債務整理

債務超過=倒産?原因と判断基準、解決の方法を解説します

債務超過は、負債が資産よりも多くなってしまった状態のことです。企業だけでなく個人でも債務超過に悩む人が増えています。企業であれば倒産の事態にもなりかねません。もしもあなたの会社が債務超過になってしまったとしたら、どうすれば倒産の危機を乗り切ることができるのでしょうか。この記事では企業を中心に債務超過の原因や判断基準などについて詳しく解説します。解消法となる民事再生や会社更生、個人再生についてもご紹介します。

目次
  1. 1. 債務超過したら倒産するとは限らない
    1. 1.1. 資産が2億あっても借金が5億あれば債務超過
    2. 1.2. 負債は借金以外に買掛金や支払手形などもある
  2. 2. 個人でもあり得る債務超過と多重債務
    1. 2.1. 個人の債務超過は「見て見ぬふり」が通用する
    2. 2.2. 多重債務で債務超過にならいよう要注意
  3. 3. 倒産を未然に防ぐ債務超過の目安
    1. 3.1. まずは債務超過と赤字の違いを知る
  4. 4. 債務超過を見極める貸借対照表の見方
    1. 4.1. 常に左右のバランスがとれた状態にする
  5. 5. 債務超過を招く2つの原因
    1. 5.1. 赤字続き、赤字の悪化
    2. 5.2. 起業、創立したばかり
  6. 6. 日常的に財務の安全性をチェックすること
    1. 6.1. 安全性分析は倒産リスクを評価するための手法
    2. 6.2. 短期支払能力を示す「短期安全性」
    3. 6.3. 長期支払能力を示す「長期安全性」
  7. 7. 債務超過後で起こる可能性がある3つのこと
    1. 7.1. 銀行からの融資が受けにくくなる
    2. 7.2. 上場廃止の可能性がある
    3. 7.3. 倒産の可能性が高まる
  8. 8. 債務超過を解消する5つの方法
    1. 8.1. 1.赤字体質を改善し「利益」を増やす
    2. 8.2. 2.「増資」で資本金を増やす
    3. 8.3. 3.返済をあきらめて「DES」で資本を増やす
    4. 8.4. 4.「M&A」で会社を手放すことで負債を返す
    5. 8.5. 5.ファクタリングで「資金調達」する
  9. 9. スカイマークなど債務超過になった事例
    1. 9.1. 負債総額約109億円の「ビットマスター」
    2. 9.2. 負債総額約710億円の「スカイマーク」
    3. 9.3. 負債総額約4,480億円の「エルピーダメモリ」
    4. 9.4. 負債総額約82億の「三菱農機」
  10. 10. 債務超過を解決する民事再生と会社更生
    1. 10.1. 大手企業は会社更生、個人や中小企業は民事再生
  11. 11. 返さなくていい借金と返すべき借金とは
    1. 11.1. 親子だから借金も返さなくていい?
    2. 11.2. 返済能力以上に貸し出す金融業者

債務超過したら倒産するとは限らない

2019年1月、財務省は2017年度末時点の国の負債が資産を上回る債務超過は568.4兆円で、過去最大を更新したと発表しました。日本の国そのものが債務超過に陥っているわけです。まずは債務超過が即倒産につながるのかどうかについて説明します。

資産が2億あっても借金が5億あれば債務超過

「債務超過」とは資産より負債のほうが大きくなり、すべての資産を売却しても負債を返せない状態のことです。

たとえば、現金や株、不動産などの資産が2億円あったとします。個人であれば、そこそこの資産家なのではないでしょうか。ところが借金が5億円あったとしたらどうでしょう。この状態が「債務超過」です。

債務超過と聞くと個人とは無縁の話のようですが、実は債務超過は企業だけでなく家庭でもありえます。「借金が返せなくて自己破産した…」。これも立派な債務超過の結果です。

負債は借金以外に買掛金や支払手形などもある

では、債務超過になれば倒産なのでしょうか。
資産より負債のほうが多く債務超過状態だとしても、すべてが倒産とは限りません。そもそも「資産」や「負債」とひとことで言っても、個人や企業によってその内容はさまざまです。

個人の場合、負債といえば現金の借入が多いはずです。企業の場合は、現金以外にも買掛金や支払手形などもあります。

買掛金とは、先々に支払う約束をして購入した材料などの代金のことです。個人でいえば、ボーナス払いで買った商品のようなもの。売掛金はこの逆で、先々に受け取る約束で売った商品などの代金になります。

手元に現金があれば立て直せる可能性もある

なぜすべてが倒産にならないのかというのは、債務超過だとしても現金が手元にあれば、数カ月は運転資金として使うことができるからです。

その間に滞納されていた売掛金を回収できる可能性もあります。現金払いの大量注文があるかもしれません。持っていた不動産を予想より高値で売却できる可能性だってあります。

もちろん、一度債務超過の状態に陥ると悪循環を招きやすくなり、こうした可能性が低くなるのは事実です。だからといって債務超過=倒産とは言い切れないのです。

個人でもあり得る債務超過と多重債務

債務超過は企業だけではなく、個人でも起こる可能性があると冒頭でお伝えしました。実は債務超過になっている家庭は意外と多いのです。

今や生産年齢人口(15歳~64歳)の半数、つまり2人に1人が借金をしている時代といわれています。ここでは個人が債務超過になる原因と多重債務について説明します。

個人の債務超過は「見て見ぬふり」が通用する

企業であれば大問題となる債務超過ですが、個人や家庭の場合、「見て見ぬふり」をしても問題はないケースがあると言われています。どのようなケースなのでしょうか。

5年後に家を売ったら1,200万円の借金だけが残る?

Aさんが3,500万円で家を建てたとします。土地が1,800万円、建物が1,700万円。30年返済で住宅ローンを組みました。これを貸借対照表(バランスシート)にしてみるとこうなります。

【借方】資産…3,500万円   【貸方】負債…3,500万円
※負債の内訳(土地1,500万円、建物2,000万円)

5年後、Aさんは親の面倒を見るため家を売って実家に戻ろうかと考え、不動産屋さんに査定してもらいました。結果、土地は1,400万円、建物は600万円、トータルで2,000万円の価値だと言われました。この時点で残りの住宅ローンは3,200万円。貸借対照表はこうなります。

【借方】資産…2,000万円   【貸方】負債…3,200万円
※負債の内訳(土地1,400万円、建物600万円)

資産に対し、負債が1,200万円。数字だけを見れば完全に債務超過です。

目先の負債より「将来のキャッシュフロー」を見る

では、なぜ「見て見ぬふり」が通用するのでしょうか?

本当にこのまま売却してしまっては1,200万円の借金が残るだけです。しかし、通常は家を購入すればAさんのような事情がない限り、30年、40年と住むはずです。その後も子どもたちが住む可能性は十分にあります。

個人の場合に大切なのは、目先のバランスシートだけを見るよりも、将来のキャッシュフローを見ることです。Aさんの場合、奥さんと幼稚園に通うお子さんが2人います。Aさんの年収は800万円。奥さんは現在主婦ですが、下のお子さんが小学生になったらパートで働こうと考えています。

住宅ローンの場合、5年しか経っていないと返済額のうち元本は半分ぐらいしか減っていません。Aさんの場合も月々は10万円強払っている計算ですが半分は利息です。

しかし、年数が経つにつれ元本が減っていくスピードも早くなります。奥さんがパートに出るようになれば世帯年収も増えます。このように先々のことを考えれば、今の債務超過は「見て見ぬふり」をしていても大丈夫ということになります。

多重債務で債務超過にならいよう要注意

は、負債があっても本当に「見て見ぬふり」が通用するのでしょうか。
危険なのは住宅ローン以外にも、複数の消費者金融などからお金を借りている多重債務状態の場合です。

2件以上の借金がある人は全国で約3,600万人

「多重債務」とは、借金返済のために借金をし、雪だるま式に借金が増えて返済が困難になっている状態のことです。JICC(株式会社日本信用情報機関)の統計によると、2018年12月末時点で2社以上から借入をしている人の数は3,618万人にもなります。

「私は1社しか借りてないから大丈夫」と思っている方も多いようですが、この数字を見る限りとても他人事ではないはず。住宅ローンと違ってキャッシングなどは金利も高いので、できるだけ早く完済できるようにしましょう。

多重債務に陥る要因とは

多重債務に陥る要因は、ギャンブルや衝動買い、投資、連帯保証人など人によってさまざまです。共通しているのは「家計の管理ができていない」ということです。

今の時代、カードで簡単にお金が借りられますし現金を持たなくても買い物ができるため、ついつい使い過ぎてしまうことが多いのです。借金返済のための借金は、遅かれ早かれ債務超過で破綻します。

多重債務を抱えている場合は、早めに弁護士に相談することで「自己破産」という最悪の事態だけは避けられるかもしれません。

自己破産ともなればブラックリストにも残りますし、会社にも借金があることがバレてしまいますのでリスクも大きくなります。弁護士事務所によっては無料相談もありますので利用してみてください。

倒産を未然に防ぐ債務超過の目安

資産より負債が大きくなってしまうと倒産に至る可能性も大きくなります。不動産や株などの資産を売却しても、負債をすべて返済するのは難しくなります。
では、事前に債務超過になりそうだと判断するには何を目安にすればよいのでしょうか。

まずは債務超過と赤字の違いを知る

債務超過かどうかの目安を知るために、まずは債務超過と赤字の違いを理解しましょう。

赤字が続くことで債務超過を招く

冒頭でも説明しましたが、「債務超過」とは資産よりも負債のほうが大きく、すべての資産を売却しても負債が残ってしまう状況のことです。

一方「赤字」とは、「今期」とか「前期」といった一定期間はマイナス利益になっていたとしも、資産を負債が超えていない状況のことです。

このように債務超過と赤字では状況が違いますが、赤字が続くことで債務超過を招きやすくなるといえます。

貸借対照表のバランスをチェックする

債務超過かどうかを判断するには「貸借対照表」を利用します。
貸借対照表とは、その企業の財務状況をまとめたものです。左側に総資産、右側に負債と純資産が並びます。常に左右はバランスがとれた状態、【負債+純資産=資産】となり合計金額が同じでなければなりません。

企業であれば大なり小なり借金=負債はあります。無借金経営のほうが珍しいです。赤字続きは結果、債務超過を招きやすくなりますが、債務超過かどうかの目安は「資産<負債」になっていないかどうかです。常日頃から貸借対照表でチェックするようにすれば未然に防ぐことができます。

貸借対照表の詳しい見方については、後程「債務超過を見極める貸借対照表の見方」で説明します。

実は債務超過より怖い資金ショート

債務超過と似た言葉のようですが、資金ショートは運転資金がなくなり倒産寸前の状態です。資金ショートが倒産の「引き金」といえます。

黒字なのに事実上の倒産、というパターンも資金繰りがどうにもならなくなる資金ショートが原因。会社経営でもっとも恐ろしい状態ではないでしょうか。そうならないためにも貸借対照表のチェックは重要です。

債務超過を見極める貸借対照表の見方

では、債務超過になってしまった場合の貸借対照表を見ていきましょう。わかりやすいよう金額はシンプルにし、債務超過になったケースだけではなく、正常な状態、赤字の状態と比較してあります。

常に左右のバランスがとれた状態にする

債務超過かどうかを判断するには「貸借対照表」を利用します。貸借対照表とは、その企業の財務状況をまとめたものです。

正常・赤字・債務超過状態の貸借対照表比較

貸借対照表は、左側に総資産、右側に負債と純資産が並びます。常に左右はバランスがとれた状態、【負債+純資産=資産】となり合計金額が同じでなければなりません。

では、正常な状態、赤字の状態、債務超過になった状態を比較してみましょう。

≪正常な状態≫
正常な状態は資産よりも負債は少なく、純資産もプラスです。

資産…1,000万円

負債…400万円
純資産…600万円(資本金400万円・利益剰余金200万円)

≪赤字の状態≫
赤字になると利益余剰金はマイナスですが、純資産はマイナスになっていません。
赤字になった分は役員からの借入で負債が増えています。

資産…1,000万円

負債…800万円
純資産…200万円(資本金400万円・利益剰余金▲200万円)

≪債務超過の状態≫
赤字が続き負債が増えて資産を超えると債務超過になり左右のバランスは崩れます。会社の持っている株や不動産などを売って左右のバランスがとれれば、ひとまず倒産の危機は免れます。

資産…1,000万円

負債…1,800万円
純資産…▲800万円(資本金▲200万円・利益剰余金▲600万円)

「資産」「負債」「純資産」の内容

参考までに「資産」「負債」「純資産」には以下のようなものが含まれます。

資産…現金、預金、不動産、備品、売掛金、受取手形、有価証券、商品、営業権、特許権など
負債…借入金、社債、買掛金、支払手形、未払金、前受金など
純資産…資本金、資本剰余金、利益剰余金など

利益剰余金とは、会社の利益を積み立てたお金のことです。

債務超過を招く2つの原因

債務超過になってしまった原因にはさまざまなパターンがあります。ここでは、代表的な原因について説明します。

赤字続き、赤字の悪化

赤字であってもすぐに債務超過とはならないとお伝えしてきましたが、赤字が悪化すれば債務超過になる可能性は高まります。

その原因は、赤字が続くことでそれを補うために、利益剰余金や資本剰余金などの純資産が減っていくことが多いからです。

赤字状態の脱却にはしっかりした資金計画が重要

多額の赤字を出したとしても、単年度であれば銀行に融資をお願いする際もそれほど難しくなくクリアできる可能性はあります。しかし赤字の額は少なくとも、それが何年も続いているようでは、銀行側も「貸したところで回収できないだろう」と判断せざるを得ません。

赤字状態から脱却するには、やはり日頃から貸借対照表でチェックし、将来のキャッシュフローも見据えての資金計画が大切です。

起業、創立したばかり

「起業したばかり」「創立したばかり」の会社は、純資産があまりない状態がほとんどです。設備投資をしたり、新規事業を立ち上げるともなればお金は出ていくばかりで、債務超過に陥りやすい状態です。

国データバンクによれば、2018年の倒産件数は8,063件、負債総額は約1兆6千億円で、どちらも2年ぶりに前年比減少となりました。その一方で、負債5,000万円未満の倒産が2000年以降で最高となっています。

創業者向けの助成金などを上手に活用しよう

この数字からも負債額が少なければ、社長をはじめ役員が個人のお金を資金に回して乗り切ることも可能です。また創業したばかりの会社やベンチャー企業に向けた助成金もあります。これらを上手に活用していけば、債務超過の危機を回避できる可能性は高まります。

日常的に財務の安全性をチェックすること

倒産を未然に防ぐ債務超過の目安についてはすでにお伝えしましたが、ここでは財務の安全性・健全性を分析するための安全性分析について説明します。

安全性分析は倒産リスクを評価するための手法

「安全性分析」とは企業が倒産しないか、そのリスクを評価するための手法の総称のことです。決算書によってその会社の資産内容などをチェックし、支払能力があるかどうかを把握するための分析です。

安全性分析は「流動性分析」とも呼ばれ、「短期安全性」と「長期安全性」の2つの視点から判断します。

短期支払能力を示す「短期安全性」

「短期安全性」とは、その企業の現在の資金繰り状態を見るための指標で、短期の支払能力を表します。これにより事業を行うために必要となる資金が十分に用意されているかどうかを見ます。短期支払能力は、「流動比率」「当座比率」をメインの指標とします。

流動比率は120~140%なら健全

流動比率の計算式は以下となります。

【流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100】

流動資産…現金や預金、商品、売掛金など1年以内に現金化できる資産のこと。
流動負債…買掛金や支払手形、短期借入金など1年以内に支払期日がやってくる債務のこと。

流動比率は、100%を下回ると流動資産よりも流動負債のほうが多いということになり支払能力が懸念されます。理想は200%とされていますが、120~140%であれば健全といえます。

当座比率は100%以上であれば健全

当座比率の計算式は以下となります。

【当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100】

当座資産…現金や預金、売掛金など換金が安易にできる資産のこと。

比率は高いほど安全とはされていますが、流動比率よりも厳密に支払能力を分析できる指標で、理想は100%とされています。

長期支払能力を示す「長期安全性」

「長期安全性」とは、その企業の将来の倒産リスクを見るための指標で、長期の支払能力を表します。長期支払能力は、「自己資本比率」「固定長期適合率」「固定比率」を指標とします。

自己資本比率は40%以上なら倒産リスクが低い

自己資本比率の計算式は以下となります。

【自己資本比率(%)=株主資本÷総資本×100】

株主資本…自己資本のことで第三者に返済の必要がない資本のこと。
総資本…負債と純資産の合計のこと。

40%以上なら倒産のリスクが低く、この割合が高いほど安定経営ができていることになります。

固定比率は100%以下なら安全

固定比率の計算式は以下となります。

【固定比率(%)=固定資産÷株主資本×100】

固定資産…不動産や設備、長期貸付金など長期にわたり使用するもののこと。

固定比率は、固定資産がどの程度、自己資本でカバーできるかを表す指標です。安全とされる割合は業種業界によっても異なりますが、100%以下であれば安全性が高いといえます。

固定長期適合率も100%以下なら安全

固定長期適合率の計算式は以下となります。

【固定長期適合率(%)=固定資産÷(固定負債+自己資本)×100】

固定負債…社債や長期借入金、退職給付引当金など1年以上先に支払期日がやってくる債務のこと。

不動産など固定資産に投資したお金のうち、短期的に返済が必要のないお金(純資産・株主資本)でどこまで賄えるかを表した指標です。固定比率と同じく業種業界によっても比率は異なりますが、100%以下であれば安全性が高いといえます。

債務超過後で起こる可能性がある3つのこと

債務超過になるどのようなことが起きるのでしょうか。以下のようなことが考えられます。

銀行からの融資が受けにくくなる

債務超過後に起こることのひとつが、銀行の融資が受けにくくなることです。その理由は「回収できるかどうか」で判断するからです。回収が難しいと判断すれば融資は通りません。銀行が判断材料にするポイントのひとつが「いつ頃に債務超過が解消するか?」です。

1年以内に債務超過を解消できるかがポイント

たとえば、大口取引先からの売掛金が回収できず債務超過になりました。1年後には回収でき純資産がプラスに転じる見込みです。この状態であれば銀行は正常と判断するでしょう。
以下が目安となります。

(1) 債務超過から1年以内…正常
(2) 債務超過から3年以内…要注意
(3) 債務超過から5年超…破綻の可能性あり

上場廃止の可能性がある

上場企業の場合、債務超過によって「上場廃止」の可能性が出てきます。上場廃止の基準は、マザーズやJASDAQ、東京証券取引所といった市場によって違ってきますが一例をあげてみます。

(1) 株主数が400人未満になった
(2) 流通株式数が2,000単位未満になった
(3) 時価総額が10億円未満になった
(4) 流通株式比率が5%未満になった
(5) 最近1年間の月平均売買高が10単位未満だった

M&A関連や債務超過などが上場廃止理由

確かに株主数や時価総額、流通株式数などは市場によって異なりますが、債務超過に関しては「1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき」となっています。

上場廃止の理由でもっとも多いのはM&A関連だといわれていますが、債務超過も上場廃止に大きく影響しているといえます。M&Aについては後程説明します。

倒産の可能性が高まる

債務超過の状態であっても、運転資金があればすぐに倒産にはならないとお伝えしました。しかし、手元に現金がなく、銀行からの融資も断られてしまえば倒産の可能性が高まります。

上場企業であれば「増資」という方法で危機を乗り越えることも可能です。しかし上場廃止ともなれば増資は難しく、会社の信用も失い資金調達はさらに難しくなります。結果、倒産のリスクはますます高くなるというわけです。

債務超過を解消する5つの方法

次に倒産の危機を回避し債務超過を解消するための5つの方法について説明します。

1.赤字体質を改善し「利益」を増やす

もっともスタンダードな解消方法が「利益」を増やすことです。利益が出れば負債を返していく見通しも立ちます。利益が一定以上出せれば、純資産を増やすことにもなります。

債務超過の状態からいきなり利益を上げるのは簡単なことではありません。むしろ新商品を出したり、広告にお金をかけて売上アップを図ったりするよりも、赤字体質を改善し黒字体質へと生まれ変わることが先決です。

「出ていくお金を減らす=コスト削減」で体質を改善

利益を増やす方法として売上を伸ばす=収益を増やすことも大切ですが、「出ていくお金」を減らすことも重要です。減らした経費=純利益です。コスト削減は赤字体質の改善につながります。

具体的なコスト削減として役員報酬の見直しがあります。経営悪化を招いた役員の報酬を減らすというのは、少なからず苦しい中でがんばっている社員たちのモチベーションアップにもなるはずです。

むしろ負債を返し終えるまでは無報酬にするぐらいの姿勢を見せることで、社員たちからすれば「俺たちもがんばろう」という気持ちにさせてくれます。

顧客へのしわ寄せや会社の信用を失わないようにする

人員削減も大幅なコストカットにはなりますが、社員たちのモチベーションは確実にダウンします。それならば残業を減らすほうが得策でしょう。時間内で終わるよう仕事のやり方を見直すよい機会になります。残業代がつかないサービス残業も、この際ですから廃止すれば社員の士気も高まります。

広いオフィスの場合、1カ月の電気代も馬鹿になりません。夏はクーラー、冬は暖房、今は社員全員がPCを使う時代、電気は照明以外にもたくさん使われています。

他にも製造原価を下げるなどのコスト削減方法もありますが、それにより商品やサービスの質が低下してしまっては元の子もありません。将来的なことも考え、次のようなことにならないよう気をつけましょう。

(1) 社員のモチベーションが下がる
(2) 顧客や取引先にしわ寄せがいく
(3) 会社の信用や安全を失う

2.「増資」で資本金を増やす

2つ目の解消方法が「増資」です。増資には2つのやり方があります。

(1) 新株の発行
新株を発行することで純資産が増加し、実質的な増資になります。

(2) 資本準備金を資本に組み入れる
資本準備金を資本に組み入れることで、形式的な増資にはなりますが純資産は増えません。

増資はあくまでも一時的な対処法にすぎない

新株発行といっても、債務超過の状態で出資してくれる人は少ないはずです。まずは社長や役員、その家族などで個人資産がある人からの増資を考えてみましょう。

最近は第3者割当といって一般投資家に出資してもらう中小企業も増えていますので、ひとつの方法として検討してみるのもおすすめです。

ただし、これらの増資はあくまでも応急処置にすぎません。資本準備金を資本に組み入れる場合も、原因を調査し改善を同時に行っていかなければ、またすぐに債務超過に逆戻りしますので注意が必要です。

3.返済をあきらめて「DES」で資本を増やす

3つ目の解消法が「DES(デス)」です。DESとはDebt Equity Swap(デット・エクイティ・スワップ)の略で、債務と株式を交換する「債務の株式化」のことです。

「債務」が減り「資本」が増えるのが魅力

DESの魅力は「債務」が減り「資本」が増えることです。金融機関が赤字の取引先を支援する目的で利用されることが多いのですが、最近では企業再生ファンドの利用も増えてきています。役員借入金の返済をあきらめてDESにすることもできます。

4.「M&A」で会社を手放すことで負債を返す

4つ目の解消法が「M&A」です。M&AとはMergers & Acquisitions(マージャーズ・アンド・アクイジションズ)の略で、企業の合併(M)+買収(A)のことです。

合併は2つ以上の企業が統合されること。買収は別の企業が経営権を握る目的で株を取得することです。合併・買収と一口にいっても、会社全体を買収してもらう方法もありますし、子会社となって資金を投入してもらう方法もあります。

5.ファクタリングで「資金調達」する

5つ目の解消法が「ファクタリング」です。ファクタリングとは、売掛金や受取手形などの債権を買い取ってもらう(売却)ことです。

銀行より審査が通りやすく早ければ即日現金化

ファクタリングを専門に行う会社が買い取ってくれます。手数料が引かれるため本来手にするべき金額よりは少なくなります。しかし、ファクタリングは資金繰りに苦しむ企業にとってたくさんのメリットがあります。

≪ファクタリングのメリット≫
(1) 銀行の融資よりも審査が通りやすい
(2) 担保や保証人がなくても利用できる
(3) 早ければ即日現金化できる
(4) 信用情報に傷がつかない
(5) 取引先の倒産を心配しなくてもよい

スカイマークなど債務超過になった事例

実際に債務超過になり、民事再生や自己破産などをした事例を4社ご紹介します。

負債総額約109億円の「ビットマスター」

2012年にカナダ・バンクーバー本社が設立され、2017年に日本法人が設立された「株式会社ビットマスター」。前身は印鑑や家庭用浄水器などの訪問販売を主とする「ゆいの会」。

「ゆいの会」で会員制サービス提供を手掛けていたこともあり、2017年に仮想通貨事業を展開し会員をメインに販売。相場上昇によりビットコインの調達が困難となり、2019年11月に自己破産を申請しました。

資本金:2,000万円
負債総額:109億4,439万円

負債総額約710億円の「スカイマーク」

1996年に「スカイマークエアラインズ」として設立された「スカイマーク株式会社」。1986年から始まった航空輸送業における規制緩和により新規参入した航空会社の第1号。

格安運賃でJALやANAに対抗し上場まで果たしたものの、「LCC」との競争で経営が悪化。2015年1月に民事再生法の適用を申請。同年9月に180億円の出資を受け新体制で再スタートしました。

資本金:141億8,673万3,000円
負債総額:710億8,800万円

負債総額約4,480億円の「エルピーダメモリ」

NECと日立製作所が出資を折半し、1999年に「NEC日立メモリ」として設立。翌年「エルピーダメモリ」に変更。2004年に東証1部上場。世界第3位の半導体DRAMメーカー。

資金調達の失敗により2012年2月に会社更生法の適用を申請。当時、製造業では過去最大の負債総額と言われていました。2013年にマイクロン・テクノロジの子会社となりました。

資本金:2,361億4,313万円
負債総額:4,480億3,300万円

負債総額約82億の「三菱農機」

1945年に「佐藤造機」として設立された「三菱農機株式会社」。本社は島根県松江市です。トラクターなど農業機械全般を開発・製造・販売。前身の「サトー」は1914年創業の老舗メーカー。

東日本大震災により東北の販売拠点が被害を受け、2011年3月期に最終赤字38億円を計上。同年12月に三菱重工業株式会社の子会社となりました。

資本金:393億7,900万円
負債総額:246億200万円

債務超過を解決する民事再生と会社更生

債務超過の事例でも出てきた「民事再生」と「会社更生」についてお話します。

大手企業は会社更生、個人や中小企業は民事再生

大手企業ならば会社更生、中小企業や個人であれば民事再生と分かれます。学校法人や医療法人も民事再生です。個人の場合は、民事再生ではなく「個人再生」と呼びます。

会社更生は債権者数も多く、債権額も大きいため手続きが完了するまでにはかなりの時間がかかるのが特徴です。一方、民事再生は早ければ半年、長くても1年とスピーティーなのが特徴です。

経営陣がタッチするかどうかが両者の大きな違い

どちらも「再建」のための手続きですが、一番の違いは経営者がタッチするかどうかです。民事再生であれば経営陣はそのままですが、会社更生の場合、経営陣はすべて退陣。裁判所が選んだ「更生管財人」が財産の処分や経営を代わりに行います。

管財人は弁護士です。どちらの手続きも法律が絡んできますので、個人で民事再生(個人再生)する場合も弁護士に依頼したほうがスムーズです。

民事再生と会社更生について以下にまとめました。

≪民事再生≫

  • 対象:個人、事業主、中小企業(規模は問わず)
  • 手続きにかかる期間:半年~1年
  • 弁済期間:最長10年
  • 経営陣:そのまま
  • 財産や経営の管理:経営者
  • 株主の権利:そのまま

≪会社更生≫

  • 対象:株式会社
  • 手続きにかかる期間:1年~数年
  • 弁済期間:最長15年
  • 経営陣:退陣
  • 財産や経営の管理:管財人
  • 株主の権利:喪失(100%原資)

難しい法律用語や財務用語などが出てきてわかりにくかったかもしれません。債務超過と赤字は違うが、赤字が続けば債務超過になり倒産のリスクは高まります。

大切なのは個人でも企業でも、債務超過を招かないよう日頃からお金の管理をしっかりと行い、将来のキャッシュフローを確保することです。

一概に借金が悪いわけではありません。返せれば問題はないのですから。大切なのは「予防に勝る治療なし」といわれるように借金を作らないようにすること。借りる場合は計画的に借りることです。

万一借金が膨らんでしまったら、返済が難しくなる前に手を打つことが重要です。困ったら一人で悩まず、法律のプロに相談しましょう。

返さなくていい借金と返すべき借金とは

債務超過についてさまざまな角度からお話してきました。債務超過は借金(負債)が資産を超えてしまうこと。ここでは、返さなくてもいい借金と返すべき借金についてざっくりですが説明しておきます。

親子だから借金も返さなくていい?

「返さなくていい借金なんかあるの?」

そう思われる人のほうが多いはずですが、返さなくていい借金は現実に存在します。たとえば、子どもが「出世払い」「余裕ができたら」という名目で親から借りる場合です。すべての人が返さないわけではありませんが、貸した親のほうも返してもらうことなどあまり期待はしていないでしょう。

「貸して」と言葉に出して借りることもあれば、子どもに家を建てる相談などされると親のほうから「頭金ぐらい出すよ」などと甘い言葉を投げかけてしまう親もいるでしょう。何かあれば親がお金を貸し、返済を求めることもなければ、子ども側からすれば「借金」という感覚は薄いでしょう。

この状態は子世帯の家計にとって「収入<支出」になっているはずです。しかし、親が気軽に援助してしまうため、本来であれば赤字家計であることに気づいていない可能性があります。

返済能力以上に貸し出す金融業者

甘い言葉は親子間だけではありません。日弁連の調査によれば、年収の3倍以上のお金を貸したり、収入がない人にお金を貸したりする金融業者が存在します。

常、クレジットカードを作ったりカードローンを組む際には審査があります。返済能力を判断して審査を通しているのであれば、年収の3倍や無職の人に100万円以上もの貸付をするなどあり得ません。まさに甘い蜜で虫をおびき寄せる食虫植物のようです。

払いすぎて「過払い金」は返さなくていい借金

少し極端な例でしたが、これらは金銭感覚のマヒともいえ「多重債務」につながりやすいのです注意が必要です。

親からの援助は、ある意味、返さなくていい借金ではありますが、通常、借金は返すのが基本であり、返すべき借金です。返さなくていい借金があるとすれば「過払い金」ではないでしょうか。

厳密にいえば、過払い金は払い過ぎていた利息に対して使う言葉です。借金というよりも、借金をしたことで払い過ぎてしまった利息分ということになります。また、借金にも時効があり、時効を過ぎてしまった借金も返す必要がない借金となります。

「かなり前に借入して、いまだに返済している」
「今は完済はしたけど、10年ぐらい返済していた」

このような場合、過払い金が発生している可能性があります。債務超過に苦しむ個人のかたはたくさんいます。一人で悩まず、まずは弁護士に相談してみましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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