民事再生(個人再生)

個人再生の履行テストとは?

個人再生の履行テスト(履行可能性テスト)とは、再生計画が認可された後のシミュレーションです。

分割予納金を納めることにより、再生計画どおりに弁済できるかどうかをテストします。

つまり、個人再生で減額された借金を返済できるかどうかの予行演習です。

必ず個人再生委員が選任される東京地方裁判所で実施されていますが、類似の積立金制度を行っている地方裁判所(大阪や仙台など)もありますので、弁護士に確認して下さい。

そんな履行テストについて、このページでは解説します。

目次

【個人再生】履行テスト実施の流れ

個人再生には「給与所得者等再生」「小規模個人再生」という2つの手続きがありますが、どちらを申請しても、東京地方裁判所の場合は必ず個人再生委員が選任されます。

東京は個人再生の申立件数が多く、認可決定が下りた後の監視もないため、履行テストを実施することで、「しっかり弁済を続けられるかどうか」の判断が必要になります。

そのため選任された個人再生委員は、すみやかに分割予納金振込口座を開設し、

その口座に対して、申し立てた本人が、「再生計画で弁済する予定額」に記載した弁済額を振り込むことになります。

振込み期間は原則6ヵ月(月1回)で、再生計画が認可決定されるまで続きます。

再生手続きの途中で計画弁済額が変更になる場合は、その月以降の履行テスト(分割予納金)も変更になりますが、それ以前に納付した分割予納金が戻りませんし、追加納付の必要はありません。

なお、分割予納金の支払いを行う過程で「申立人には十分な弁済能力がある」と判断されれば、6ヶ月よりも短い期間で履行テストが終了することもあるようです。通常6ヵ月のところ、3ヵ月~4ヵ月で終了、と言ったケースですね。

初回の分割予納金は1週間以内に支払う

初回の分割予納金に関しては、個人再生の申し立てから1週間以内に納める必要があります。個人再生手続き開始決定の判断材料にするためです。

支払いを確認した個人再生委員は、その後3週間以内に裁判所に対して、「開始決定に関する意見書」を提出します。

裁判所は意見書の内容を判断して、再生手続き開始決定を行います(他にも開始決定に必要な要件は存在します)。

初回の分割予納金の支払いがなければ、個人再生が棄却されることもあります。個人再生委員が、「再生計画は棄却した方が良い」といった旨の意見書を提出する可能性があるからですね。

そうなれば個人再生手続きが進まないので、初回の支払いに遅れないように、決められた金額を振り込んで下さい。

個人再生の手続き中も分割予納金を支払う

初回の分割予納金を支払い、個人再生の開始決定が出されれば、手続きが進んでいきます。

その間も履行テストとして、毎月指定の口座に支払いを続ける必要があります。

履行テストは個人再生後のシミュレーションですから、「初回に払ったから次は遅れてもいいだろう」といった考え方は認められません。

特に借金滞納に慣れていると、支払いを甘く考えてしまうことがあると思います。ただ履行テストをクリアしなければ個人再生は認められないので、意識を変える必要があるでしょう。

逆に言うと、履行テストで分割予納金を支払うことにより、借金癖、滞納癖が治ることもあるでしょう。

分割予納金の支払いが履行テストでは大切

分割予納金の支払いが行われなければ、個人再生委員にその理由を聞かれますし、「個人再生で認可されても支払い能力がない」と個人再生委員に判断されれば、その旨を記載した意見書が裁判所に提出されます。

意見書の内容が裁判所に受け入れられると、個人再生は認められないので注意して下さい(そのためにも支払い可能な金額を弁護士と打ち合わせる必要があります)。

開始決定から認可決定までに、個人再生委員は2回意見書を提出します。

1回目は債権者による書面決議の前、2回目は認可決定の前です。

どちらの意見書も問題なければ、個人再生は認可されるでしょう。

個人再生の履行テスト 分割予納金の注意点

ここで改めて、分割予納金の注意点を見ていきます。

履行テスト期間に滞納した場合

前述したように、履行テストの分割予納金を滞納すれば、個人再生委員がその旨を意見書に記載する可能性があります。

開始決定前と書面決議前、認可決定前の計3回、意見書は提出されますが、「支払い能力に問題がある」という記載があり、裁判所が受け入れてしまうと、個人再生は認められないでしょう。

小規模個人再生、給与所得者等再生、いずれも扱いは同じです。

その他の要件を満たしていても、滞納が続いて履行テストが滞れば、認可されない可能性が高くなります。

「急な交通事故で働く事が出来ない」「自然災害で働けない」といった不測の事態であれば、裁判所も事情を考慮してもらえると思いますが、特別な事情もなく滞納が続けば難しいでしょう。

履行テストは、言葉通り「テスト」です。

個人再生が認可された後の支払い能力を試されるので、滞納には気を付ける必要がありますね。

それでも滞納が続けば自己破産を考える

それでも滞納して個人再生が認められないことになれば、そもそもの支払い能力に問題があったのかもしれません。

現状で個人再生に適さないとなれば、もう一度再生計画を見直すか、もしくは他の債務整理として自己破産を検討する必要があるでしょう。

自己破産後に免責を受ければ、ほぼ全ての返済義務がなくなりますからね。

税金や社会保険料のような非免責債権は除きますが、銀行カードローンも、クレジットカードのキャッシング・ショッピングも、消費者金融の借金も、全て帳消しになります。

その分、一定の価値ある財産は没収されますし、基本的にマイホームも車も残せませんが、履行テストの分割予納金を滞納し、個人再生が認められなければ、自己破産という選択肢も現実的ではないでしょうか。

そのためにも、しっかり弁護士と相談しながら手続きを進めて下さい。

分割予納金の一括払いは認められない

履行テスト中の滞納に気を付ける必要がありますが、返済に余裕がある場合も注意して下さい。

まとまったお金が手元にあっても、一括払いは認められていません。

履行テストはあくまでも、再生計画に沿って弁済を続けられるかどうかの確認です。

裁判所に提出した再生計画通りの支払いが大切なので、決まった日時にしっかり支払いましょう。

個人再生の履行テストで支払った分割予納金はどうなる?

履行テストで支払った分割予納金は、まず個人再生委員の報酬に充てられます。

個人再生委員が選任されるかどうかは地方裁判所次第ですが、東京地方裁判所は必ず選任されますし、費用も15万円(弁護士がいる場合)、もしくは25万円(弁護士がいない場合)かかります。

弁護士の有無で手続きのスムーズさが異なるため、費用に差が付いているそうです(個人再生を自分で行うのは難しいので、基本的に弁護士に依頼することになるでしょう)。

そのように、分割予納金から個人再生委員の報酬が支払われ、残ったお金が返還される形になります。

弁護士に個人再生を依頼している場合は、まず弁護士に残ったお金が返還されますので、着手金などに未払いがあれば差し引かれた後、弁護士から返還されることになるでしょう。

つまり、履行テストで支払った分割予納金の全てが返還されるわけではなく、個人再生委員への報酬が必要ということです。

東京地方裁判所以外で履行テストはある?

東京地方裁判所では必ず個人再生委員が選任されるため、履行テストを実施する可能性が高いのですが、それ以外の地方裁判所はどうなのでしょうか。

地方裁判所は全国的にありますが、たとえば大阪地方裁判所、仙台地方裁判所では、原則として個人再生委員は選任されないため、予納金を納める必要もありません。

東京地方裁判所のような履行テストも不要ですが、その代わりに積立金の準備が必要になるケースがあります。

履行テストの分割予納金は裁判所に支払う制度でしたが、積立金は裁判所の指示により、手元で積み立てることになりますね。

主に個人再生を依頼する弁護士が口座を用意してくれるので、その口座に毎月、予定の弁済額を入れることになるでしょう。

そして再生計画案を提出する際に、積立金の状況についても裁判所に報告します(積立金口座の通帳コピーが必要になります)。

東京地方裁判所では、分割予納金から個人再生委員の報酬が差し引かれましたが、積立金からは費用が引かれません。全額を個人再生後の返済に充てられるので、負担の軽減に繋がるでしょう。

特に住宅ローンを抱えていれば、個人再生で圧縮された借金と共に返済を続けますが、積立金を返済に回すことにより、一時的に家計も楽になると思います。

なお、地方裁判所によっては「積立金は清算価値に含めなくても良い」という扱いになりますので、積立金によって個人再生の返済額は増えません。

まとめ

以上、個人再生の履行テストについて見てきました。

個人再生の「給与所得者等再生」「小規模個人再生」どちらを利用しても、東京地方裁判所では履行テストが実施される可能性が高いです。

履行テストの目的は、個人再生で認可を受けた後のシミュレーションですから、毎月1回、指定の口座に決まった弁済額を入れる必要があります。

その結果を見て、個人再生委員が裁判所に意見書を提出しますので、滞納には気を付けて下さい。

もし滞納した場合は、そもそもの再生計画に問題があるか、それとも個人再生に向いていないかのどちらかなので、自己破産も含めて再検討する必要があるでしょう。

履行テストで支払った分割予納金は、個人再生委員の報酬が差し引かれた後、依頼した弁護士に返還されますので、その弁護士経由で手元に戻ることになると思います。

東京以外の地方裁判所では、履行テストの代わりに積立金が必要になることも多いので、個人再生の実績が豊富な弁護士に相談しながら、手続きを進めると良いでしょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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