民事再生(個人再生)

個人再生で債権者から反対されたときはどうする?

個人再生は、破産を回避しつつも借金の金額を大幅に減額できる手続きで、特に住宅を残したい人にとってはメリットの大きい手続きです。

債権者にとっても破産されるよりは、いくらかでも返済してもらったほうがいい側面があるので、その意味では債務者と債権者、双方にとって実益のある手続きと言えるでしょう。

しかし、そんな個人再生に反対する債権者や業者が出てきてしまった場合、個人再生手続きはどうなるのでしょうか?

今回は、個人再生と債権者の反対をテーマに、注意点や対処法をお話したいと思います。

目次

個人再生で債権者から反対されることはあるの?

個人再生には、小規模個人再生と給与所得等再生の2つの種類があります。

いずれも民事再生手続であることには変わりないのですが、個人再生を選択する場合と給与所得者等再生を選択する場合の大きな違いの1つに、「債権者の同意」の問題があります。

給与者等再生と違い、小規模個人再生を選んだ場合、債権者の数の2分の1以上の反対がなく、かつ反対した債権者の債権額の合計が全債権額の2分の1を超えていないことが必要になります。

つまり、小規模個人再生手続きを選んだ場合においては、業者側がNOと言えば、法律の要件を満たさず、再生手続が認められないのです。

この点、小規模個人再生ではなく、給与所得者等再生であれば、債権者側が反対しても再生手続を通すことは可能です。しかし、多くの場合、給与所得者再生等を選ぶよりも、小規模個人再生を選んだほうが、手続後の月々の返済額が少なくなります。

また、小規模個人再生には債権者の同意が要件となっているものの、実際に反対してくる債権者は極めて稀です。債権者にとっても、安易に個人再生に反対すれば、債務者に破産されてしまいかねず、逆に貸したお金を回収できない結果を招く可能性が生じます。

つまり、小規模個人再生を進めるにあたって、債権者から反対されるリスクはそれほど高くないのです。

そういったこともあって、弁護士や司法書士の専門家が個人再生手続の依頼を受けた場合、例え相談者がサラリーマンであっても、給与所得者等再生ではなく、小規模個人再生を優先して検討するのが一般的です(小規模個人再生は、個人事業主でなくとも手続の対象となります)。

実際、2018年度の司法統計では小規模個人再生の選択割合が約9割となっています。個人再生といえば、小規模個人再生のことを指すと考えても差し支えないでしょう。

小規模個人再生に反対してくる債権者とは?

小規模個人再生に反対する債権者は極めて稀であることは間違いありません。しかし、100%反対されないかといえばそうでもなく、残念ながら同意を得られない債権者もいることは事実です。

概ねの傾向ですが、危ないのは民間業者よりも国の機関、あるいは公益法人です。銀行、消費者金融、信販会社など民間業者が個人再生に反対してくる確率は極めて低いです。

反対してくるリスクが高いのは、民間業者よりも、「○○金融公庫」「○○基金」「○○協会」などです。

もちろん、「民間に比べれば」反対される確率が高いだけであって、借入先が国や公益法人だからという理由だけで小規模個人再生を諦める必要はありません。

また、(詳細は後述しますが)万が一特定の債権者に反対されたとしても、反対してきた相手が大口債権者でなければ、そのまま再生の認可を得ることは可能です。

小規模個人再生で債権者から反対されたらどうなるの?

小規模個人再生では、債権者から反対されないことが手続の要件となっていますが、前述の通り、実際には反対をしてくる債権者はそれほど多くないのが現状です。

しかし、万が一反対をしてくる債権者が出てきた場合、小規模個人再生の手続きはどうなってしまうのでしょうか?

小規模個人再生の再生計画案の決議で、再生計画案が否決された場合、つまり、債権者から「必要な同意が得られなかった」場合、再生手続きは廃止になります。

再生手続きの廃止は手続きの強制終了を意味しますので、小規模個人再生は失敗に終わります。

個人再生手続には回数制限がありませんので、失敗しても再度裁判所に申し立てることは可能です。

しかし、一度失敗してしまったからには、以前の不備や欠陥を修正しない限り同じ結果に終わってしまいます。また、手続きに長々と時間をかけることは、待たせている債権者の機嫌を損ねます。しびれを切らした債権者が訴えてくることもあるでしょう。

また、細かいことですが、相談する事務所へ支払う費用の問題もあります。

事務所の方針にもよりますが、再度の申し立てをするにあたり、さらなる追加費用を納めなくてはいけない負担も生じるのです。

債権者の賛成・反対は書面決議によって行う

小規模個人再生における賛成・反対の決議方法は書面によって行われ、これを書面決議と言います。

流れとしては、まず債務者が裁判所へ「再生計画案」という、返済スケジュール表を提出し、その計画案について各債権者が同意をするという手順になります。

しかし、この同意の扱いにはポイントがあって、不同意が成立するには、債権者側で積極的に反対の意思を述べる書面を裁判所に提出する必要があるのです。

無回答、つまり賛成でも反対でもないという対応は、同意があったとしてみなされます。面倒なので何もしなかったというのであれば、それは再生手続きに同意をしたに等しい扱いになるのです。

このことを指して、債権者の同意は消極的同意で足りると言います。個人再生の同意が認められやすい、債務者にとって有利なルールになっているということです。

小規模個人再生をする上で債権者の反対を気にしたほうが良いパターンは?

前述の通り、小規模個人再生を進める上で、債権者から「必要な同意が得られなかった場合」は、再生手続自体が失敗に終わってしまいます。

しかし、この「必要な同意が得られなかった場合」とは、意外にもハードルが高く、具体的には以下の要件を満たさなければ同意があったとみなされます。

一人くらい個人再生に反対した債権者がいたからといって、それだけで再生手続の失敗が決定するわけではないのです。

まずは、条文を見てみましょう。

第4項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず,かつ,その議決権の額が議決権者の議決権の総額の2分の1を超えないときは,再生計画案の可決があったものとみなす。

引用元:民事再生法 第231条 第6項

民事再生法231条によれば、再生計画案が否決されるためには、

1.議決権者が議決権者総数の半数を満たす

または、

2.議決権の額が議決権者の議決権の総額の2分の1を超える

以上2つの要件のいずれかを満たす必要があります。具体例とともに、それぞれの要件を確認していきましょう。

1.議決権者が議決権者総数の半数を満たす

  • 債権者A
  • 債権者B
  • 債権者C
  • 債権者D

上記の例で、債権者AとBが反対すれば議決権者「総数の半数」を満たすので、小規模個人再生は否決されてしまいます。債権者Aのみが反対であればセーフです。

なお、議決権者=債権者と考えて問題ありません。

2.議決権の額が議決権者の議決権の総額の2分の1を超える

  • 債権者A:債権額100万円
  • 債権者B:債権額100万円
  • 債権者C:債権額100万円
  • 債権者D:債権額500万円

1と違い、債権者の頭数ではなく、債権額が問題になります。

ここでの議決権の考え方ですが、100万円=100議決権ととらえます。

この事例で、債権者Dのみが再生に反対し、その他の全員が同意した場合、反対した債権者の数が半数に届かず①の要件は満たしません。

しかし、唯一反対した債権者Dが全800議決権のうち500議決権を持ってしまっているので「議決権の総額の2分の1を超える」結果となり、再生計画案は否決、手続きは失敗に転びます。

このように、大口債権者が反対すると手続に与えるダメージが大きいのが小規模個人再生の特徴です(大口債権者は危険といっても、住宅ローンの借り入れ金額は議決権の算定には含まないので、そこは安心して大丈夫です)。

実務上も、問題になるのは①よりも②であることが多いです。特に、今回のDのように、たった一人の債権者の同意の有無で、結果が白か黒かになってしまうケースにおいては、その債権者がどの程度反対する確率が高いのか、債権者の特徴や傾向を事前に把握しておくことはとても大切です。

(債権者の数が少なければ①の要件も気にした方がいいのですが、再生手続きを希望する債務者の借入れ先は5つ以上の複数にまたがることがほとんどです)。

不運にも、個人再生に反対する確率の高い債権者が大口債権者として含まれていた場合、多くの弁護士や司法書士は最悪のケースとして小規模個人再生が失敗に終わる可能性も視野に入れるのではないでしょうか。

では、個人再生に反対する確率の高い債権者とは具体的にどのような債権者でしょうか?

個人再生に反対してくる債権業者の具体例

債務整理の業界では、小規模個人再生を検討するにあたり、以下の債権者には注意が必要だと言われています。

  • 日本政策金融公庫の教育ローン
  • 信用保証協会
  • 共済組合
  • 楽天カード

借入先に以上の債権者が含まれていたら注意です。

しかし、繰り返しになりますが、再生計画案への債権者の反対を気にするべきパターンは、債権者の数が少ない場合や、大口債権者がいる場合のみです。

いくら上に挙げた債権者が反対してくる可能性が高いといっても、全体に占める債権額の割合が小さければ、さほど問題視する必要はありません。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫といえば事業資金貸付のイメージがありますが、現在は教育ローンも取り扱っています。そのため、今やサラリーマンの方であっても無縁とはいえない組織です。

一般に、教育ローンは借り入れ金額が多額になる傾向があります。大学生の子供が2人以上いる場合には、日本政策金融公庫だけで400万以上の借金になることも珍しくありません。

つまり、日本政策金融公庫は小規模個人再生するうえで、大口債権者に該当する確率が極めて高いのです。

そしてこの日本政策金融公庫、ひと昔前(旧国民生活金融公庫の時代)は、再生計画案に反対する債権者として有名でした。現在は、反対するケースもかなり減ったと言われていますが、それでも大口債権者に該当するケースでは注意が必要です。

信用保証協会

信用保証協会とは事業資金の貸付に対して保証業務を取り扱っている公益法人です。この信用保証会も比較的、個人再生に反対するケースが多いと言われています。借入先の保証会社として信用保証協会がバックについていたら注意が必要です。

共済組合

共済組合から借金があるのは主に公務員の方でしょう。

共済組合は組合員に対して低金利で貸し出しており、民間のサラリーマンからすれば羨ましい限りなのですが、再生手続きをする上では裏目にでます。再生計画案に反対してくることがあるからです。

また、公務員の方にとって共済組合は勤務先のグループ会社のようなものなので、共済組合の借金を再生手続きに含めることで、手続きをしたことが勤務先に知られてしまうこともネックになり得ます。

楽天カード

基本的に営利を目的とする民間の銀行や消費者金融、信販会社が再生手続きに反対してくることは滅多にないのですが、楽天カードに限っては反対事例が報告されています。

ただし、楽天カードも何でもかんでも反対するというスタンスはとっておらず、借りたまま1回も返済してない債務者には協力しないなど、社内での判断基準が設けられているのだろうと推測します。

楽天カードに限らずですが、いくら民間の借入先であっても、借りたまま1回も返済していない、返済回数が著しく少ないなど、借入れの態様が悪ければ、個人再生に反対されることはあり得るでしょう。

なお、楽天カードについては事前問い合わせをすれば、再生計画案に反対するか否かの回答をもらえるという話も出ています。

債権者の反対により小規模個人再生が失敗してしまった場合の対処方法は?

残念ながら債権者の反対にあってしまい、小規模個人再生が失敗に終わってしまった場合の対処方法を考えてみましょう。

対処方法としては、主に以下の3の選択肢があります。

  • 再度、小規模個人再生を申し立てる
  • 給与所得者再生に変更して、再度、個人再生を申し立てる
  • 自己破産や任意整理など他の債務整理手続きに変更する

再度、小規模個人再生を申し立てる

意外に思うかもしれませんが、個人再生には回数制限というものがありません。ですので、債権者の同意要件を満たすことができず小規模個人再生が失敗したとしても、再度、小規模個人再生を申し立てることは可能なのです。

ただし、単に再トライすればいいというものではありません。以前同意を得られなかった債権者と交渉をして同意を取り付けるなど、前回の申し立てで問題となった不備や欠陥を修正できなければ、結果は同じになるのは当然です。

給与所得者等再生に変更して、再度、個人再生を申し立てる

債権者の同意要件を満たすことができず再生が失敗してしまった場合でも、反対した債権者との交渉や協議により同意を取り付け、改めて小規模個人再生で通すことは理論的には可能です。

しかし現実的には、一度反対した債権者の意思を覆すのは至難の業です。

そこで、債権者の同意が障害となって小規模個人再生が失敗したケースでは、小規模個人再生ではなく、給与所得者等再生に変更して申し立てるのが最も多いパターンです。

給与所得者等再生は、小規模個人再生と異なり債権者の同意が不要となっており、例え全員の債権者が手続きに反対したとしても、そのことは何ら手続きに影響を与えないからです。

ただ、給与所得者等再生は小規模個人再生に比べて、手続き後の返済額が大きくなってしまう可能性があります。

そして返済額が大きくなってしまえば、債権者の同意の問題をクリアできたとしても、今度は履行可能性の要件(その債務者の収入で返済は可能かどうか)を満たさない恐れがでてきます。

もっとも、未成年の子供の数が3人以上いるなど、扶養家族がたくさんいる債務者の場合は、小規模個人再生でも給与所得者等再生でも両者の返済額に大差ないことがほとんどです。

したがって、扶養家族の多い債務者が、債権者の同意を得られずに小規模個人再生で失敗しても、給与所得者等再生に変更して再度申し立てることで、問題なく個人再生の認可を得ることができるでしょう。

なお、個人事業主は給与所得者等再生を利用できないので、この点は注意が必要です。

自己破産や任意整理など他の債務整理手続きに変更する

小規模個人再生と給与所得者等再生、いずれを選択しても手続きの要件を満たすことが難しそうであるならば、個人再生以外の債務整理手続きを選ばざるを得ません。

基本的には破産手続きを考えることになると思います。

破産手続きには嫌悪感を示す人もいますが、残すべき価値ある財産を所有していない債務者にとっては、破産も個人再生もデメリットとしてはほぼ同じです。

住宅を残すために個人再生(住宅資金特別条項あり)を希望する債務者にとっては、破産をすることで住宅を手放すことになるので、痛手を被ることにはなります。厳しいですが、個人再生手続きが難しい以上、致し方ないでしょう。

個人再生も難しい、かといって破産も絶対に避けたい債務者にとっては任意整理という債務整理方法しか残されていないのですが、任意整理では個人再生よりもさらに返済額が高くなってしまうのが通常です。

個人再生を希望していた多くの債務者にとって、任意整理での借金解決は難しいでしょう。しかしながら、例えばですが、親族や知人など第三者からの援助を受けられる等の事情があるのなら、任意整理で利息をカットし、彼らから援助を受けつつ元金をこつこつ返済していく対処もあり得るとは思います。

まとめ

個人再生を進めるにあたって、債権者の反対が障害になることはあまりありません。

しかし、小規模個人再生を選択し、かつ借入額の過半数を占めるような大口債権者がいる場合は慎重になる必要が出てきます。

特に、大口債権者が、国の機関や営利を目的としない公益法人に該当する場合は要注意です。

そのような場合は、給与所得者等再生や、破産、任意整理などの他の債務整理手続きに切り替えることも視野に入れることになるでしょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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