緊張する必要はありません。

落ち着いて、聞かれた事柄に対して正直に答えましょう。

開始決定の判断に関する意見書の提出

申し立て書類と面談時の状況をもとに開始決定に関する意見書を提出します。開始決定が出ないことには個人再生手続きは進みませんので、この意見書もとても重要です。

再生計画案に対する勧告

再生計画案とは、返済スケジュール表のようなもので、債務者側で作成し裁判所に提出します。

通常は依頼先の弁護士が作成しますのでそれなりに適正な内容であることがほとんどです。

しかし何のチェックも無しにこの計画案を認めてしまうと、(本来返済すべき額よりも少ないなど)債権者にとって不公平な結果を招く危険があります。そこで個人再生委員が第3者の立場から再生計画案の内容を吟味し、問題があるようであれば、注意、助言など必要な勧告をします。

書面決議に付する決定又は再生委員の意見書を聞く旨の決定

債権者の意見を聞き、個人再生手続きに反映させる工程です。

給与所得者等再生では、個人再生委員の意見はそれなりに意味を持ちますが、圧倒的利用頻度の多い小規模個人再生においては、そこまで影響を持ちません。

認可・不認可の判断に関する意見書の提出

個人再生手続きの最終段階です。

書面決議の段階で問題がなければ、裁判所が認可かすべきか否かの最終的な判断をして、手続きが終了です。

この認可・不認可の判断に関しても、個人再生委員は意見書を提出します。

個人再生委員は必ずつく?つかないケースとは?

個人再生委員は全ての案件でつくわけではありません。

個人再生委員とかかわることなく手続きが終わることもありますし、むしろ個人再生委員は選任されないのが原則です。

個人再生委員が必ずつくケース

東京地方裁判所(及び地方の1部の裁判所)では、個人再生を申し立てた場合は必ず個人再生委員が選任される扱いになっています。たとえ弁護士に依頼した案件であっても選任されます。

ただし、弁護士に依頼した場合は、個人再生委員に支払う報酬は15万円で済みます。弁護士をつけず本人で申し立てる個人再生は、どうしても信頼性に欠けてしまいますので個人再生委員の業務量が増大することが予想され、報酬が25万円前後と高めに設定される扱いになります。

再生委員の報酬を安くする意味でも弁護士に依頼するメリットは大きいです。

ほか、債権者から債権評価の申出がなされたときにも、機械的に個人再生委員が選任されますが、債権評価の申し出がされることはレアケースでしょう。

個人再生委員がつかないケース

東京地方裁判所(及びごく1部の地域の裁判所)以外では、個人再生委員がつかないのが基本です。

ただし、東京以外の裁判所であっても、次のような場合には個人再生委員がつきます。

  • 借金の額や財産の額が多めの案件
  • 弁護士や司法書士をつけず本人のみで申し立てた案件

微妙なのは「借金の額や財産の額が多めの案件」で、どの程度を多めと解釈するかは各裁判所の判断によります。一般的に、住宅ローンを除いた債務総額が1,500万円を超えてくると多額だと言えるのではないでしょうか。

個人再生委員とは?誠実に接すべき相手です!

個人再生委員は必ずしも債務者の味方というわけではなく、第3者の立場で仕事を行うのが彼らの仕事です。

個人再生委員が選任されると、個人再生にかかる費用が高くなったり、面談が必要だったりと、色々な手間が生じますので嫌がる人もいるかもしれません。

しかし、本文でも触れたように、個人再生委員の裁判所の判断への影響力は大きく、個人再生委員に対しては間違いのない態度で接することが大切です。

個人再生はただでさえ提出書類が膨大になりますので、個人再生委員とのやり取りはさらなる負担の増大につながります。

そうこともあって、個人再生を希望する人のほとんどは弁護士などの専門家に依頼することがほとんどです。管轄の裁判所によっては、弁護士に依頼することで個人再生委員の選任も免れることができますので、専門家に依頼する意味は大きいでしょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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