債務整理

強制執行・給料差し押さえって?

ローンや養育費といった払うべきお金を払わなかった場合、強制的に財産を押さえられて回収されることがあります。強制的に財産を押さえて回収する方法が「差し押さえ(強制執行)」です。

強制執行差し押さえは、裁判所や公権力が関与するため、逃れることは非常に難しくなっています。踏み倒しや滞納への最終手段かつ強力な対処法です。

強制執行給料差し押さえは、どのような手続きプロセスで行われるのでしょう。対処法はあるのでしょうか。会社バレするか等の気になるポイントについても解説します。

目次

強制執行給料差し押さえとは

強制執行給料差し押さえとは、「給料という債権を手続きによって押さえて、強制的に未払いや滞納分を回収する方法」です。

強制執行差し押さえの対象になる財産には、不動産や動産(絵画や楽器などの物)、船舶や債権など様々です。その中でも、会社と社員との間に発生する給料債権に対して、強制的に差し押さえの対象にするのが強制執行給料差し押さえです。

会社と会社員の間には、「仕事をする」「給料を払う」という約束があります。契約が根底にあるため、会社員は毎月会社から給料を受け取ることが可能です。債務者が会社に勤めていれば、ほぼ確定的に給料が発生するため、給料は債権者にとって債権回収に使いやすい財産になります。強制執行給料差し押さえさえしてしまえば、安定的に回収できる可能性が高いわけですから。

強制執行給料差し押さえは、強制執行差し押さえの中でもよく使われる方法になります。

強制執行給料差し押さえ手続きプロセス

強制執行給料差し押さえは、どのような手続きと流れで行われるのでしょうか。強制執行給料差し押さえの基礎知識として、手続きの流れを見て行きましょう。

プロセス①強制執行給料差し押さえの申立て

強制執行給料差し押さえをするためには、まず裁判所に強制執行給料差し押さえの申立てを行わなければいけません。滞納分や未払い分があれば、自由に強制執行給料差し押さえができるわけではなく、裁判所を通してはじめて強制執行給料差し押さえが可能になっているのです。

強制執行給料差し押さえの手続きの際は、強制執行給料差し押さえの条件がそろっているか確認するために、必要書類などを裁判所に提出する必要があります。

  • 債務名義(判決や公正証書など)
  • 強制執行給料差し押さえの申立書
  • 目録など

手数料や切手代を納める必要があることに注意が必要です。交通費などの費用が発生する可能性も見ておくことも必要です。弁護士や司法書士などに相談や依頼をすると、弁護士費用なども必要になります。この点にも注意が必要です。

プロセス②強制執行給料差し押さえが会社に通知

強制執行給料差し押さえの手続きが行われると、会社に通知されます。強制執行給料差し押さえでは第三債務者(登場人物のひとり)として、債務者の勤める会社が登場するルールです。会社側に「債務者(従業員)の給料を差し押さえます」と通知して、手続きに協力してもらうためです。

会社側が強制執行給料差し押さえの通知を受け取って、手続きに協力する。債権者は会社の協力を得て、給料からお金の回収を進めることになります。

強制執行給料差し押さえの対象になるのは、税金や保険料などを差し引いた手取りの4分の1です。残りの4分の3は債務者の生活のため、通常通り支払われます。

プロセス③完済まで強制執行給料差し押さえは続く

強制執行給料差し押さえは、途中で債務整理などの対処をしない限り続きます。

強制執行給料差し押さえで給料から回収できるのは、債権額と申立て費用の合計額までです。弁済や債務整理などで対処しない限り、完済まで強制執行給料差し押さえが続き、社内での立場や手取り額がマイナスになると考えて差し支えありません。

強制執行給料差し押さえは会社や家族に知られるか

強制執行給料差し押さえがあるということは、返済の滞納や踏み倒し、無視などがあったということ。金銭トラブルを会社や家族に知られたくないという人は、決して少なくないはずです。強制執行給料差し押さえは会社や家族に知られてしまうのでしょうか。

強制執行給料差し押さえは会社に知られる

結論をはっきり言ってしまうと、会社にはバレます。

強制執行給料差し押さえは会社に通知が届きます。会社が給料を債務者に支払う前の段階で押さえるためです。会社に通知されるのですから、会社には知られてしまいます。強制執行給料差し押さえされる、つまり、会社に金銭トラブルが知られてしまいます。

強制執行給料差し押さえを理由に、会社が社員を解雇することは基本的にありません。ただ、強制執行給料差し押さえを知られた債務者が、会社に居づらくなり仕事を辞めたり、転職したりするのはよくあることです。会社は社員の集合体ですから、強制執行給料差し押さえを受けたことが周囲に知られ、信用が落ちることもあるでしょう。

強制執行給料差し押さえは会社に知られる。
強制執行給料差し押さえによって、信用が落ちるなどのマイナスの影響を受ける可能性が高いです。

以上が結論になります。

強制執行給料差し押さえが家族バレする理由

家族については、バレません。家族に通知されるというルールはないからです。ただし、あくまで基本的にバレないという話。小さな切欠から、家族に強制執行給料差し押さえが知られる可能性は大いにあります。

なぜ家族に通知されないはずの強制執行給料差し押さえが、家族に知られてしまうのでしょう。家族バレには、3つの理由があります。

強制執行給料差し押さえが家族に知られる理由①郵便物や電話

強制執行給料差し押さえが知られる理由のひとつ目は、債務者本人への郵便物や電話です。

強制執行給料差し押さえが行われる前段階に、督促などが行われるのが基本になります。債権者側は、強制執行よりも督促で未払い分を回収したいと思っています。

督促が手紙や電話などで行われた場合、家族が受け取る可能性があるはずです。消費者金融や銀行の場合、わざわざ家族に借金のことを知らすことはしません。しかし、勘の良い家族はこの段階で「借金問題だ」と気づくはずです。

手紙や電話などの連絡が重なるうちに、本人に差し迫った様子が見られるようになる。ここまで来ると、家族もかなり嫌な予感がすることでしょう。強制執行給料差し押さえの話をしなくても、家族は借金問題や強制執行給料差し押さえに気づいてしまうことが多いと言えます。

強制執行給料差し押さえが家族に知られる理由②収入や手取り

強制執行給料差し押さえを受けると給料が減ります。給料から強制的に未払いや滞納分を回収されているわけですから、減るのは当然です。

手取りが減ると、家族に渡す金額も減るのが当然。手取りが減る結果、生活費が減る。生活費が減ると、家族が気づく。この流れで強制執行給料差し押さえが家族にバレることがあります。

強制執行給料差し押さえが家族に知られる理由③相談を見られる

債務の未払いや滞納の段階では「大丈夫だろう」「無視でいい」と思っていても、いざ強制執行給料差し押さえになると慌てる債務者が多いという現実があります。強制執行給料差し押さえなどの強制執行差し押さえには手続きに裁判所が介入するため、怖くなってしまうのです。

強制執行給料差し押さえの段になって大急ぎで弁護士や司法書士に相談した結果、相談するところを見られることがあります。相談や強制執行給料差し押さえへの対処のための連絡を聞かれてしまうことも。

強制執行給料差し押さえされる段になってから相談する場合は、相談者も取り繕っていられるほど余裕がありません。そのため、相談を見られたり聞かれたりしてしまう可能性があります。うっかりで家族に知られるという流れです。

強制執行給料差し押さえへの対処法

「強制執行給料差し押さえされそうだ。」「強制執行給料差し押さえされてしまった。」
借金問題や未払い問題が深刻化した場合、どのように対処すればいいのでしょうか。対処法は5つあります。

強制執行給料差し押さえへの対処①弁済する

強制執行給料差し押さえへの対処として、最も簡単でシンプルな方法です。支払いしなければならないお金をしっかり支払う。この方法で、強制執行給料差し押さえに対処可能です。

大元になっている借金や未払金を消してしまえば、債権者は強制執行給料差し押さえをする意味を失います。債権者側は払ってもらえないから強制執行給料差し押さえをするわけです。払ってもらえるなら、面倒な手続きをしてまで強制執行給料差し押さえなどしたくないはずです。借金や未払金が支払い可能な額なら、債権者へ弁済することで対処できます。

弁済により解決できない場合は他の対処法を検討しましょう。

強制執行給料差し押さえへの対処②債権者と交渉する

強制執行給料差し押さえを検討している債権者や、申立てを行った債権者に交渉して止めてもらう方法です。

交渉に際しては、債権者側に具体的なメリットがなければ、止めてもらうことは極めて難しいことでしょう。お金は払わないが、強制執行給料差し押さえは止めて欲しい。会社バレや家族バレが嫌だから止めて欲しい。給料の手取りが増えると困るから、思い留まってくれないか。債務者だけの事情で止めてもらうことは、まず無理です。債権者側は「虫のよい話だ」と感じるのではないでしょうか。払わなければいけないお金を払わないからこそ、強制執行給料差し押さえまで事態が深刻化したのですから。

分割払いを検討したい。ボーナスまで待ってもらえば、一括で払うことができる。債権者側にもメリットのある話を持ち出して交渉。債権者が承諾すれば、強制執行給料差し押さえを止められる可能性があります。自分での交渉が難しい場合や交渉内容を書面に残したい場合は、弁護士などの法律の専門家にサポートしてもらいましょう。

強制執行給料差し押さえへの対処③債務整理をする

強制執行給料差し押さえの有効な対処法としては、債務整理も挙げられます。

債務整理とは、借金や未払い、滞納分などを法律の専門家である弁護士や司法書士がまとめ、減額や免責など、事情や債務額に応じたしかるべき手続きをとる方法です。自己破産や個人再生などの裁判所で手続きする方法や、弁護士や司法書士が計算の上で債権者と調整を行う任意整理などをまとめて債務整理と言います。

債務者の事情や債権額に合った債務整理をすることで、強制執行給料差し押さえに対処可能です。

債権者が強制執行給料差し押さえを検討している段階で任意整理をすれば、弁護士や司法書士の計算のもと、債務を支払いやすい額で分割にしたり、利息分をカットしたりできます。減額や無理のない返済にしてもらえる可能性が高いのです。債務整理の上で債務者がしっかりと支払いできれば、債権者も無理に強制執行給料差し押さえしようとは考えないはずです。

裁判所で自己破産の手続きをすると、強制執行給料差し押さえは停止します。個人再生の場合も、強制執行給料差し押さえが止まるというルールです。

自己破産や個人再生は裁判所手続きにより借金の減額や免責を受ける方法になります。債務者の債務全般を確認して対処するので、ひとりの債権者だけが強制執行給料差し押さえによって回収することが難しくなるという理屈です。

個人再生の場合は、申立て直後に強制執行給料差し押さえを止めてくれるように願い出ることも可能になっています。早めに強制執行給料差し押さえを止めたい場合は、その旨を弁護士や司法書士に相談しておきましょう。

強制執行給料差し押さえへの対処④取り下げしてもらう

個人再生をする場合などは、債権者に連絡して強制執行給料差し押さえを取り下げしてもらうという対処も可能です。

個人再生をすると債権者は強制執行給料差し押さえでお金を回収することができません。つまり、個人再生を申立てした債務者に対して、強制執行給料差し押さえを続けるメリットがなくなります。お金を回収できないのに強制執行給料差し押さえを続ける。債権者が疲れるだけです。

個人再生の申立てをしたら、債権者側に「強制執行給料差し押さえの申立てを取り下げてもらえないだろうか」とお願いすることも方法のひとつになります。

強制執行給料差し押さえへの対処⑤差し押さえの解除や変更

どうしても生活が苦しく、債務者自身の生活に強制執行給料差し押さえが多大なマイナスになっている場合は、強制執行給料差し押さえの解除や変更が認められる可能性があります。民事執行法153条に定められている、差し押さえ禁止範囲の変更です。

強制執行給料差し押さえの変更とは、給料の差し押さえ範囲を申立により変更してもらう手続きになります。

今まで給料の25%が強制執行給料差し押さえの対象になっていて、生活が非常に苦しく生存すら脅かされるような状況だった。何とかもう少し生活に回すお金を増やせないだろうか。このようなときに、たとえば25%を10%に変更してもらう等、強制執行給料差し押さえの変更をお願いするのです。生活状況や事情を考慮して、強制執行給料差し押さえを解除できる可能性もあります。

ただし、強制執行給料差し押さえの変更や解除があっても、債務自体は消えません。最終的には、大元になっている債務を債務整理などの対処法で解決する必要があります。

強制執行給料差し押さえの対処法として転職は有効か

強制執行給料差し押さえされてしまったら、転職すればいいと思うかもしれません。強制執行給料差し押さえをされたのは、あくまで今勤めている会社。別の会社に転職すれば、強制執行給料差し押さえから逃れられるのではないかと考えてしまいます。

別の会社に転職しても、強制執行給料差し押さえから逃れることは非常に難しいというのが結論です。転職先の給料に対しても強制執行給料差し押さえが可能になっています。転職先の給料に対して手続きをとればいいだけです。

転職の際は、退職金も強制執行給料差し押さえの対象になる可能性がある点に注意が必要になります。

まとめ

強制執行給料差し押さえは、給料という会社と社員の間の債権を押さえて強制的に回収する方法です。

給料から強制的に回収されてしまうために、手取りが減るというデメリットがあります。さらに、手続きに会社が関与するため、会社にバレるというデメリットも。

強制執行給料差し押さえは5つの方法で対処が可能です。債権者が強制執行給料差し押さえを検討している。強制執行給料差し押さえされてしまった。困っているときは、弁護士や司法書士などの法律の専門家に相談し、状況に合った方法で対処しましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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