民事再生(個人再生)

個人再生の「給与所得者等再生」と「小規模個人再生」の違いとは?

このページでは、個人再生の「給与所得者等再生」と「小規模個人再生」の共通点と違いについて詳しくお伝えします。

共通点も多いのですが、双方で異なる部分があり、その部分が個人再生手続きの重要ポイントとなっています。

たとえば個人再生後に、弁済額が多くなりやすいのは給与所得者等再生の方です。「2年分の可処分所得」という要件があるからですね。

今から詳しく解説していきます。

目次

個人再生の基本事項

最初に個人再生について軽く触れます。

個人再生とは?

個人再生は、裁判所への申請が必要な債務整理手続きです。

再生計画の認可を受けることが出来れば、借金を大幅に減らせる上に、減額された借金は3年~5年の分割払いで返済可能です。

そのため、多重債務の借金地獄などで「返済が厳しい」という場合かつ、自己破産はしたくない(出来ない)事情がある方が利用するケースが多い、と言われています。

自己破産したくない(できない)事情とは、たとえば「住宅ローン滞納中のマイホームを残したい」という場合ですね。

自己破産を申し立てればマイホームは保証会社に競売にかけられ、売却されるでしょう。

しかし保証会社の代位弁済(返済の肩代わり)から6ヶ月以内なら、住宅を維持しつつ、減額された他の借金を返済できます。

住宅ローン自体の減額は出来ませんが、返済期間を伸ばすことは出来ますので、そのような場合に利用されやすい制度が個人再生です。

他にも、自己破産すれば職業制限に引っ掛かるけれども、個人再生なら引っ掛からない、という場合にも利用されることがあります。

個人再生と任意整理の比較

任意整理と比較して個人再生が選ばれることもあるでしょう。

任意整理も個人再生も、まずは払い過ぎた利息を引き直す計算(利息引き直し計算)を行いますが、その後の元本を大幅に減額できるのは個人再生の方です。

任意整理の効果は、一般的に将来利息と遅延損害金のカットに留まり、元本の減額はありません。

しかし個人再生なら、利息を引き直した元本を、以下の金額まで減らせる可能性があるのです。

  • 借金総額が100万円未満の場合は「100万円」
  • 借金総額が100万円以上500万円未満の場合は「100万円」
  • 借金総額が500万円以上1500万円未満の場合は「5分の1」
  • 借金総額が1500万円以上の場合は「300万円」

最低弁済基準額の条件(後述します)があるため、必ずしも上記になるわけではありませんが、個人再生は債務を大きく減らせる手続きと言えるでしょう。

個人再生は手続きが複雑

個人再生は「手続きが複雑で必要書類が多い」という特徴もあります。

  • 申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 家計表
  • 財産目録

上記のような書類と共に、戸籍謄本や住民票も必要になりますし、給料明細書、退職金見込み額証明書を添付しなければならないこともあります。

自己破産も提出書類が多い手続きですが、「個人再生の方が複雑」という見解もありますので、弁護士事務所に相談しながら進めると良いでしょう。

個人再生は給与所得者等再生と小規模個人再生に分かれる

個人再生は「給与所得者等再生」と「小規模個人再生」に分かれます。

ベースは小規模個人再生で、その特則として給与所得者等再生があります。

「自分は会社員だから給与所得者等再生かな」と思われるかもしれませんが、サラリーマンやOLも小規模個人再生を利用できます。

逆に収入の変動が激しい個人事業主は、小規模個人再生しか利用できません。

それぞれの共通点と違いを知った上で、「どちらが自分にとって有利なのか?」を知ることが大切です。

【個人再生】給与所得者等再生と小規模個人再生の共通点

給与所得者等再生と小規模個人再生には違いがありますが、共通点も多いです。

そのため、共通点から先に押さえることで、双方の違いが明確になるでしょう。

申請時の共通要件

  • 法人ではなく個人の債務者であること
  • このままでは返済不能に陥る可能性があること
  • 将来にわたり継続的、または反復的な収入が見込めること
  • 債務総額(住宅ローン以外)が5000万円以下であること

どの条件も分かりやすいのではないでしょうか。

個人を対象にした手続きなので法人は利用できませんし、返済不能に陥る可能性も含まれています。

個人再生は自己破産と違って返済が必要な手続きなので、継続的または反復的な収入もポイントです。

再生計画が認可されれば、原則5分の1まで借金を減らせますが、それでも完済まで支払いが必要ですからね。

住宅ローンを抱えていれば、減額された借金と共に返す必要がありますから、やはり収入要件が大切になるのです。

他にも、債務総額が5000万円以下でなければ個人再生は利用できません。

個人で5000万円を超える借金は少ないかもしれませんが、連帯保証人になって莫大な債務を背負うケースもあるのではないでしょうか。

それでも5000万円以下に収まれば、給与所得者等再生も小規模個人再生も申請可能ということです。

最低弁済額の共通点

先ほど「再生計画が認可されれば、原則5分の1まで借金を減らせます」と言いましたが、5分の1以上の弁済が必要なケースもあります。

給与所得者等再生と小規模個人再生で共通しているのは、「自己破産による配当以上の金額」という部分です。

これを清算価値保証の原則と言いますが、つまり、「自己破産した時に没収される財産の方が、個人再生の最低弁済額を上回っている場合は、その金額を弁済する必要がある」というものです。

たとえば借金総額が500万円のケースで考えてみましょう。

個人再生が認められれば、最低弁済額は100万円です。

しかし仮に自己破産して没収される財産が300万円あるとすれば、最低弁済額の100万円ではなく、300万円が弁済額になる、ということです。

給与所得者等再生と小規模個人再生の両方に共通している要件ですね。

再生計画認可後の共通点

個人再生認可後の共通点には以下があります。

・原則3年(最長5年)の分割払いで返済する

小規模個人再生だから7年になる、10年になる、といったことはありません。

返済期間はどちらも共通しています。

【個人再生】給与所得者等再生と小規模個人再生の相違点

共通点の次は相違点です。

限られた相違点ではありますが、どれも重要な相違点と言えます。

申請条件の相違点

申請条件の相違点に以下があります。

  • 給与所得者等再生は給与など定期的な収入を得る見込みがあり、その変動の幅が小さいこと
  • 給与所得者等再生は過去に給与所得者等再生から7年以内は利用できない

まず1点目の相違点ですが、給与所得者等再生を利用するには、給料のような変動幅が少ない安定収入が必要になります。

安定収入の基準は法律で定められていませんが、一般的には「過去2年以内の変動率が20%以内」と言われています。

たとえば、2年前の給料が月30万円とした場合、その後の2年間で24万円~36万円の範囲に収まっていれば、安定収入と見なされるでしょう。

そのように変動幅が少ない安定収入を得ていれば、アルバイトやパートでも給与所得者等再生を利用できる可能性があります。

逆にサラリーマンやOLでも、歩合制などで変動が激しければ、給与所得者等再生は利用できません(歩合制でも変動幅が少なければ利用できます)。

また、給与所得者等再生は「過去に給与所得者等再生を行ってから7年以内は利用できない」という規定もあります。

他にも、ハードシップ免責、自己破産免責を受けてから7年以内も利用できません。

このような規定は給与所得者等再生に特有のもので、小規模個人再生にはありません。

弁済額の相違点

給与所得者等再生と小規模個人再生の弁済額の共通点は以下でした。

  • 最低弁済額(原則5分の1)もしくは自己破産による配当以上の金額(清算価値要件)

さらに給与所得者等再生には、「2年分の可処分所得」という条件があります。

可処分所得とは、給与から税金、社会保険料、必要最低限の生活費を差し引いたものを言います。

この必要最低限の生活費は、生活保護を基準に定められているそうです。

居住地域、世帯人数、物価を考慮して算出されますが、あまり大きな金額は引けないでしょう。

給与所得によっては最低弁済額と清算価値要件を上回るため、個人再生後の弁済額も「2年分の可処分所得」になります。

先ほどの具体例(借金総額が500万円のケース)でもう一度見てみましょう。

このケースの最低弁済額は100万円でしたね。

仮に自己破産して没収される財産が300万円なら、最低弁済額の100万円を上回るため、個人再生後の弁済額は300万円になります。

さらに2年分の可処分所得が500万円だとすれば、今度は500万円が弁済額になる、ということです。

つまり、給与所得者等再生を利用すると、結果的に弁済額が多くなりやすいと言えます。

認定時の相違点

再生計画の認定時にも相違点があります。

先ほどの申請条件では、給与所得者等再生の方が厳しい条件と言えますが、今度は逆ですね。

まず給与所得者等再生に関しては、認定に関して債権者(借入れ先の銀行や信販会社など)の同意は必要ありません。

債権者の意見は聞いても、同意なしで認定されます。

逆に小規模個人再生の場合は、債権者の同意が必要になります。

全ての債権者ではなく、「債権者の頭数の過半数の同意かつ債権額の2分の1以上の同意」ですね。

過半数以上の債権者が同意することが前半部分。

過半数以上の同意があっても、「反対している債権者が2分の1以上の債権を持っていれば認められない」というのが後半部分です。

たとえば、消費者金融3社からの借金が総額で400万円あった場合で考えてみましょう。

3社中2社が小規模個人再生に賛成すれば、頭数の過半数を超えるので、前半部分はクリアします。

しかし残り1社の貸付金額が160万円(2分の1以上)だった場合、その1社が反対すれば認められない、ということです。

実務上では、小規模個人再生に反対する債権者は少ないと言われています。

銀行カードローンやクレジットカード会社、消費者金融が反対するケースはほとんどないそうです。

ただし政府系の金融機関、信用保証協会、公務員の共済組合、おまとめローンに関しては、反対の可能性があるので注意して下さい。

「どの債権者は反対する可能性が低いか」に関しては、実績豊富な弁護士が教えてくれるはずです。

また、債権者の同意は「消極的同意」によって行われます。

消極的同意とは、書面で反対意見を表明しない限り賛成になる、という方法ですね。

個人再生で給与所得者等再生は不利?

以上、個人再生の給与所得者等再生と小規模個人再生について見てきましたが、一般的に小規模個人再生の方が、可処分所得の要件がない分、恵まれていると言えるでしょう。

給与所得者等再生の利点として「債権者の同意が必要ない」はありますが、前述したように「小規模個人再生に反対する債権者は少ない」と言われています。

そのため、まずは小規模個人再生を中心に考える方が良いのではないでしょうか。

「給与所得者等再生と小規模個人再生のどっちが合っているのだろう?」という場合は、やはり弁護士のような専門家に相談するといいです。

双方の違いを改めて説明してくれると思いますし、どちらの方がメリットを受けやすいのか、そしてどちらがマッチしているかを判断してもらえるはずです。

もちろん個人再生以外の債務整理が合っていれば、そちらのアドバイスも行ってもらえるでしょう。

まとめ

個人再生は「給与所得者等再生」と「小規模個人再生」に分かれます。

どちらにも共通しているのは、認可を受けることで大幅に借金を減額できることです。他にも以下が共通していますね。

  • 法人ではなく個人の債務者であること
  • このままでは返済不能の陥る可能性があること
  • 将来にわたり継続的、または反復的な収入が見込めること
  • 債務総額(住宅ローン以外)が5000万円以下であること
  • 原則3年(最長5年)の分割払いで返済すること
  • 最低弁済額(原則5分の1)もしくは自己破産による配当(清算価値保証の原則)以上の返済が必要

それに対して、主な相違点に以下があります。

  • 給与所得者等再生は、給与など定期的な収入を得る見込みがあり、その変動の幅が小さいことが必要である
  • 給与所得者等再生は、・最低弁済額と清算価値保証の原則に加えて、2年分の可処分所得も判断される
  • 小規模個人再生を利用するには、債権者の同意が必要(給与所得者等再生は同意不要)

結論として、どちらが有利かと言えば、可処分所得の要件がない小規模個人再生の方でしょう。

小規模個人再生を利用するには債権者の同意が必要ですが、実務上、反対されるケースは少ないので、まずは小規模個人再生から考えると良いのではないでしょうか。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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