債務整理

苗字を変更する前にできた借金も債務整理できる?しないとけない?

債務整理をしようと思っても、結婚などによって苗字を変更したことを貸金業者に届け出ていないことが何かの問題になるのではないかと不安に思う方も多いでしょう。あるいは、苗字を変更したことで借金から逃れることができるのではないかと期待する方もいるかもしれません。しかし、借金を放置するのは絶対にやめましょう。ここでは苗字の変更によって借金がどうなるのか、放置してはいけない理由や債務整理をするときの注意点を解説していきます。

目次

苗字の変更を届け出ていない借金でも債務整理はできる

女性によくあるケースですが、借金がある状態で結婚して苗字を変更したものの、そのことを貸金業者に届け出ていない場合があります。男性でも養子縁組や何らかの事情で苗字を変更した場合、同じ状況になることがあります。

苗字を変更したことで貸金業者に同一人物として扱ってもらえず、そのために債務整理ができず、借金をそのまま払っていくしかないのではないかと不安に思う方も多いです。

苗字の変更を届け出なかったことが何らかの違反となって違約金を徴収されるのではないか、最悪の場合、罪に問われるのではないかと不安になっている方もいるのではないでしょうか。

しかし、苗字を変更する前にできた借金でも、債務整理はできます。

貸金業者に苗字の変更を届け出ていなくても問題はない

本来は、借金を返し終わる前に氏名や住所を変更した場合は、そのことを貸金業者に届け出て登録を変更する必要があります。このことは、どこの貸金業者の契約書にも記載されているはずです。

ただ、届出をしなかったことで違約金を徴収するなどのペナルティが定められていることはまずありません。届出をしないことが何らかの犯罪にあたることもありません。

したがって、苗字の変更を届け出ていない借金でも、問題なく債務整理をすることができます。

それでも、まずは貸金業者に届け出て、苗字の登録を変更してから債務整理をしたほうがいいのではないかと不安になる方もいますが、その必要はありません。

もちろん、あらかじめ届け出ても構いませんが、債務整理の手続きと同時に苗字の変更を申し出ることで何の問題もありません。それによって苗字の登録が変更されます。面倒な手続きも必要ありません。

債務整理を始める段階で苗字の変更が登録されるため、それ以降の手続きは現在の氏名で行うことになります。任意整理の場合は、和解後の支払いは現在の氏名で振り込んでいく形になります。

まずは任意整理がおすすめ

ひと口に債務整理といっても、任意整理の他に自己破産や個人再生といった方法もあります。結婚前にできた借金を結婚後に整理する場合は、借入残高や借入先、生活状況などにもよりますが、まずは任意整理を検討しみるのがおすすめです。

自己破産や個人再生は裁判所への申し立てが必要なので手続きが複雑で、任意整理は貸金業者と話し合うだけなので、簡単な手続きで完了します。

また、自己破産や個人再生をすると官報で氏名と住所が公表されますが、任意整理では情報が他に漏れることはないので配偶者に内緒のまま手続きしやすいというメリットもあります。

任意整理とのデメリットとしては、それなりの金額の返済が残るという点がありますが、利息引き直し計算をすることで残高を減額できることがありますし、過払い金を取り戻せる場合もあります。

ただし、到底返済できないほどに残高が膨らんでいる場合や、住宅ローンを組んでいたりする場合は自己破産や個人再生を検討せざるを得ない場合もあります。

どの方法が自分に適しているのかがわからず、不安なときは弁護士や司法書士などの専門家に相談してみるのがおすすめです。

請求が来なくなっても放置してはいけない

結婚して苗字を変更し、住民票も移動すると、貸金業者からの借金の請求が来なくなる場合もあります。そのために油断してしまい、しばらくの間、債務整理をせずに放置してしまう方もいます。

特に、既に延滞している方は督促が来なくなることでホッとして、このまま借金から逃れられるのではないかと期待してしまうかもしれません。

気持ちはわかりますが、この後にご説明するように、請求が来なくなっても借金がなくなるわけではありません。

放置している間にも利息や遅延損害金が加算されていきます。請求が来なくなった借金を放置することは問題を先送りするだけであり、放置すればするほど解決が困難になってしまいます。

苗字を変更して請求が来なくなっても借金を放置してはいけません。早めに債務整理を検討しましょう。

苗字を変更しても借金の返済義務からは逃れられない

苗字を変更した後に借金の請求が来なくなるということは、その時点では貸金業者に居場所が知られていないということです。それなら、そのまま放っておけば借金を払わずにすむのではないかと期待する方もいますが、そうはいきません。

なぜなら、借金をした事実や延滞した事実は信用情報に登録され、その情報は苗字を変更した後も残るからです。

借金の情報が残る信用情報とは

信用情報とは、借入やローン、クレジットカードなどの契約内容や利用状況のデータが個人ごとに登録されている情報のことです。

信用情報を保管している機関にはシーアイシー(CIC)、日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センターの3つがあります。貸金業者や銀行、クレジットカード会社などは顧客や申込者と取引する際にこれらの機関で信用情報を調査します。

契約中の顧客が延滞を続けると、事故情報として信用情報を登録します。この状態がいわゆる「ブラックリストに載せられた」という状態で、その後一定期間は借入やローン、クレジットカードの利用ができなくなります。

これらの信用情報は、苗字が変更されたからといって消えることはありません。

以前は苗字の変更によって借金から免れたことも

信用情報が、どのようなものなのかはおわかりいただけたと思います。しかし問題は、苗字を変更しても、それまでの信用情報から解放されることはないということです。

「苗字を変更したことによって、貸金業者は過去の信用情報をたどって、請求できなくなるのではないか。」
「ブラックリストに載っていても、苗字の変更後は新しい氏名で、一から借入やローンを利用できるのではないか。」

このように期待する方も多いですが、それはできません。

実は、以前には苗字を変更することで金融機関がその顧客を追跡することが難しくなり、事実上借金から免れることができたケースもありました。

しかし、今は事情が変わっています。

現在では各金融機関による追跡が強化されている

苗字の変更による借金逃れや、嘘の個人情報や他人の個人情報を使って借入をする犯罪が発生するようになったことなどから、各金融機関は対策を強化しました。

借入の申込みの際には本人確認を厳重に行い、運転免許証やパスポート、健康保険証などのコピーを保管しているため、苗字や住所を変更しても本人の特定は容易に可能です。

また、信用情報には個人の居住情報や勤務先の情報も登録されます。さらに、その情報は信用情報機関に加盟しているすべての金融機関で共有されています。

その他、情報網が発達したことによって金融機関が債務者を追跡することは可能です。

結婚して引っ越した後も住民票を移さず、新たな個人情報をどこにも出さなければ借金から逃れることも不可能ではありません。

しかし、住民票を移さなければ健康保険や年金をはじめとする行政サービスを受けることができません。個人情報を使わなければ、携帯電話やスマホの契約もできません。借金から逃げて生活することは、実際には不可能と言えるでしょう。

変更後の苗字で新たに借金をしてはいけない

苗字を変更する前の借金から逃れられないとしても、変更後は新たに借金できるのではないかと期待する方もいるかもしれません。

結婚後はそれまでのブラック情報が消え、新たに借金できるようになるという話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

しかし、これもしてはいけないことです。

そもそも変更後の苗字で借金することはできない

苗字の変更前にブラックリストに載っている場合、先ほどご説明したとおり、その信用情報は苗字を変更した後も消えません。

各金融機関が、本人確認を厳重に行い新しい苗字で借入の申込みをしたとしても、すぐに本人が特定されてしまいます。そのため、ブラックリストに載っている以上は、変更後の苗字で新たに借金することはそもそもできません。

嘘の個人情報で借金を申し込むと罪に問われることも

貸金業者に苗字の変更が知られているからといって、別人を装って借金を申し込むことは犯罪にあたるので、絶対にしてはいけません。

借金などの申込書には旧姓を記入する欄がありますが、旧姓がある場合は正確に記入しなければ、厳密にいえばそれだけでも罪に問われる可能性があります。

氏名や住所、勤務先などをはじめとする個人情報について嘘の内容を申込書に記入すると、私文書偽造罪・偽造私文書行使罪が成立します。

さらに、本来は借りられない状態であることを知りつつ、嘘の個人情報で申し込むことによって借金をすると詐欺罪に問われることがあるので注意が必要です。

仮に変更後の苗字で借りられたとしてもデメリットは大きい

以上のように犯罪を科したわけではなくても、貸金業者の手違いなどによって、ブラックリストに載っている人でも苗字の変更後に借金できるケースもなくはありません。

特に、コンピューターシステムによって、個人情報を厳重にチェックしている大手とは異なります。手作業に近い方法で決済を行う中小規模の貸金業者では、手違いが発生することもあります。

しかし、仮に変更後の苗字で借金できたり、クレジットカードを作れたりしても安心することはできません。

貸金業者やクレジットカード会社は、「途上与信」といわれる契約の途中でも利用者の個人情報や信用情報を適宜チェックしています。

その際に苗字を変更していたことが判明し、ブラックリストに載っていることがわかった場合は、突然クレジットカードの利用を停止されたり今後の借入を断られたりすることがあります。

クレジットカードの利用や借金によって、生活上の支払いの計画を立てていたような場合は、たちまち生活に困ることになってしまいます。

悪質と判断された場合には、ブラックリストに載っていることが判明した時点で利用残高の一括返済を要求される場合もあります。

貸金業者の手違いで借金できたとしても、安心して利用し続けられるわけではないので、苗字の変更後に新たに借金を申し込むことはやめておきましょう。

変更前の苗字のまま借金の債務整理をすることはおすすめではない

苗字を変更する前にできた借金を素直に債務整理するとしても、変更後の苗字を貸金業者に知らせずに、旧姓のままで債務整理をしたいと考える方もいることでしょう。

しかし、結論からいって、これもおすすめすることはできません。

変更前の苗字のままでも債務整理はできる

実は、変更後の苗字を貸金業者に知らせず、旧姓のままでも任意整理はできます。旧姓で作った借金について旧姓のまま支払い方法を話し合い、和解した内容のとおりに返済していけるのであれば、実際上は何の問題もありません。

ただし、自己破産や個人再生をする場合は、裁判所に申し立てる際に住民票を提出する必要があるため、必然的に貸金業者に対しても苗字の登録を変更することになります。

厳密には違反行為となる

変更前の苗字で任意整理をしても実際上の問題はないとご説明しましたが、厳密にいえば問題がないわけではありません。

苗字を変更したことを自分から届け出なくても、別のルートから貸金業者に判明する場合もあります。そのときに、あえて変更後の苗字を隠して旧姓のまま任意整理をしていると、何か目的があるのではないかと貸金業者から勘ぐられる可能性もあります。

その結果、貸し金業者に対する印象が悪くなってしまい、任意整理の和解交渉にも十分に応じてもらえなくなるおそれもないとはいえません。

最悪の場合は詐欺罪等で訴えられることも

貸し金業者が何を勘ぐるのかというと、変更後の苗字で新たに借金を申し込もうとしているのではないかということです。

あえて旧姓で任意整理をしている以上、変更後の苗字を隠そうとしている意図は明確に認められます。

その後に、別の貸し金業者からでも実際に新たに借金をすると、詐欺罪と認定されてしまう可能性が高くなってしまいます。

変更後の苗字で新たに借金する目的がないのなら、旧姓のまま任意整理をすることにメリットは特にありません。任意整理をするなら、正直に変更後の苗字を届け出ることをおすすめします。

結局は正直に苗字の変更を届け出て債務整理するのが最善策

苗字を変更しても、借金から逃れることはできないことや新たに借金をすることはできないこと、旧姓のまま任意整理をすることはおすすめできないことなどを解説してきました。正直に、苗字の変更を届け出て債務整理するのが最善策といえます。

それでも不安な方のために、さらにその理由をご説明します。

苗字の変更を届け出ても配偶者に内緒で債務整理はできる

中には、苗字を変更する前の借金を債務整理することや変更後の苗字を届け出ることに抵抗がある方が、債務整理することを配偶者に内緒にしておきたいと考えている方もいることでしょう。

しかし、苗字の変更を貸し金業者に届け出ても届け出なくても、債務整理が配偶者にばれるリスクは同じです。

任意整理の場合は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼すれば、その専門家が貸し金業者との交渉や連絡の窓口となってくれます。そのため、配偶者にばれる可能性はほとんどなくなります。

自己破産や個人再生をする場合でも、専門家に依頼すれば専門家が手続き上の窓口となってくれるので、配偶者に内緒で債務整理できる可能性が高まります。

事故情報は5年で消滅する

ブラックリストに載ると新たな借金やクレジットカードの利用ができなくなりますが、このデメリットも、苗字の変更を届け出るかどうかで変わりはありません。

任意整理の場合は、完済から5年で事故情報が消滅し、ブラックから復活します。自己破産と個人再生の場合も10年かかりますが、一生ブラックのままというわけではありません。

苗字を変更したからといって余計なことで悩まず、早めに債務整理をして早期にブラックからの復活を目指したほうがいいでしょう。

生活の経済面を改善することが最優先

結婚前に借金を作った場合はもちろん、ブラックリストに載ってしまっているのであればなおさら、結婚後は生活の経済面を改善することを最優先すべきです。

借金が配偶者にばれる原因は、債務整理の手続きをすることよりも問題を先送りにしたために借金が膨らんでしまい、生活するお金が足りなくなってしまうことが一番です。

新たな借入や利息・遅延損害金などで借金が膨らんでしまう前に、債務整理をして経済的な生活を立て直しましょう。

苗字変更前の借金の債務整理は専門家に相談しよう

苗字を変更したことは、債務整理をするためには何の支障にもなりません。

ただ、どのような方法で債務整理をすべきかどうかは、事例によって異なります。

任意整理するにしても、利息の引き直し計算をした上で支払い方法の交渉をし、過払い金が発生している場合にはその返還を請求する必要があります。

これらの手続きは、専門的な知識がなければ難しい場合がほとんどです。万が一自分で対応した場合は、満足な結果が得られないこともあります。

苗字の変更が気になる場合でも、経験豊富な専門家に依頼することで、複雑な手続きをすることなく借金の問題を解決することができます。一人で悩まず、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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