債務整理

慰謝料が払えない場合は債務整理できる?借金で慰謝料を支払った場合は?

離婚や交通事故、その他さまざまな事情で人に迷惑をかけると慰謝料の支払い義務を負うことがあります。慰謝料の金額は数百万円に及ぶケースもあり、支払いが大変な場合も多いものです。

なかには借金をして慰謝料を支払った結果、借金を返済しきれなくなった方も少なくないでしょう。

また、離婚すると慰謝料とは別に子供の養育費の支払いが必要な場合もあります。ここでは、慰謝料や養育費、あるいはそれらの支払いのために負った借金を債務整理できるのかをご説明します。

目次

慰謝料は債務整理で解決できる場合も多い

慰謝料の支払い義務については多くの場合、債務整理または相手との話し合いによって解決することが可能です。

ただし、慰謝料の原因が以下のような場合は債務整理で解決することはできません。

  • 悪意で加えた不法行為
  • 故意または重過失による加えた人の生命身体を害する不法行為

交通事故による慰謝料についてはほとんどの場合、離婚による慰謝料の場合も多くの場合は上の2つのケースには該当しません。

そこでまずは、上の2つのケースに該当しない慰謝料の支払い義務を債務整理で解決するための具体的な方法をみていきましょう。

任意整理

任意整理とは、お金を支払わなければならない相手との話し合いによって支払い額や支払い方法を当初の約束から変更し、合意した内容にしたがって支払っていく手続きです。

慰謝料の支払いについても、相手との話し合いによって解決できる場合があります。ただし、慰謝料の支払いに関する交渉は通常は「任意整理」という言葉は使わず、「示談交渉」と呼びます。

支払いが苦しいからといって慰謝料の減額に応じてもらえることはあまりありませんが、分割払いの交渉には応じてもらえることが多くあります。

また、ある程度の金額を一括で支払える場合は、支払い額を減額する交渉がまとまることもあります。

例えば、総額300万円の慰謝料を毎月数万円ずつに分割して長期間支払っていくよりは、100万円を一括ですぐに支払えるのであれば支払額100万円で示談できる場合もあるのです。

このような交渉は冷静に行うことが重要で、お互いのメリットに十分に配慮した和解案を検討する必要があります。円滑に交渉するためには、弁護士など経験豊富な専門家に相談することをおすすめします。

自己破産・個人再生

慰謝料の支払い義務の問題を話し合いで解決できない場合は、自己破産や個人再生を申し立てることによって相手の意向とは無関係に解決できます。

自己破産であれば原則としてすべての債務が免責され、支払い義務が消滅します。個人再生の場合は支払い額が原則として5分の1に減額され、その金額を3年間~5年間で分割払いすることになります。

例えば、500万円の慰謝料の支払い義務を負っていても個人再生を申し立てて5年払いの再生計画案が認可されれば、100万円を毎月1万6,667円ずつに分割して支払えばいいことになります。

なお、自己破産や個人再生でカットされた慰謝料の支払い義務は「自然債務」となり、債務者が任意に支払う限りにおいて債権者は受け取ることができるようになります。

自己破産や個人再生の手続き後も元の約束どおりの慰謝料の支払いを請求してくる相手に対しては、支払える範囲内で支払っていくこともできます。とはいえ、支払うかどうかはあくまでも債務者の自由であり、債権者からの請求権は消滅しています。

債務整理で解決できない慰謝料とは

先ほどご説明したとおり、慰謝料の原因が次の2つのケースのいずれかに該当する場合は、債務整理で解決することはできません。

  • 悪意で加えた不法行為
  • 故意または重過失による加えた人の生命身体を害する不法行為

このような原因で負った慰謝料は自己破産や個人再生の手続きによっても免除・減額されないことになっています(破産法第252条、民事再生法第229条)。そのため、たとえ自己破産や個人再生をしても、これらの慰謝料は通常どおりに支払わなければなりません。

ただし、これらのケースに該当するかどうかはかなり限定的に解釈されます。そのため、債務整理で解決できない慰謝料というのはそう多くはありません。

具体的には、これらのケースに該当するのは以下のような場合です。

  • 暴力によるDVが原因で離婚した場合
  • 故意に車を衝突させた交通事故
  • 暴行罪や傷害罪などの犯罪行為

とはいえ、以上のケースに該当するからといって必ずしも免除・減額が認められないわけではありません。

例えば、夫婦間で暴力があったとしても回数が少なく、主として性格の不一致が原因で離婚に至ったと認められるような場合は免除・減額が認められるでしょう。

また、浮気や不倫が原因で離婚した場合の慰謝料については、免除・減額が認められないことはめったにありません。

浮気や不倫が「悪意で加えた不法行為」に該当する場合というのは、配偶者に精神的損害を与えることを主な目的として不貞行為に及んだ場合などごく限られたケースになります。

免除・減額が認められない慰謝料の支払い義務を解決する方法

免除・減額が認められない慰謝料は、自己破産や個人再生をしても全額の支払い義務から免れることができません。しかし、解決する方法はあります。

まず、相手と誠実に話し合うことが考えられます。慰謝料の金額や支払い方法は、お互いが合意すれば自由に決めて構いません。先ほどご説明したように、分割払いやある程度の金額をすぐに支払うことによって減額して示談できる可能性もあります。

話し合いがまとまらない場合は、最終的には相手から裁判を起こされ、財産を差押えられることになってしまいます。しかし、裁判を起こされてもまだ諦める必要はありません。

裁判で反論できる事情が何もない場合でも、裁判上で和解できる場合も多いのです。慰謝料については交通事故の場合は別として、通常は明確な算定基準があるわけではないので、和解によって減額できることも少なくありません。

誠意をもって和解を申し出れば、裁判官も相手に対して和解を勧めてくれる傾向にあります。相手としても、判決を得て強制執行の手間をかけるよりは早期に確実に支払ってもらうために和解に応じてくれる場合が多いです。

ただ、裁判を起こされた場合は対応を間違えると相手の主張するとおりの内容で債務が確定し、財産を差押えられるおそれが常にあります。そのため、弁護士などの専門家に依頼して対応することが望ましいといえます。

子供の養育費は債務整理の対象にならないが、解決法はある

慰謝料と異なり、子供の養育費の支払い義務は一切債務整理の対象とはなりません。自己破産や個人再生をしても、免除・減額されることはありません(破産法第252条、民事再生法第229条)。

特に、既に滞納している場合は要注意です。相手が法的手続きをとると、財産を差押えられてしまいます。

個人再生を申し立てた場合は、滞納した養育費の一部について一時期的に支払いが猶予されますが、決して支払いが楽になるわけではありません。

例えば、毎月3万円の養育費を支払う合意をしている場合で、1年分の36万円を滞納している状態で個人再生をすると、その後の養育費の支払いは次のようになります。

再生計画によって返済期間が3年と定められた場合、その3年間は滞納分の5分の1と新たに発生する毎月の分を併せて支払います。滞納分の支払いは毎月2,000円ですみますが、新たに発生する3万円と併せて毎月3万2,000円を支払わなければなりません。

他にも金融機関からの借金などの再生債権もある場合は、毎月の負担が大きくなってしまいます。しかも、3年間の返済が終了した後は猶予されていた滞納金の28万8,000円を一括で支払わなければなりません。

つまり、個人再生をしても養育費の支払い義務から免れることは一切できないのです。

養育費が支払えないときの解決方法

養育費が支払えなくなったときは、債務整理とは別の方法によって解決することが可能です。

具体手な方法としては、当事者間で話し合う方法と家庭裁判所の調停を利用する方法とがあります。

話し合いによる解決方法

養育費の支払い義務は民法に定められた「親族の扶養義務」を根拠とするものですが、実際の支払い額は法律で自動的に定められるものではありません。当事者間の話し合いによって自由に決めることができます。

そこで、養育費が支払えなくなったときは、支払えないまま放置するのではなく相手と話し合いをしましょう。

公正証書や離婚調停、離婚訴訟などで取り決めた養育費を既に滞納している場合は、いつ財産を差押えられてもおかしくない状態にあります。特に誠意をもって話し合いを申し出ることが必要です。

家庭裁判所の調停を利用する解決方法

離婚した事情によっては、相手が話し合いに応じてくれないこともよくあります。そんなときは、家庭裁判所に「養育費減額調停」を申し立てるのが有効です。

調停も話し合いの手続きではありますが、裁判所での話し合いであることと調停委員という中立公正な第三者を介した話し合いであることから、話し合いがまとまりやすくなります。

家庭裁判所では、子供の父親・母親それぞれの年収に応じて養育費の金額の目安を定めた簡易算定表を参考にして養育費が定められます。

ポイントは、養育費といえども自分の生活を犠牲にしてまで支払う必要はないということです。民法に定められている「親族の扶養義務」とは、自分と同程度のレベルの生活を親族にも保障する義務のことです。

したがって、借金の返済のために生活が苦しい場合は、養育費も減額されます。ただし、借金の原因がギャンブルや浪費などであれば、その返済の負担は考慮されない場合もあるので注意が必要です。

なお、家庭裁判所では上記の簡易算定表に記載されている金額にとらわれ、個別の事情をあまり考慮してもらえないケースも少なくないようです。

ご自分の事情に応じて適切な金額で養育費を定めるためには、弁護士などの専門家に依頼して調停を申し立てるほうがいいでしょう。

慰謝料や養育費の支払いのために借金をした場合は債務整理で解決できる

慰謝料や養育費そのものを免除・減額、分割払いの交渉をすることによって解決する方法を解説してきました。

それに対して、慰謝料や養育費を支払うために、金融機関から借金をした場合の負債は、ほとんどの場合で債務整理をすることで解決できます。

以下、任意整理・個人再生・自己破産のそれぞれの場合についてご説明します。

任意整理

金融機関からの借金を任意整理する場合はほとんどの場合、借金の使い途には関係なく交渉によって解決することができます。

可能性としては、故意で犯した犯罪の慰謝料を支払うために借金をしたような場合に任意整理の交渉に応じてもらえないこともあり得ます。しかし、実際にはほとんどの金融機関が借金の使い途を問うことなく、任意整理の交渉に応じてくれます。

個人再生

個人再生の場合は、借金の使い途が問われるケースもあります。個人再生には給与所得者向けの手続きと小規模事業者向けの手続きに別れています。

給与所得者向けの個人再生では借金の使い途は問われませんが、小規模事業者向けの個人再生では借金の使い途が問われるのです。

具体的には、借金の使い途などに不服がある債権者は、再生計画案に異議を出すことができます。異議を出した債権者が再生債権者全体の頭数の半数以上で、かつ、再生債権額の過半数になると再生計画案は認可されません。

逆にいえば、異議を出した債権者がこの範囲内であれば再生計画案は認可されます。したがって、他にも生活費や債務返済のために借り入れた債権者がいる場合は、一部の債権者から異議が出ても再生計画案は問題なく認可されることになります。

もっとも、実際には個人再生の手続きでも借金の使い途を理由に金融機関が異議を出すことはめったにありません。

自己破産

自己破産の場合は、少し注意が必要です。自己破産では債務の免責を許可するかどうかは裁判所が判断します。借金の使い途に問題があれば免責不許可となります。

そのため、悪意で加えた不法行為や故意または重過失による加えた人の生命身体を害する不法行為による慰謝料、あるいは養育費を支払うために借金をした場合は免責不許可となる可能性があります。

ただし、これらの慰謝料や養育費を支払った結果、生活費に困窮して生活費や他の借金の返済のために借金をしたと説明できる場合は、免責される可能性が高いです。

慰謝料や養育費の支払いが苦しいときは専門家に相談を

慰謝料や養育費を支払うために負った借金を債務整理することは、慰謝料や養育費そのものの免除や減額を求めるよりも簡単です。

しかし、決して借金をすることは勧められません。そもそも、養育費などは借金してまで支払うべき性質のものでもありません。

慰謝料や養育費の支払いが苦しいときは、できる限り借金をする前に専門家に相談して解決を図りたいところです。もちろん、既に借金をしてしまっている場合でも負債が大きく膨らむ前に専門家に相談したほうが解決しやすくなります。

困ったときは、早めに専門家に相談してみましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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