債務整理

債権者に「公正証書で債務証書を作りましょう」と言われたら?

公正証書による債務証書という名前を耳にしたことはありませんか。お金を借りた消費者金融などから「公正証書で債務証書を作りましょう」と言われて、首を傾げてしまう。

公正証書や債務証書という言葉の意味を理解していないと、お金を借りた先の言葉通りに作成して良いものか、判断がつかないはずです。果たして、言葉通りに作成していいのでしょうか。リスクはないのでしょうか。どのように対処したらいいのでしょう。

公正証書による債務証書の意味から作成によるデメリットまで、お金を借りた人が知っておきたい知識をまとめました。「公正証書」や「債務証書」という言葉を耳にしたらすぐに応じず、よく考えてみましょう。

公正証書による債務証書とは?意味や使われる場面など

債務証書とは「債務についての証書」です。公正証書で作成されるため、「証書」などと呼ばれたりもします。公正証書で作成しているために「公正証書」とそのまま呼ぶことや、強い力を持つことから「債務名義」と呼ぶこともあります。「お金の貸し借りを証明する公的書類」と捉えれば分かりやすいのではないでしょうか。

債務者としてお金を借りると、貸金業者から「公正証書を作成してください」と言われることがあります。このときの公正証書という言葉は、公正証書によって作成された債務証書を意味するのが基本です。

債務証書はいろいろな呼び方をします。意味は大体同じです。お金の貸し借りについての書面であり、公正証書で作成した場合は公的な書面でもある。このように、分かりやすく理解してみてください。

公正証書で債務証書を作る意味は?

お金の貸し借りをしたとします。お金を貸す側には、さまざまなリスクと権利があるはずです。

お金を貸した側(債権者)は、返還日になったらお金を返してもらうことができます。債権者とお金を借りた人(債務者)が「2020年1月20日にお金を返します」と約束して貸し借りをした場合は、2020年1月20日にお金を返してもらう権利があるはずです。お金を返してもらうことは、債権者側にとって権利になります。対して、債務者側にとっては負担です。

債権者には利息を受け取る権利もあります。金融機関からお金を借りた経験のある人は「借りたお金は借りた金額そのままを返すわけではない」ということを、よく知っているのではないでしょうか。

住宅ローンやカードローンなど、各種のお金を借りるサービスには利息(金利手数料など)が上乗せされます。債務者は利息を上乗せして返済するのです。債権者側から見たら、利息を受け取ることは権利になります。債務者側にとっては負担です。

  • お金の貸し借りでは、債権者には「返してもらう」「利息を受け取る」という権利が発生する。
  • お金の貸し借りでは、債務者は「借りた分を返済する」「利息を上乗せする」という負担が発生する。

債権者は受け取る側なのでいいのですが、債務者は支払う側です。途中で支払いが嫌になるかもしれませんし、踏み倒そうとするかもしれません。「お金を貸し借りした証拠がない」と言い逃れすることも考えられます。

債務者が支払いを渋ったり、返済を滞納したりした場合のために証拠として残すのが公正証書による債務証書です。公的な債務証書に債権者と債務者の貸し借りを残すことによって「証拠として債務者の言い逃れを封じ」「滞納や踏み倒しが起きたときに貸したお金を強制的な方法で回収する」ことが債務証書を作る意味になります。

公正証書による債務証書によって、貸し借りによるリスクを軽減するのです。

公正証書による債務証書が使われる場面とは

公正証書による債務証書がよく使われるのは「お金の貸し借り」や「支払いを約束する」場面です。

個人が銀行や消費者金融からお金を貸し借りするときも、使われることがあります。個人と個人の支払いについても、公正証書による債務証書はよく使われているのが現状です。養育費の支払いなども、公正証書による債務証書としてかたちに残すことが少なくありません。

公正証書による債務証書が使われる場面は、貸し借りの相手にかかわらず「お金の貸し借りの場面」「支払いが必要な場面」です。

公正証書による債務証書と契約書は違うのか

お金の貸し借りの場合、契約書を作成することが少なくありません。契約書も立派な貸し借りの証拠です。だからこそ「契約書は公正証書による債務証書と違うのか」と疑問に思うかもしれません。

契約書も広い意味では債務の証拠になる書面ですから、債務証書ではないかと首を傾げる人もいるのではないでしょうか。確かに似ていますが、公正証書による債務証書と契約書は、根本的に違います。

公正証書による債務証書は「債務についての公的な証書」です。公正証書による債務証書は公文書になります。公文書とは、公証役場や自治体、裁判所など公的な機関が関係して作成される書面のことです。公的な機関が関係した書類ですから、力が強く、偽造することも難しい証書になります。内容についても、公的な機関の証明があるということです。

契約書は、基本的に私文書になります。私文書は個人間で勝手に作ることができる書類です。契約書のテンプレートを使えば、他人名義の契約書だってすぐに作れてしまいます。私文書は公文書より力が弱く、信用力という点で劣るのです。自治体が作成した公文書と、友人が作成した私文書。「どちらを信用するか」と聞かれたら、多くの人が「公文書」と答えるのではないでしょうか。

債務証書は公文書。契約書は基本的に私文書になっている。以上の点で、公正証書による債務証書と契約書には違いがあります。「公正証書による債務証書の方が契約書より強く信用力も高い」と考えてください。

公正証書による債務証書を作成するメリットとデメリット

公正証書による債務証書には、債権者と債務者にとってメリットとデメリットがあります。

多くの債権者は、お金の貸し借りの証拠を残そうとします。踏み倒しや回収不能のリスクを少しでも軽減しようとするからです。回収リスクを公正証書による債務証書で軽減する以外にも、債権者にとってはメリットがあります。

お金の貸し借りは、立場を変えると見方が変わるもの。債権者にとっては「支払ってもらえる」という権利ですが、債務者にとっては「返済しなければいけない」という義務になる。このように、お金の貸し借りは視点を変えると、義務や権利が反転します。公正証書による債務証書のメリットも同じです。債権者にとってはメリットですが、債務者にとってはデメリットになる可能性があります。

公正証書による債務証書について、債権者や債務者にとってのメリットとデメリットを整理してみましょう。

公正証書による債務証書は借金や支払いの強い証拠になる

公正証書による債務証書は公文書なので、お金の貸し借りの証拠としてかなり強いものになります。契約書も証拠になります。しかし、契約書はすでにお話した通り、基本的に私文書。証拠としての強さが違います。

公的な機関が発行している証書は、発行の要件も厳格です。お金の貸し借りや支払いをまとめた私文書より、格段に強い証拠になります。債権者にとっては、強い証拠を持つことができるという点が大きなメリットです。

債務者にとって、債権者が債務証書を持つことはデメリットになります。私文書ならできた言い逃れが、公文書だと封じられてしまう可能性が高いのです。支払いや返済でトラブルが起きたときに「強い証拠があります」と突きつけられるリスクがあります。

貸金業者が「公正証書を作成したい」と言ってきた場合、気軽に「いいですよ」と承諾して作成してしまうと、貸金業者に強力な証拠を渡す結果になるということです。

公正証書による債務証書で逃げを封じることができる

契約書などの私文書の場合、債務者が「その契約書は他人が代筆したものだ」「債権者が勝手に作ったのだ」と逃げを打つ可能性があります。私文書の契約書すら作成していない場合、「そもそも貸し借りなどなかった」と主張する可能性さえあるはずです。

公文書は強い力を持った書面であり、公的な機関が作成に関わります。債務者があの手この手で逃げようとしても、断固とした証拠である公正証書による債務証書があれば、言い逃れが極めて難しくなるはずです。言い逃れにつき合わなくて済む。言い逃れを封じる一手がある。これは、債権者にとって大きなメリットであり、意味のあることではないでしょうか。

債務者側にとって、逃げを封じられることはデメリットです。公正証書による債務証書がなければ交渉の余地があったかもしれない。それなのに、公正証書による債務証書を出されるだけで言葉を封じられてしまいかねません。公正証書による債務証書が登場すると、逃げ道や対処法がかなり限られてくるという債務者側のデメリットがあります。

公正証書による債務証書は裁判所でも強い力を持つ

公正証書による債務証書は証拠として強いという話をしました。これは、裁判所で訴訟などを行うときも同じです。

たとえば支払いを滞納し、債権者と債務者の話し合いがこじれて訴訟に発展したとします。債務者ととても仲の良い友人が、債務者側に有利な証言をしました。対して債権者側は、証拠として公正証書による債務証書を提出しました。裁判所はどちらを重視するでしょう。公正証書による債務証書と友人の証言だけなら、どちらをより信用するでしょうか。

証拠や証言は最終的に裁判所の心証や判断によるため、一概には言えません。しかし、普段から債務者と非常に仲の良い友人の言葉より、公的な機関が作成に関わった公正証書による債務証書を重用する可能性が高いと考えられるのではないでしょうか。公正証書による債務証書は揉めたときに裁判所を利用する場合でも、証拠として非常に強いというメリットや意味があります。裁判所で白黒つける場合に公正証書による債務証書があれば、すでに強力な一手を取得しているに等しいのですから。

訴訟などでも強い力を持つ公正証書による債務証書という証拠が債権者の手にあることは、債務者にとってデメリットです。お金の貸し借りや支払いについて揉めて訴訟で白黒はっきりとなった場合に、公正証書による債務証書という強い証拠に対抗する方法を考えなければいけません。

公正証書による債務証書の場合はすぐに強制執行できる

債権者にとって公正証書による債務証書の大きなメリットであり、作成の意味でもあるのが「強制執行」です。公正証書で債務証書を作成すると、滞納などが発生した場合すぐに債務者に対して給料差し押さえなどの強制執行ができるメリットがあります。

強制執行は債権の回収方法の中ではとても強力な方法です。公権力の力を借りて、債務者の財産から強制的に滞納分や未払い分を回収する方法です。

お金を返さない。支払いをしない。このようなケースで勝手に債務者の財産を盗んでしまうと、犯罪です。強制執行や差し押さえという法律に定められた方法で行うことにより、強制的に債務者の財産から回収することが許されます。

ただ、強制執行は強力な方法なので、発動のための条件が厳格に定められているのがデメリットです。強制執行をするための条件のひとつが「債務名義を持っていること」になります。債務名義になるのは、主に公文書。裁判所の確定判決や調停調書、仮執行宣言付支払督促などが代表的な債務名義です。

確定判決や調停調書は、裁判や調停をしてはじめて入手できる債務名義になります。要するに、入手までに手間と時間がかかる債務名義です。債務名義の取得まで時間がかかりますから、確定判決や調停調書を債務名義にする場合は、強制執行までかなり時間がかかります。

条件を満たした公正証書も債務名義として使えるルールです。公正証書は公証役場で作成するため、裁判や調停といった手間や時間のかかる手続きを踏む必要がありません。公正証書で債務証書を作成して持っていれば、状況に応じて債権者は即座に強制執行できます。すぐに強制執行できる道具を手もとに置くことは、債権者にとってメリットと意味のあることです。

債務者にとっては、即座に強制執行するための道具が債権者の手もとにあることはデメリットになります。債権者は何時でも強制執行できる。つまり、いつ強制執行してくるか分からないのです。

不意打ちのようなかたちで給料差し押さえをしてくる可能性もありますし、その他の財産を押さえられてしまう可能性も考えられます。公正証書で作成した債務証書を債権者が持っているということは、債務者にとって強制執行リスクが高いことを意味するはずです。債務者が非常に不安定かつリスクの高い立場に置かれるというデメリットがあります。

公正証書による債務証書の作成には債務者の協力が必要である

公正証書による債務証書には、債権者が即座に強制執行できるなどの強力な力があります。しかし、強力だからこそ、債権者が勝手には作成できません。

公正証書で債務証書を作成する場合は、債権者と債務者が双方納得し、債務証書の作成について承諾していることが基本的なルールです。債権者が「作りたい」と言っても、債務者が「嫌だ。作りたくない。承諾しない」と言ってしまえば、公正証書を作成することはできません。代理人に作成手続きをしてもらうこともできますが、あくまで債務者などの当事者が承諾していることが前提です。

債権者側が無理に作ろうとしても、公正証書の作成に関わるのは法律のプロである公証人。公正証書で作成した債務証書は強い力を持ちますから、公証人は当事者をしっかり確認します。公文書ですから、発行のための条件が非常に厳しいのです。

公正証書で債務証書を作成するためには、当事者の承諾や同意、協力がなければいけない。これは、債務者側のメリットになります。債権者側が公正証書による債務証書を作りたいと言っても、債務者が同意も協力もしなければいいのです。債権者にむざむざ強制執行の道具を渡す意味はありません。貸金業者などから「公正証書を作りたいのですが」と言われても、承諾も協力もしなければ、貸金業者は公正証書の債務証書を作成できないことになります。

債権者側にとっては、債務者の納得や協力がなければ公正証書の債務証書を作れないという点はデメリットです。「公正証書を作成しましょう」「債務証書を作りたいのです」と話を持ちかけても、公正証書による債務証書のリスクを知っている債務者の場合は、まず承諾しません。

「作ってくれない場合はお金を貸しません」と言っても、「では、他の会社から融資を受けます」と言われてせっかくのお客さんを逃がしてしまうかもしれません。強制執行をするためには他の債務名義を取得しなければならないというデメリットも発生します。

公正証書による債務証書の作成を求められたらどうすればいい?

債権者側が「融資の条件は債務証書の作成。公正証書の作成に協力して欲しい」と言ってきたらどうすればいいのでしょう。貸金業者が「債務証書の作成か一括返済のどちらかを求める」と請求してきたら、どのように対処すればいいのでしょうか。

大切なのは、気軽な気持ちで「いいですよ」と即決しないことです。

すでにお話したように、公正証書による債務証書は債務者にとって非常にリスクの高い証書になります。強制執行は人生すら変えてしまうかもしれません。「公正証書で債務証書を作りましょう」と言われたら、即決せず、次の4つの対処法を検討してみましょう。

債権者側に意味をはっきりと確認する

貸金業者などから「証書を作りたいので協力してください」と言われたら、その「証書」が何を意味するかはっきりと確認することが重要です。「証書を作らなければいけないのか」と自己完結で意味を把握し、気軽な気持ちで承諾してしまうと、強制執行により後悔しないとも限りません。

公正証書による債務証書はいろいろな名前で呼ばれます。公正証書で作成することから「公正証書」と言われることもありますし、「債権証書」や「債務証書」「証書」「書面」「金銭支払いの証書」などと呼ばれる可能性もあります。

貸金業者などから「書面を作りたい」と言われたら、「その書面はどこで作るのか」「公証役場で作成する公正証書のことか」「どのような意味か」など、貸金業者の意図する書面の意味を明確にするようにしましょう。

公正証書で作成する債務証書であることを意図的に隠そうとする業者もいます。意味を悟られてしまうと、債務者の協力が得られ難くなるからです。意図的に書面や書類などとあいまいな言葉で言われた場合も、しっかりと意味を確認するようにしましょう。意味の確認は非常に重要です。

すぐに承諾せず答えを保留する

あやふやなまま承諾してしまうと、債権者に対して強制執行の道具を渡してしまうことになります。支払いや返済でトラブルになっている場合は、強力な証拠を渡してしまうに等しいことです。

債務証書や公正証書などのワードで作成を持ちかけられたら、答えを保留することをおすすめします。保留している間に、債権者への質問や疑問などが出てくるかもしれません。疑問がしっかり晴れるまで、答えは保留しておく方が無難です。

弁護士や司法書士に相談する

貸金業者や債権者の言っている意味が理解できなければ、弁護士や司法書士などの法律のプロに相談することが重要です。「貸金業者が一括返済か公正証書作成か選べと言っている」と相談すれば、法律のプロである弁護士や司法書士はピンときます。

証書とぼやかされているが、公正証書による債務証書のことである。意味やリスク。作成すべきかの判断で注意すべきポイント。弁護士や司法書士は、債務者の立場に立って分かりやすく教えてくれます。

貸金業者が「一括返済。債務証書の作成。どっち?」と判断を急かすときも、慌てて判断せず、弁護士や司法書士に相談して意味を理解した上で決断するようにしましょう。

他の方法を検討する

貸金業者や債権者は、お金を貸すときに必ず公正証書による債務証書の作成を求めるわけではありません。公正証書による債務証書の作成を求めるということは「滞納が心配だ」「すでに未払いなどがあって不安」「払わない可能性が高いから、いざというときに回収したい」と判断した可能性が高いと言えます。

公正証書による債務証書の作成に応じず、他の方法で対処することも可能です。債務の返済に困っている場合は、債務整理などを検討してはいかがでしょう。「なぜお金が必要なのか」「なぜ公正証書による債務証書の作成を求められたのか」をよく考えてみてください。より良い解決法のために、弁護士や司法書士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

債務証書の作成に協力しなければどうなるのか

債務者にとって、即時の強制執行リスクが高まる証書の作成になど協力したくないのが本音ではないでしょうか。

公正証書による債務証書の作成に協力しなくても、特に問題はありません。公正証書によって債務証書を作成しなければ、お金の貸し借りができないわけではありません。債務者は公正証書による債務証書の作成に協力しなければならないわけでもありません。「公証役場で債務証書を作りましょう」と言われても、承諾や協力、同意しないという判断をしても問題ないという結論です。

ただ、公正証書による債務証書の作成に債務者が協力しない場合、債権者は別の方法を講じる可能性があります。公正証書で作成された債務証書は債務名義(強制執行の道具になる)という話をしました。債務名義は他にもあるので、債権者が他の債務名義を取得すべく動き出す可能性があります。債務者の協力がない場合は、他の方法を使えばいいという話です。

貸金業者が債務名義を取得する方法と流れ

貸金業者などの債権者が債務名義を取得する方法はひとつではありません。公正証書というかたちで債務証書を作成すれば、すぐに強制執行が可能です。債権者にとっては、すぐに強制執行できた方が楽ですし、回収率の面でも有利だと考えられます。だからこそ、可能な限り債務証書を作成したいのが本音のはずです。

債務者が協力してくれない場合は、他の方法で債務名義を取得して債務者への強制執行に繋げることになります。公正証書による債務証書の作成に債務者が協力しなかった場合、債権者はどのような流れで債務名義を取得するのでしょうか。

債務名義になる証書とは

債務名義は強制執行のために必要になる道具(証書)です。

債務名義として使える証書は、公的な証書(公文書)に限られます。公正証書で作成した債務証書以外には、次のようなものが債務名義として利用可能です。

  • 裁判の確定判決
  • 調停調書
  • 和解調書
  • 支払督促(仮執行宣言付支払督促)

代表的な債務名義としては、以上のような証書が挙げられます。

債務名義になる証書を確認すると、どれも「裁判などの手続きによって取得しなければいけない」と気づくはずです。調停調書は調停によって取得しますし、和解調書も和解によって取得します。支払督促も、裁判所で支払督促の手続きを行い、一定条件を満たすことで債務名義化するという流れです。債務名義を取得するためには、「裁判所などの手続きで取得すること」が基本になります。

公正証書は公証役場で作成できるので、簡単です。ただ、作成のためには債務者の協力が必要なので、協力が得られない場合は作れません。作れないということは、債務名義として利用できないということです。債権者は裁判や支払督促など、他の方法で債務名義を取得するべく動きます。

債権者が債務名義を取得する流れ

貸金業者などの債権者が支払督促で債務名義を取得する流れを見てみましょう。それぞれの段階での対処法や注意点についても確認します。

債権者が債務者に督促や催告を行う

債権者が債務者に対して「返済してください」という促しを行います。この促しを督促と言います。督促は電話や手紙でソフトに「返済してください」という段階からスタートして、少しずつ強くなっていくのが特徴です。この段階で返済に応じれば、穏便に解決する可能性もゼロではありません。

注意したいのは、「催告」が届いたときです。内容証明郵便を使って、「払わないなら法的手段に移ります」といった文面で送ってきます。

内容証明郵便は郵便局が「何時・誰が誰に・どのような内容の手紙を送ったか」を証明してくれる手紙です。証拠を作りたいときや、債務者に心理的な圧迫感を与えたいときによく使われます。

内容証明郵便には、時効の中断効果もあるため注意が必要です。時効が完成しており、「もう時効だから払わなくていいでしょう」という主張と手続き(援用)を債務者がした場合、債権者側はお金を返してもらえません。内容証明郵便などで催告を行い6カ月以内に裁判を起こすことによって、債権者は時効の完成を阻止できます。

内容証明郵便が送られてきたら「裁判を起こされるかもしれない」と警戒し、弁護士や司法書士へと即座に相談した方が安全です。

債権者が裁判所に支払督促や裁判を申し立てる

債権者が強制執行のための債務名義を取得する場合、よく使われるのは「支払督促」という手続きです。支払督促とは、裁判所から「お金を支払いなさい」という手紙を送ってもらう手続きになります。支払督促は費用や手続きの負担が裁判より軽いため、債務名義取得を目的としてよく使われているのが現状です。ただし、金額が大きい場合などは、すぐに裁判を申し立てることもあります。

債務名義を取得しただけでは、お金を回収することはできません。債権者は判決などの債務名義を使って、自分で回収するのが基本です。債務名義の取得に着手したのがこの段階になります。

支払督促や判決が債務名義になる

債権者が支払督促で債務名義を取得する場合は、支払督促が届きます。

支払督促が届いただけでは、強制執行はできません。支払督促は異議申し立てがないと、受け取って2週間で債務名義化するという特徴があります。支払督促を受け取ったら、急いで裁判所へと異議申し立てをしないと、強制執行される可能性が極めて高いのです。すぐに異議申し立てをしましょう。

裁判の場合は判決が出るまで時間がかかるのが基本です。裁判の中で債務者の言い分も聞いてくれることでしょう。訴状が届いた場合は、弁護士や司法書士へと相談し対策を進めましょう。裁判には手形訴訟や少額訴訟などのスピーディに判決が出る方法もあるため、注意が必要です。訴状が届いたら急いで法律の専門家に訴状もチェックしてもらうことをおすすめします。

裁判の判決が出ると、判決を債務名義として活用可能です。債務名義として使える判決を受け取った債権者は、強制執行へと駒を進めることになります。

債権者が強制執行や差し押さえをする

債権者が債務名義を取得したら、その債務名義を使って強制執行が可能です。

強制執行の対象になる財産は、いろいろあります。銀行の預金や会社から支払われる給与、不動産や家財道具などの動産が主な差し押さえ対象です。債権者は財産に合わせて差し押さえや強制執行の手続きを行うことになります。どの財産に対して強制執行や差し押さえするのかは、債務名義を持つ債権者の判断です。

強制執行や差し押さえが行われると、債務者の財産が強制的に押さえられ、未払い分や滞納分に充てられるという流れになります。

強制執行や差し押さえを回避するための方法はあるのか

債権者が強制執行や差し押さえをしてきそうな場合、債務者はどのような方法で対処すればいいのでしょう。

貸金業者などの公正証書による債務証書作成を拒否しても、一時しのぎでしかありません。貸金業者などの債権者は裁判や支払督促などで債務名義を取得することが可能です。

公正証書による債務証書や強制執行、債務名義の取得などの問題は、大元の借金問題からきています。借金問題や返済苦の状況を改善しなければ、意味がありません。一時しのぎの方法をとっても、同じことを繰り返すだけではないでしょうか。苦しい状況も変わりません。

強制執行や差し押さえを回避する方法としては、債務整理が考えられます。

債務整理は、自己破産や個人再生、任意整理などで借金を整理する方法です。借金問題の根本を解決できます。弁護士や司法書士に相談し、強制執行や債務証書の大元を解決しましょう。

まとめ

公正証書による債務証書とは、債務についての公的な証書です。債務証書という言葉以外に「お金の貸し借りの証書」や「証書」「公正証書」などと呼ばれることも。

お金の貸し借りで公正証書が登場したら要注意です。公正証書で作成した債務証書は、強制執行のための債務名義になるなど、強い力を持ちます。貸金業者などの債権者から「作成したい」と持ちかけられた場合は、意味をよく考えて対処することが重要です。

公正証書による債務証書や強制執行には、大元にお金の問題があります。弁護士や司法書士に相談し、債務整理などの方法で、大元であるお金の問題を解決することが最大の対処法ではないでしょうか。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

債務整理で気になる項目を徹底解説!へ戻る

債務整理で気になる項目を徹底解説!

借金問題の解決方法