民事再生(個人再生)

個人再生の減額率は高い?最大で10分の1まで借金が減額?

個人再生は、借金の額が最大で10分の1まで減額することのできる債務整理解決方法です。

任意整理よりも減額効果が大きく、かつ破産手続きと違い住宅を残すことができる点に大きなメリットがあります。

具体的にどの程度減額されるかは、個人再生の種類、債務額、保有財産の価値によって異なってきます。

この記事では具体例を交えつつ、個人再生を利用することでどの程度の借金の減額が見込めるかを説明するとともに、任意整理や破産との違いについても触れたいと思います。

目次

個人再生による借金の減額メリット

個人再生は、破産と同じく裁判所を通した債務整理手続きです。

債務整理手続きで借金の減額をする方法は、個人再生の他にも任意整理がありますが、任意整理はあくまで利息をカットするに留まるのが通常で、元金は全額支払う必要があります。

この点、個人再生は利息が無くなるだけでなく、元金が最大で10分の1まで減額されます。

「任意整理では解決が厳しい、でも破産は絶対に避けたい」という相談者にとってはメリットの大きい手続きなのです。

具体的にどれくらい減額されるの?個人再生の減額ルール

個人再生を利用すると、元金が最大で10分の1(下限は100万円)まで減額されます。

その減額基準は厳格に定められており、具体的な返済額は法律のルールに従って決まるのです。そして、減額の基準は個人再生の種類や債務者の持っている財産の金額によって異なります。

個人再生の種類ごとに、どの程度まで減額されるか確認していきましょう。

小規模個人再生の減額ルール

個人再生には2つの種類があり、小規模個人再生と給与所得者等再生に分かれます。

ただし、実務では小規模個人再生の利用率のほうが圧倒的に高く、給与所得者等再生が利用される場面は少ないのが現状です。

小規模個人再生は、個人事業主のみならずサラリーマンも対象になりますので使い勝手が良い借金解決方法です。

しかし、小規模個人再生が優先される最も大きな理由はその減額率にあります。

給与所得者等再生よりも規模個人再生のほうが借金の減額率が高くなるのです。

そして小規模個人再生でどれくらい借金が減額されるかは最低弁済額によって決まります。

最低弁済額の基準

最低弁済額の金額は以下のルールによって定まります。

最低弁済額の基準は債務総額によって決まり表の通りです。

債務総額(住宅ローンは除く) 最低弁済額
500万円以下 100万円
500万円〜1500万円以下 債務総額の5分の1
1,500万〜3,000万円以下 300万円
3,000万円〜5,000万円以下 債務額の10分の1
※5,000万円超の借金は法律の条件を満たさず、個人再生の利用が不可となっています。

債務整理を希望する相談者の多くは、1,500万円以下なので、債務総額の5分の1まで減額されるのが最も多いパターンです。

小規模個人再生利用の減額事例

(例1) 借金総額600万円の場合

小規模個人再生の最低弁済額基準によると、

600万円÷5=120万円

となり、個人再生認可後は120万円を3年で返済してくことになります。

(例2) 借金総額400万円の場合

小規模個人再生の最低弁済額基準によると、

500万円以下=100万円

となり、個人再生認可後は100万円を3年で返済してくことになります。

400万円÷5とはならないので注意が必要です。減額後の下限は100万円であることを忘れないようにしましょう。

給与所得者等再生の減額ルール(個人再生ではややマイナー)

給与所得者等再生の減額の基準は、債務者の2年分の可処分所得が影響してきます。

具体的には、2年分の可処分所得と最低弁済基準額を比較して、より高いほうを選ぶことになります。そしてほとんどの場合、2年分の可処分所得の金額が上回ります。

つまり給与所得者等再生を利用する場合は、最低弁済基準額を基準にする小規模個人再生よりも減額率が悪くなることが通常なのです。

可処分所得の2年分とは?

可処分所得とは、簡単に言うと、収入から税金や生活費など必要経費を差し引いた金額のことを指します。

この必要経費には、債務者本人のほかに妻や子供などの扶養家族を養うためにかかるお金も含まれます。また、地域によっても異なるのが特徴です。

この給与所得者等再生の可処分所得を算出するための必要経費は、 民事再生法第二百四十一条第三項の額を定める政令で定められています。

可処分所得の金額を計算してみたい人は、実際に政令を確認してみましょう。住まいの地域や家族構成によって該当するものを選ぶだけなので、計算自体はそれほど難しくありません。

個人再生における給与所得者等再生の利用メリット

前述の通り、減額の度合いで言うと給与所得者等再生よりも小規模個人再生が優れています。それゆえ個人再生を利用する債務者の約9割が小規模個人再生を選択するのです。

ただ、小規模個人再生に無いメリットもあります。給与所得者等再生は債権者の同意は不要です。

小規模個人再生を選択した場合、個人再生をすることについては債権者の同意が必要で、大口債権者が反対すると再生自体が失敗するリスクがあるのです。

しかし所得者等再生はその同意が不要です。たとえ影響力のある債権者が手続きに反対しても、それにかまわず強制的に個人再生を通すことができてしまいます。

ここに給与所得者等再生の利用価値があります。

もっとも現実的には、債権者が同意に協力しないことなど滅多になく、弁護士や司法書士の専門家も小規模個人再生を優先して案内するのが一般です。

財産が多いと個人再生の減額率が悪くなる?清算価値保障の原則

個人再生の減額の程度は、債務額のみならず債務者が保有する財産によっても変わってきます。財産と減額率の関係について確認していきましょう。

これまで個人再生の減額の程度は、

小規模個人再生では、

債務額(=最低弁済額)

給与所得者等再生では、

可処分所得と最低弁済額との比較

によって決まると説明してきました。

しかし、これで終わらないのが個人再生の特徴です。

個人再生でどれくらい返済額が減るかを知るには債務者が保有している財産価値の合計も算出する必要があります。

なぜなら、

債務者の財産の合計額 > 最低弁済額(あるいは2年分の可処分所得)

の関係が成り立つならば、最低弁済額や可処分所得ではなく、財産の合計額を債権者に返済しなければいけないのが個人再生のルールだからです。

個人再生の減額率は、

小規模個人再生 → 最低弁済額

給与所得者等再生 → 最低弁済額と2年分の可処分所得で金額の多いほう

といったように、ひとまずは選ぶ個人再生の種類によって決まります。

しかし、ここからもうひと捻りあるのが個人再生の厄介な部分です。

上記のルールによっていったん割り出した金額よりも、保有する財産の合計額が高ければ、そちらのほうを基準に減額率を算出する仕組みになっているのです。

債務者の財産が個人再生の返済額に影響を与えるこのルールのことを、清算価値保障の原則と言い、債務者の財産の合計額は清算価値として扱われます。

清算価値が問題になる減額事例

(例1) 借金総額600万円、保有財産の合計が200万円

小規模個人再生の最低弁済額基準によると、

600万円÷5=120万円

となり、個人再生認可後は120万円を3年で返済してくことになりそうです。

しかし保有財産の合計額が200万あります。つまり最低弁済額は返済の基準とはならず、200万円の返済が必要になります。

債務者は200万円を3年かけて返済していくことになるのです。

元々の借金が600万円ですので借金の額は3分の1に減額されましたが、最低弁済額を基準にした時に比べ、減額率はかなり落ちてしまいましたね。(*判所によっては200万から99万円を控除することを認めています)

(例2) 借金総額600万円、保有財産の合計が100万円

小規模個人再生の最低弁済額基準によると、

600万円÷5=120万円

債務者の財産の合計額(100万円)< 最低弁済額(120万円)

ですので、債務者の財産は影響することなく120万円がそのまま返済の基準になります。

個人再生認可後は100万円を3年で返済してくことになります。

個人再生の減額率に大きな影響を及ぼす清算価値の算出方法は?

個人再生では清算価値(債務者の財産の合計額)の増減によって、返済額が増えたり減ったりします。そのため、清算価値のとらえ方は大切です。

清算価値は、簡単に言うと債務者本人が所有する財産の合計額に該当するのですが、財産のとらえ方はイメージするよりも複雑かもしれません。

個人再生では、普段の日常生活で私たちが財産だとは意識しないようなものも財産に含めるからです。

清算価値に含める財産の具体例

清算価値に含める財産の具体例は以下です。

  • 現金:現金の額
  • 預貯金、財形貯蓄:預貯金の額
  • 積立式保険(終身保険、養老保険、学資保険等):解約返戻金の金額
  • 自動車やバイク:査定額。
  • 不動産:査定額。住宅ローンが未払いなら査定額からローン残高をマイナスした金額が財産に計上されます。
  • 株式、投資信託:時価
  • 貸付金(人に貸したお金):未回収の金額
  • 売掛金:未回収の金額
  • 退職金(現時点で退職した場合の退職金):退職金見込み額の8分の1
  • 損害賠償請求権:交通事故など、加害者への損害賠償請求権が発生している時もその金額が財産に含まれます。
  • 過払い金:18%超のカードローンの利用歴がある場合は過払金の発生可能性あり、回収見込額が財産に含まれます。

退職金見込額や、積立式の保険など、普段は財産だと意識しないような項目も清算価値に含まれるので、全てを合算すると、思った以上に高額になることがあります。

公務員に多いのですが、勤続年数の長い正社員は退職金見込額が多額になりがちです。

なお、裁判所によっては、上記の合算額から99万円を差し引いたものを清算価値として扱う場合もあります。

個人再生と任意整理の違いは?減額メリットがあるのはどっち?

個人再生でよくある質問が、任意整理との違いです。

任意整理は債務整理手段のなかで最もメジャーな手続きです。そして任意整理も個人再生も分割で借金を返済していく点は同じです。

ただ、両者を比較した場合、減額効果が高いのは明らかに個人再生です。

分割回数そのものは、任意整理も個人再生も36回〜60回が目安で両者に違いはありません。しかし、個人再生は任意整理と違って、元本自体をカットすることができます。同じ分割返済でも任意整理は元本を全額返す必要がありますので、減額のメリットは全然違ってくるのです。

とはいえ、任意整理にも個人再生と比べて優れた点があります。

個人再生とは違い、任意整理は裁判所を通さない手続きです。そのため面倒な書類や審査がなく手軽に進めることが可能で、手続きにかかる時間も短いのです。

さらに、個人再生は住宅ローンをのぞく全ての借金を手続きに含める必要があります。一部の借金だけ手続きから外すことはできないのです。その結果として、自動車が引き揚げになったり、保証人へ請求がいったりと、それなりのデメリットを受け入れなければいけません。

一方で、任意整理は柔軟性に優れており、自動車引き揚げや保証への請求リスクを回避できるため、個人再生よりも使い勝手が良い側面があるのです。

個人再生と破産の違いは?減額メリットがあるのはどっち?

破産との違いもよく質問されるところです。

借金減額の効果は破産のほうが大きいです。破産は借金がゼロになりますのでメリットの大きさで言えば、個人再生よりも明らかに上です。

デメリットについては似ています。破産も個人再生もブラックリストの影響で5年〜10年はお金の借り入れが難しくなりますし、ローン未払いの自動車は引き揚げになります。保証人への請求も免れません。

個人再生と破産で、あえて個人再生を選択する最も大きな理由は、住宅にあります。

破産をすれば住宅売却は免れません。しかし個人再生(住宅資金特別条項付き)を選択すれば、住宅ローンの支払い中の家を残すことができるのです。

実際のところ、個人再生は住宅を残すための手続きという意味合いが強いです。これといって残すべき財産を持っていない人にとっては個人再生よりも破産を選んだほうが合理的と言えます。

住宅を残すための個人再生は、住宅資金特別条項付きの個人再生と言われ、小規模個人再生、給与所得者等再生、いずれであっても住宅を残すことはできます。

返済額が増える?個人再生の減額率が悪くなる行為とは?

個人再生の減額率は、選択する再生の種類、債務額、保有財産の価値によって変わることはこれまで説明した通りです。

しかし、場合によっては債務者の行いが悪影響して減額率が悪くなってしまう場合があります。減額率が悪くなれば、手続きを通すこともそれだけ厳しくなりますので注意しましょう。

偏頗弁済をすると減額率が悪くなる

個人再生をすると決めた後は、特定の借り入れ先に返済することが禁止されます。

友人だけには迷惑をかけたくないから返済するなどの行為は、債権者間の不公平になるからです。

弁護士や司法書士からも厳しく注意を促されると思いますが、万が一このルールに違反してしまうと、減額率に悪影響を与えます。

具体的には返済してしまった金額が清算価値に上乗せされます。清算価値が高くなれば必要返済額も上がる可能性がでてきます。

このように特定の債権者だけに返済する行為を偏頗(へんぱ)弁済と言います。偏頗弁済は減額率に悪影響を与えますし、最悪、再生手続き自体否定されかねないので注意しましょう。

勝手に財産の処分をすると減額率が悪くなる?

個人再生を決めた後に、勝手に財産を処分することは極力禁止されます。財産隠しに値する行為だからです。

財産の処分は、自動車など高価品の売却、積み立て式の生命保険の解約などが代表例ですが、とにかく現金に換金する行いはNGとなります。

このルールに違反すると、偏頗弁済同様、清算価値に処分額が上乗せされる恐れが出てきます。減額率に悪影響を及ぼす原因となるので注意しましょう。

ギャンブルや浪費による借金だと減額率に影響する?

前提として、ギャンブルや浪費で作った借金であっても、個人再生を利用することは可能です。

さらに、借りた理由がパチンコや競馬だからといって、そのことが直接の原因で減額率が下がったりすることはありません。

破産に比べると借り入れ理由は厳しく問われないのかなという印象はあります。

個人再生における減額メリットのまとめ

個人再生は借金の額が最大で10分の1まで減額することのできる債務整理解決方法で、任意整理よりも減額効果が大きく、かつ破産手続きと違い住宅を残すことができる点に大きな利用価値があります。

減額率は再生の種類、債務額、保有財産の価値によって異なります。

小規模個人再生は、

最低弁済額と清算価値を比較して高いほうの金額

給与所得者等再生は、

最低弁済額、2年分の可処分所得、清算価値をそれぞれ比較して高いほうの金額

といった基準でもって返済総額が決定します。

そして、上記基準によって割り出された返済総額を3年(36回払い)で返済していくのが個人再生の基本です。3年での返済が難しい場合は、裁判所にお願いして5年(60回)払いにしてもらうことも状況によっては可能とされます。

個人再生は減額効果のとても高い借金解決方法です。

しかし偏頗弁済の禁止、財産の処分の禁止など、注意しなければいけない点も多々あります。弁護士や司法書士などの専門家のアドバイスにしたがって進めていくのが安心でしょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

個人再生(民事再生)で気になる項目を徹底解説!へ戻る

個人再生(民事再生)で気になる項目を徹底解説!

借金問題の解決方法