民事再生(個人再生)

アルバイトでも個人再生の利用はできるの?個人再生は正社員限定?

個人再生は債権者にきちんと返済していく意思と能力がある人でなければ利用が認められないところ、アルバイトの人でも個人再生は利用できるのかという問題があります。

日本でアルバイトと聞くと、どうしても収入が不安定なイメージが付きまといますので、アルバイトの人が個人再生を希望する際には不安を感じるケースも多いでしょう。

個人再生はアルバイトの社員にも利用が認められるのでしょうか。

結論から言うと、アルバイトでも個人再生の利用は可能です。

ただし、利用する際の注意点もありますので、この記事ではアルバイトと個人再生の関係について説明していきたいと思います。

目次

アルバイトでも個人再生の利用はできるの?

結論からいうと、アルバイトでも個人再生の利用は可能です。「アルバイトだから」という理由で個人再生の利用が否定されることはないのです。しかし、手続きを進めていくうえで、アルバイトであるがゆえの不安はあります。

個人再生では、

  • 将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること
  • 借金の総額が5000万円以下であること
  • 債務者が個人であること
  • 不当な目的が無いこと

が一般的な要件として求められます。

そして正社員ではなくアルバイトであることは「将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること」の要件を満たさない可能性が考えられます。

しかし、アルバイトだからといってそれだけで継続的に収入が見込めないかと言えば、そんなことは無いはずです。

世の中にはアルバイトで何年も生計を立てている人はたくさんいます。アルバイトでも正社員より稼いでいる人もたくさんいるでしょう。

逆に、正社員の人であってもアルバイトより時給が低かったり、転職の繰り返しで生計が不安定だったりする人もいます。

つまり継続的に収入を得る見込みがあるかどうかは、正社員、アルバイト、パート、派遣社員といった雇用形態とは直接関係がありません。

労働基準法の解雇規制により正社員が解雇になりにくいのは事実であるものの、その地位も絶対ではなく、リストラのリスクは誰もが負っていることは言うまでもないでしょう。

経団連の会長が終身雇用の終了を宣言した今後、突然の解雇の可能性はより高まっていくはずです。

ただし、正社員に比べてアルバイトやパート社員が、給料が低い傾向にあるのも事実です。アルバイトで生計を立てている人だと手取月収が15万円以下だなんてこともよくあります。

そして、この収入の低さは個人再生手続きの成否にダイレクトな影響を及ぼします。

大切なのは社員かアルバイトかという雇用形態ではなく、収入がどの程度あるか、その収入が今後も続きそうかどうかです。

個人再生では履行可能性が大事なポイント!アルバイトでも大丈夫

「将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること」再生手続きのこの要件のことを履行可能性と言います。

では履行可能性はどのように判断するのでしょうか?

履行可能性はその案件ごとに裁判官が判断するものなので明確には答えられません。

裁判官がこの人は借金を返済していけそうだと思えば履行可能は認められますし、この人は無理そうだなと思えば履行可能性は否定され、つまり再生手続き自体が失敗に終わります。

ただし、一般的には以下の要件は満たす必要があります。

世帯収入(手取り)− 生活支出 − 借金の返済額 > 0円

この要件を満たさないと家計が赤字になってしまうわけですから、個人再生が認められない可能性が高くなるのはイメージがつくでしょう。

家計が赤字だと、裁判官ではない私たちですら返していくのは難しそうだなと思いますよね。

アルバイトでも大丈夫?個人再生の履行可能性の判断方法

前述の通り、

世帯収入(手取り) − 生活支出 − 借金の返済額 > 0円

となっていなければ、家計が赤字となってしまい履行可能が危ぶまれます。

そのため、再生手続きを進めていく上では、世帯収入、生活支出、借金の返済額をそれぞれ明らかにしていくことが必要です。

世帯収入

世帯収入なので、本人以外の家族も含めて計算します。個人再生では本人の収入のみで考えるのが基本ですが、状況によっては妻や同居の親、子供の収入も含まれます。

子供がいる世帯の場合、妻の収入を入れないと赤字になってしまう家庭が大半なので、妻の収入は世帯収入に含めても問題ないケースがほとんどです。

ただし、いくら妻に収入があっても本人が無職ではさすがに厳しく、返済していく意思が本当にあるのか、裁判官にから疑われても致し方ないでしょう。

生活支出

基本的には本人と本人が扶養する家族にかかる生活支出がベースになります。

生活支出にいくらかかっているかを正確に把握している家庭は少ないので、個人再生をするのであればきちんと家計簿をつける必要があります。

家計簿(家計収支表)は、裁判所に提出しますのでいい加減なものではいけません。

借金の返済額

借金の返済額は、仮に個人再生手続きが通った場合の返済額であり、手続き前の返済額ではありません。

そしてこの返済額は個人再生が定めるルールに沿って決まります。5分の1程度まで減額(下限は100万円)された金額を返済していくケースが最も多いです。

アルバイト社員が個人再生をする場合の具体例

<例> 妻と二人暮らしのAさんの場合

Aさん:アルバイトの手取り収入14万円〜16万円

Aさん妻:パート手取り収入8万円

Aさんの借金の総額:500万

月の世帯収入の平均:23万円

月の生活支出の平均:19万円

再生手続き後の返済予想額

500万円÷5=100万円

この100万円は3年間で返済していく返済額の総額なので、1ヶ月の予想返済額は36回で割ったものになります。

100万÷36回=2万7,000円

それぞれの数字が明らかになりましたので、先ほどの計算式に当てはめて見ましょう。

世帯収入(手取り) − 生活支出 − 借金の返済額 > 0円

22万円 − 19万円 −2万7,000万円 > 0円

ギリギリですが、毎月1万円弱あまる計算になりますね。

Aさんのケースは毎月の家計が赤字になっていないという意味では、個人再生が通る可能はあります。未成年の子供がいないので生活支出が低めに出たのが幸いでしょう。子供がいれば難しかったと思います。

そして、実際にAさんの履行可能性が認めらるかどうかは上記の計算以外にも様々な事情が考慮がされるので、最終的には裁判官の判断になるでしょう。

例えば、Aさんの転職歴が多かったり、アルバイトの内容が季節限定だったり、妻が妊娠中で今後の支出の増加が見込まれたりする等の事情があれば、履行可能性はさらに厳しくなることが予想されます。

Aさんの事例で明らかになったと思いますが、アルバイトだからという理由で履行可能性が否定されることはないものの、アルバイトであるがゆえの収入の低さは再生手続きにマイナスの影響を与えます。

正社員と違いアルバイトにはボーナスが無いのも大きな痛手ですね。ボーナスがあれば、12ヶ月で割った金額を1ヶ月の収入に上乗せできるからです。

期間限定のアルバイトだと個人再生はどうなる?

短期間や期間限定のアルバイト勤務だと、履行可能性はさらに厳しくなります。

期間に終わると収入が途絶えてしまう可能性が高く、収入に継続性があるとは言いにくいからです。仕事の契約期間が終了したらその後はどうやって返済していくの?と言う疑問を裁判官に抱かせてしまいます。

ただ、この場合も契約期間経過後の再就労の見通し、失業中の返済金確保の見通しなど、たとえ契約が終了しても返済を継続していくことができるんだということを示すことができるのなら、個人再生利用の道は残されます。

この契約期間の問題は、短期アルバイトのみならず、期間工や派遣社員にも当てはまります。

ただ、派遣社員の場合は派遣登録をしている限り、派遣会社元から雇われ続けることになるため、短期アルバイトに比べれば見通しは明るいでしょう。

個人再生なら小規模個人再生を!アルバイトの給与所得者等再生は厳しい?

実のところ、個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。

このうち、給与所得者等再生は、収入が安定していることに加え「過去2年間の収入の変動幅が20%以内」でなければ認められない等の制限があり、履行可能性の判断基準が小規模個人再生よりも厳しくなっています。

アルバイトの人は、正社員に比べて収入の増減に幅があることが多いので20%ルールに引っかかる可能性があります。

それゆえ、アルバイトの人は給与所得者等再生を極力避けて、小規模個人再生を選ぶのが正解です。

もっとも、この選択は正社員であっても同様で、アルバイト正社員関係なく小規模個人再生は避けるのが一般です。理由は、給与所得者等再生は小規模個人再生よりも借金の減額効果が悪く、例外的な事情がない限り利用価値が薄いからです。

小規模個人再生を利用すれば十分で、給与所得者等再生に向かないからといって悲観する必要はないでしょう。

アルバイト収入のみでは厳しい?個人再生では本人以外の収入も含む? 

個人再生では「将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること」が求められますが、ここでの収入は本人の収入であることが原則です。

ただし、この点の解釈はある程度柔軟に運営されており、継続して家族から援助を受けられるのであれば、本人以外の収入も含めて考えることが可能です。

代表的なものは妻からの援助ですが、場合によっては遠方に住んでいる子供からの援助なんかも含める余地もあります。このあたりは裁判官の判断なので一概には言えないところです。

個人再生の返済は3ヶ月に1回?アルバイトには助かる

カードローン会社への返済は1ヶ月に1回が通常ですが、個人再生後の返済は3ヶ月に1回のペースでも構いません。

アルバイトだと勤務時間により月の収入が変動するので、3ヶ月に1回の返済は助かるでしょう。このあたりはアルバイトにも優しいルールになっています。

個人再生とのアルバイトとの関係のまとめ

個人再生はアルバイトであっても利用が可能です。

アルバイトの人が個人再生を利用する際には、給与所得者等ではなく小規模個人再生を選んだ方がいいのでこの選択は間違えないようにしましょう。

しかし、アルバイトの場合は正社員よりも収入が低めになる傾向があるので、この収入の低さが再生手続きに悪影響を与えることはあります。

収入は本人以外にも家族の援助を含めることが可能ですが、最終的な判断は裁判官に委ねられます。基本的には本人の収入が返済可能か否かの判断の基礎になるので、収入があげられるチャンスがあるのなら上げられるにこしたことはありません。

個人再生手続きでは本人の働く気力と収入能力がとても大切です。依頼先の弁護士のアドバイスのもと、アルバイトであっても就労意思と収入能力を証明できるよう、裁判所にアピールしていきましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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