民事再生(個人再生)

個人再生前のローンの延滞、個人再生後の返済の延滞はどうなる?

個人再生手続きを行うと、延滞している税金やローン(住宅ローンや車のローン)はどうなるのでしょうか。

カードローンやキャッシングと同じく、大幅に減額できるかどうかが気になりますね。

また、個人再生の認可を受けた後、返済を延滞するケースも考える必要があります。

認可直後は余裕を持って返済できても、その後に状況が変わることが考えられるからです。

その場合、すぐに認可を取り消されて元の借金額に戻るのか、それとも猶予期間をもらえるのか、このページで詳しく解説いたします。

目次

個人再生前に延滞している税金はどうなる?

まずは個人再生前に延滞している税金について見ていきましょう。

税金は個人再生でも減額されない

「税金が払えないから個人再生を考えている」という方も多いかもしれません。

しかし個人再生の申し立てを裁判所に行い、認可を受けても、税金が減額されることはありません。

個人再生は約5分の1に借金を減らせる手続きです。

自己破産のように借金理由が問われることもなく、一般的に任意整理よりも大幅に債務を減額できます(任意整理は利息と遅延損害金のカットに留まります)。

また、後述しますが、住宅ローンを延滞していても「住宅ローン特則」を利用すれば自宅を残せる可能性があります。

しかし税金は対象外なので、個人再生の認可を受けても、支払わない限り残るのです。

そのため、税金の延滞が続けば、「滞納処分」として強制的に回収されるリスクが高くなるでしょう。

信販会社や消費者金融などは、裁判所に強制執行を申し立てなければ、給与や財産の差し押さえは出来ませんが、国の「滞納処分」は裁判所を経由せずに強制執行できます。

税金を支払うお金がない場合どうする?

今までに所得税や住民税を滞納した経験があれば、郵送される用紙の色が徐々に変わり、「最終的に差し押さえ予告書が届いた」という経験をされているかもしれません。

「税金も個人再生で減額になる」「自己破産すれば免除になる」と思われるかもしれませんが、完済しない限り残るのが税金(非免責債権)なので、出来る限り早期に支払って下さい。

そうは言っても、「税金を支払うお金がない」という方が多いのではないでしょうか。

「税金滞納をきっかけに債務整理を考えた、借金返済でクビが回らない、全く余裕がない」という場合、まずは税務署に連絡して担当者と話し合って下さい。

連絡を入れずに放置し続けると、そのまま滞納処分になりやすいです。

税務署の職員も人間ですから、しっかり事情を説明することで、状況を分かってもらえる可能性があります。

特に伝えたいのは以下ですね。

  • 税金の支払いが非常に苦しい
  • 借金は個人再生で解決を図っている

その結果、税金を分割払いにしてもらえたり、本税以外の延滞金の支払いを遅らせてもらえたりすることがありますよ。

税金滞納に苦しんだ債務整理体験者の話

税金滞納に苦しんでいた債務整理体験者も以下のように言っていました。

「私は個人事業を営んでいましたが、所得税、法人税、個人事業税、どれも支払いが厳しく滞納していました。

払いたくても払えず、催促や督促が届きましたが、そのたび税務署に電話して待ってもらいましたね。

電話をかける前は、厳しいことを言われたらどうしよう…と悩みましたが、真摯に状況を説明することで分かってもらえました。

大切なのは、滞納から逃げないことです。

やがて事業が上向きになり、入った売上を税金に回して完済できましたね」

このように税金の延滞に関しては、個人再生のような債務整理手続きとは別に考える必要があります。

個人再生に掛かる費用(弁護士費用も含む)や、再生計画後の返済額、月々の生活費などを総合的に判断して、税金に回せるお金を計算してみて下さい。

現実的にどのくらい税金に充てられるか分かれば、計画的な分割払いも可能になるでしょう。

個人再生前に延滞したローンはどうなる

次に、個人再生前に延滞したローンについて見ていきます。

主なローンに住宅ローンと車のローンがありますね。

住宅ローン

まずは個人再生前に住宅ローンを延滞した場合です。

このケースでは、以下の条件を満たすことで、個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用できます。

  • 個人再生の利用者が所有(共有)している住宅であること
  • 個人再生の利用者が居住している住宅であること
  • 住宅ローンの抵当権が設定されていること
  • 住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと

住宅ローン特則が認められれば、住宅を所有(共有)しながら、住宅ローンの返済を延期できます。

ただし先ほどの4つの条件を満たしても、住宅ローンの返済を保証会社が肩代わりした後、6ヶ月経過していれば利用できません。

また、保証会社の肩代わりから6ヶ月未満でも、個人再生の申し立てまでに6ヶ月かかれば、やはり住宅ローン特則は利用できないので注意して下さい。

継続的な支払いが出来る可能性(履行可能性)も判断されますから、住宅ローンの滞納分に関しては、個人再生前に返済することが望ましいと言われています。

車のローン

次は個人再生前に車のローンを延滞しているケースです。

住宅ローンは「住宅ローン特則」で延期できますが、自動車を手元に残すことは出来ません。

無担保・無保証のキャッシングやカードローンと違って、車のローンは所有権が留保されているからです。

つまりローンの返済が終わるまで、車の所有権はローン会社にあるわけです。

そのため、支払いが継続できなくなれば、当然ながら車は引き上げられます。

引き上げられた車は売却され、その代金が車のローンに充てられた後、残ったローン分が個人再生の減額対象になります。

個人再生後に延滞するとどうなる?

ここまで個人再生前の税金やローンについて見てきましたが、個人再生で減額された返済を延滞した場合はどうなるのでしょうか。詳しく見ていきましょう

個人再生は3年~5年で完済を目指す手続き

個人再生が認められれば、大幅に借金を減らすことが出来ます。借金額にもよりますが、一般的な目安は「5分の1程度」です。

借金500万なら100万に減らせますし、借金1500万は300万になります。

そのように減額された借金は、原則3年で完済を目指しますが、場合によっては5年に切り替えることも可能です。

しかし一口に3年、5年と言っても、決して短い期間ではありません。

3年の間に収入が途絶えるかもしれませんし、たまたま返済を忘れることがないとは言い切れません。

個人再生後に返済が1回だけ遅れた場合

個人再生後に返済の遅れ(再生計画の不履行)があった場合、債権者(銀行や消費者金融など)の申し立てにより、再生計画が取り消されます。

今までにカードローンやキャッシングを延滞した経験があれば、以下のように思うかもしれません。

「1回くらい遅れても良いのでは?」

「数日遅れるくらい大丈夫なのでは?」

「次回にまとめて払うことも許されるのでは?」

しかし法律上、1回でも返済が遅れれば、債権者は取り消しの申し立てが可能になります。

ポイントとしては、「あくまでも債権者からの申し立て」ということです。

裁判所の判断で取り消すことは出来ないので、債権者からの申し立てがなければ、再生計画は取り消されません。

「法律上は債権者からの取り消しが可能でも、実際は待ってもらえる可能性がある」ということです。

仮に再生計画が取り消しになれば、個人再生前の借金額に戻るため、「もう自己破産せざるを得ない」という状況も十分に考えられます。

債権者としても、「自己破産されると回収できる金額が減る」と考えるため、1回の遅れでは動かない可能性が高いようです。

ただし支払いが遅れた場合は、すぐに連絡を入れる必要があるでしょう。

その辺りは個人再生を依頼した弁護士にまずは相談して下さい。

初回の支払いから滞納するのは印象が良くないので、ある程度の支払い実績を作ることが望ましいですね。

個人再生後に返済が2回、3回と遅れた場合

先ほどは1回遅れたケースですが、2回、3回と滞納が続けば、債権者も取り消しの申し立てに動くでしょう。

「自己破産されると回収できる金額が減る」と先ほどお伝えしましたが、それでも延滞が続くよりは見込みがあります。

自己破産には財産の精算手続きがありますので、そこから少しでも回収できる可能性があるのです。

債権者の感情的にも、「延滞が続いて1円も回収できないくらいなら、取り消しの申し立てを行おう。その後に自己破産されても良い」と考えるのは自然ではないでしょうか。

再生計画の取り消しを申し立てられる債権者

ただし再生計画の取り消しを申し立てられる債権者は限定されます。

全ての債権者が当然に申し立てられるわけではなく、「総債権額の10分の1以上を占める債権者」と法律で定められていますね。

たとえば、個人再生後の総額100万円、今までに返済した金額が40万円なら、現在残っている債務は60万円です。

この場合、60万円の10分の1である「6万円以上の債権者のみ」が、裁判所に取り消しの申し立てを行えます。

なお、6万円未満の債権者も、強制執行で回収を図ることは可能です。

ただし企業の民事再生と異なり、まずは簡易訴訟や支払督促の手続きが必要になるでしょう。

個人再生後に延滞した場合の対策

個人再生後に支払いが遅れて延滞した場合は、まず担当の弁護士に連絡して下さい。

その後は弁護士の指示で動くことになりますが、単なる支払い忘れの場合は、前述したように債権者が受け入れてくれるケースが多いです。

支払いが2回、3回と遅れない限り、早期に支払うことで、再生計画後の返済を続けられる可能性があります。

最長2年間の延長が認められるケース

どうしても支払いが厳しい場合は、最長2年間の延長が認められることがあります。

返済期間が3年の場合は5年、5年の場合は7年まで延長できます。

ただし「やむを得ない理由」と「返済が著しく困難な場合」に認められている制度ですね。

やむを得ない理由とは「再生計画の作成段階で予想できず、債務者が自分でコントロールできない事情」を言います。

具体的には以下のようなケースです。

  • 急なリストラで解雇され無職となり、収入が途絶えてしまった
  • 勤務先の企業が急に倒産して仕事を失ってしまった
  • 急な病気や怪我で長期間、働けない状態になった
  • 家族の病気で治療費がかさみ、返済に回すお金を準備できなくなった

それに対して、パチンコ、スロット、カジノのようなギャンブルが原因だったり、ネットショッピングで浪費して返済できなかったりする場合は「やむを得ない事情」に該当しないので延長できません。

再生計画を延長する際の注意点

個人再生後に延長する際の注意点として以下があります。

  • 元々の返済額は減らせない
  • 延長期間は最長で2年以内
  • 住宅ローンは延長されない(住宅ローン特則を利用している場合)
  • 3ヶ月に1回以上の返済が必要
  • 債権者平等の原則に違反できない

個人再生は大幅に借金を減らせる手続きなので、それ以上の減額は出来ません。

延長期間は最長2年、住宅ローンの延長も認められていません。

「3ヶ月に1回以上の返済が必要」「債権者平等の原則に違反しない」という部分は、初回の個人再生手続きと共通する部分です。

他にも、再生計画の変更から認可されるまでに3ヶ月以上かかりますので、その間、最低1回は元々の金額を弁済する必要があります。

「直近数ヶ月分の家計収支表」「給与明細表(収入が下がったケース)」を裁判所に提出することにも注意して下さい。「返済が著しく困難なこと」を証明するための書類ですね。

ハードシップ免責という選択肢

個人再生後の延長でも厳しい場合は、ハードシップ免責という方法があります。

ハードシップ免責が認められれば、残りの借金が全て免除されます。

適用条件は以下です。

  • 返済の4分の3がすでに終了している
  • 本人の責任ではない理由で返済が困難である
  • 再生計画を延長しても返済できない

総額の4分の3の返済が終わっていて、返済困難の理由が本人の責任ではなく、期間を延長しても返済できない場合に認められる制度です。

「本人の責任ではない理由」には、期間延長と同じく、リストラや病気、自然災害などがあります。

それに対してギャンブル、ショッピング、飲み代、遊興費、浪費は本人の責任なので、ハードシップ免責の条件に該当しません。

ハードシップ免責が認められれば、住宅ローンを含む残りの借金が免除されます。

ただし住宅ローンの債権者は抵当権を行使しますから、住宅が競売にかけられ、売却される可能性は高いでしょう。

実務上、ハードシップ免責は適用条件が厳しいため、あまり利用されていないようです。

東京地方裁判所のような大きな裁判所で年に数件あるかないか、といったところですね。

自己破産という選択肢

個人再生の期間延長やハードシップ免責に該当しなければ、最終的に自己破産を考えることになるでしょう。

自己破産すれば、一定の価値ある財産は全て没収されますが、ゼロからスタートを切りやすくなります。

ただし、「自己破産の職業制限に該当するから個人再生を選んだ」「住宅を残したいから個人再生にした」という方もいると思います。

「それなら最初から自己破産にすれば良かった…」と後悔するかもしれません。

しかし破産以外に方法がなければ考える必要がありますし、逆にどうしても破産できない理由があれば、もう一度個人再生を継続できないか考慮する必要があるでしょう。

その辺りは専門的な判断になりますので、経験豊富な法律事務所に相談して下さい。

任意整理、個人再生、自己破産、過払い金返還請求のような債務整理に長けている弁護士なら、適切なアドバイスを行ってくれるはずです。

まとめ

このページでは、個人再生の前後に分けて、延滞について説明しました。

個人再生前の税金の延滞は、個人再生しても減額されませんが、住宅ローンは延長が認められることがあります。

車のローンは所有権が留保されているので、引き上げられることになるでしょう。

個人再生後の返済期間の延長も、条件に該当すれば認められます。延長でも厳しい場合はハードシップ免責や自己破産を考えることになりますね。

まずは個人再生を依頼した弁護士への相談から始めて下さい。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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