自己破産

自己破産は財産をすべて失う?財産を残すには?

自己破産は、借金を帳消しにできる反面、すべての財産を失うと思われがちです。実際は失う財産はありますが、手元に残せる財産も定められており、全くの無一文になる手段ではありません。自己破産を検討している方にとって、どの財産が失われ、残せるのかを知っておく必要があります。

本記事では、自己破産における財産の取り扱いについて、失う財産・手元に残せる財産や財産処分を免れる方法などを解説します。財産を残せる別の債務整理もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

自己破産は財産を処分して返済に充当する債務整理

自己破産は、財産を失う代わりに、一切の返済義務を免除される債務整理と捉えています。実際は、財産をただ失うのではなく、財産を処分することによって、債権者に対する返済を行っているのです。

自己破産に陥る前提として、債権者に返済できない状況になっており、お金だけでは支払えなくなっているでしょう。そこで自己破産することによって、住宅や自動車、預金、保険などの財産を回収して生まれたお金が返済に充当されています。

結果として定められた財産を失う形になるので、債務整理の中でも最終手段と言えます。任意整理や特定調停などの借金減額を実現する債務整理でも支払えなくなった時に、救済する方法と位置付けられています。

ここまで見ると、自己破産は借金がなくなるものの、何もない状態になるとネガティブなイメージを抱くかもしれません。次の項目から詳しく解説しますが、手元の残せる財産も決められているので、無一文になることはありません。借金がなくなり、一定の財産を持って再スタートすることができます。借金生活から抜け出したい、精神的ストレスから解放されたい、人生を再スタートさせたいという場合に、自己破産は有効な手段です。

自己破産で失う財産・手元に残せる財産

自己破産をすると一切の財産を失うと思いがちですが、そうではありません。返済に充当するために回収されてしまう財産ももちろんありますが、手元に残せる財産も定められています。自己破産で失う財産・手元に残せる財産を説明していきます。

失う財産:高額財産は処分される

自己破産で失う財産は、返済に充当するための価値がある財産です。具体的には、財産の中でも価値が高く、住宅や自動車などが該当します。

住宅については、住宅の価値やローンを完済しているなどの状況に関わらず、処分されてしまう場合がほとんどです。住宅ローンが残っている場合は、ローン会社に所有権があるので、ローン会社によって処分されてしまいます。持ち家ではなく、賃貸住宅に住んでいるなら、住宅そのものが処分されることはありませんが、家賃を滞納していれば強制退去になる可能性が高いです。

自動車は、中古車市場において20万円以上の価値があると処分対象になります。自動車ローンが残っている場合も処分対象で、住宅と同じく、所有者がローン会社にあるので、ローン会社によって換価されてしまいます。

ただし、自動車は手元に残せる場合もあります。中古車市場における価値が20万円以下であれば、十分なお金に換価できないと見なされ、手元に残すことができます。また、価値に関わらず、生活に自動車が必要不可欠な状態であれば、所有を許可されるかもしれません。地域柄自動車がないと生活や仕事に支障が出る場合、子どもの送り迎えや親の介護などで自動車が必要な場合などは、自動車を維持できる可能性が高いです。

手元に残せる財産:自由財産は維持できる

自己破産では、高価な財産は失う可能性が高いですが、手元に残せる財産が破産法によって規定されています。手元に残せる財産を「自由財産」と言い、以下の5つに分類されます。

・新得財産 ・差押禁止財産 ・99万円以下の現金 ・自由財産の拡張がされた財産 ・破産財団が放棄した財産

「自己破産をした後の財産も返済に充てられるのでは?」と思いがちですが、自己破産後に取得した財産は新得財産と認められ、処分の対象となりません。極端な例で言えば、自己破産後すぐに住宅や自動車を購入しても所有することができます。

2つ目の自由財産である差押禁止財産は、貸金業者から返済のためにする強制執行を行えない財産です。具体的には、家具・家電などの生活必需品が差押禁止財産に当てはまります。そのため、住宅を処分されてしまったとしても、生活必需品は残るので、何もない状態で生活を始めることにはなりません。ただし、家具・家電をローンで買っていて返済が残っている場合は、ローン会社に引き揚げられてしまうので注意が必要です。

一文無しになってしまうと捉えがちな自己破産ですが、99万円以下の現金は手元に残ります。99万円以下の現金が差押禁止財産に含まれているからであって、最低限の生活費は守られます。

自由財産の範囲を超える財産は、処分対象になってしまいますが、必ず処分されてしまうわけではありません。自由財産の拡張という、自由財産ではないものの処分を免れる申し立てが許可されれば、処分されず維持できます。

ただし、自由財産の拡張を認めるかどうかは裁判所や破産管財人が判断するので、認められない場合もあります。裁判所によって判断が異なり、必ずしも事例通りに自由財産が拡張されるとは限りません。良い方向に裁判所の判断が働くこともあり、寛容な裁判所であれば生命保険や学資保険などの維持が認められた事例もあるようです。

最後に、破産財団が放棄した財産についてですが、通常回収された財産は換価され、債権者への返済に充当されます。破産管財人が換価せずに放棄した財産は、自由財産と扱われ、手元に残せる場合があります。自由財産の拡張と同じく、裁判所と破産管財人が判断するので、必ず手元に残せると限らないことを理解しておきましょう。

自己破産で処分対象になる財産には保険や預金なども含まれる

自己破産で処分対象になる財産は、住宅や自動車など形のある財産だけではありません。生命保険や学資保険などの保険財産、預金なども対象です。それぞれの財産について、自己破産でどのように取り扱われるか解説していきます。

保険

万が一のための生命保険や子どもの将来のための学資保険などをかけている方が多いでしょう。自己破産において、解約返戻金が20万円以上ある保険は処分対象と定められています。解約返戻金とは、保険を解約することによって、戻ってくるお金のことで、自己破産における財産と見なされます。解約返戻金が20万円未満の保険であれば、維持できることになります。

複数の保険をかけていて、ひとつひとつの保険の解約返戻金が20万円以下でも、合計して20万円以上になってしまうと、すべての保険の解約が求められます。解約返戻金は、契約期間や保険料などによって契約者それぞれなので、自己破産をする前に算出しておきましょう。

預金

現金と預金は別の扱いになります。預金は、20万円以下であれば自由財産として扱われるので、現金とは別に残すことができます。しかし20万円を超える預金になると、自由財産ではなく、自己破産の処分対象となります。口座を解約し、換価処分しなければなりません。

預金を複数口座に分けている方もいるでしょう。その場合、保険と同様に、複数口座にある預金を合計した金額が判断基準となるので、合計20万円を超えていたらすべての口座を解約する必要があります。

有価証券

株券やゴルフ会員券などの有価証券は、自由財産には含まれません。所有されている有価証券は、換価処分され債権者への返済に充てられます。

自己破産による財産処分を免れる方法

自己破産による財産処分は、基本的に自由財産でない限りは免れることは難しいです。ただ、自由財産の拡張などの制度を活用すれば、手放したくない財産を守れるかもしれません。自己破産による財産処分を免れる方法を3つご紹介します。

自由財産の拡張を申し立てる

自由財産ではない財産を維持したい場合には、自由財産の拡張を申し立てて許可されることで、財産処分を免れることができます。自由財産の拡張を認められる基準としては、債務者の生活に欠かせないものかどうかが重要です。例えば、現在病気を患っていて医療保険をかけている場合、保険を解約してしまうと医療費を払えない可能性があるので、拡張が認められるでしょう。

自由財産の拡張を申し立てるためには、裁判所に自由財産拡張申立書を提出する必要があります。申立書を参考に、裁判所が拡張の基準を満たしているかを判断し、許可された場合に自由財産と認められます。申し立ての時期は、原則自己破産手続き開始決定の確定日から1ヵ月を経過するまでとされています。実際は裁判所によって期間を延ばすことができるので、債務者のタイミングで申請できます。自己破産手続きを円滑に終結させるなら、早めの申請がおすすめです。

保険などは契約者貸付制度を活用する

生命保険や学資保険などの保険は、契約者貸付制度を付帯している場合があります。契約者貸付制度とは、保険を担保に入れることによって解約返戻金に応じたお金を借りられる制度です。

自由財産と認められる保険は、解約返戻金20万円以上ある保険なので、20万円以下になるように現金に換えることで保険の解約を免れることができます。注意点として、契約者貸付制度を利用するタイミングが自己破産直前だと財産隠しを疑われるかもしれません。最悪の場合、自己破産が失敗に終わるリスクがあるので、弁護士に依頼して行うのが安全な方法です。

第三者に返済・購入してもらう

住宅や自動車などの財産は手放してしまうと、生活や仕事に支障をきたすので、できれば手元に残したい財産です。原則換価処分されてしまう財産ですが、第三者に所有権が移れば自分の財産ではなくなり、回収されずに済みます。

住宅・自動車ローンが残っている場合は第三者にローンを完済してもらう、支払いが済んでいないものは第三者に買い取ってもらうことができれば、財産を維持できます。住宅や自動車などを再度利用するには、第三者から購入する・借りる必要があるので、十分に相談して力を借りましょう。

自己破産による財産処分で注意したいポイント

自己破産で財産処分されることは避けられませんが、できる限り財産を残したいのは本音でしょう。故意に自己破産を避けようと財産隠しなどをしてしまうと、自己破産自体が失敗しかねないので注意が必要です。自己破産での財産の取り扱いで注意したいポイントをご紹介します。

財産隠しが知られると自己破産が認められない

「この財産は絶対に残しておきたい」と考え、財産隠しをしてしまうのは非常に危険です。そもそも財産隠しをしても、何らかの記録が残っており、自己破産手続きの過程で徹底的に調査されるので隠し通すことはできないでしょう。財産隠しをしてバレてしまったら、免責不許可事由に該当するので、自己破産が失敗に終わってしまいます。

自己破産が失敗に終わるだけではありません。財産隠しは「詐欺破産罪」という立派な罪です。詐欺破産罪は、財産を不正に処分・隠ぺいして債権者を害した時に問われる罪で、1ヵ月以上10年以下の懲役または、1,000万円以下の罰金が課され、場合によっては両方が課されることもあります。自己破産で再出発できないどころか、さらに負債を抱えたり、懲役を受けたりするので、財産隠しは絶対にしてはいけません。

財産を勝手に処分することも免責不許可につながる

自己破産前に財産を勝手に処分してしまうのも、自己破産の失敗につながるおそれがあります。財産を処分して得たお金の使い道が浪費であれば、免責不許可事由に該当するかもしれません。また、一部の債権者に返済を行ってしまうと偏頗弁済に該当し、こちらも免責不許可事由になりかねません。

自己破産手続きが始まってから発覚した場合、否認権を行使される可能性があります。否認権を行使されると、勝手に処分された財産に関わる取引は無効になり、自己破産手続き内で改めて売買が行われます。

自己破産以外の財産を維持できる債務整理を検討しよう

自己破産では、すべての財産を守ることは難しいので、財産を残したいなら別の債務整理を検討する必要があります。任意整理・特定調停・個人再生それぞれにおける財産の取り扱いをご紹介します。

任意整理

任意整理とは、裁判所を介さずに債権者と交渉することで、借金の減額や返済方法の調整を図る方法です。借金を全額帳消しすることはできないものの、残せる財産は多くあります。現金や預金といったお金はもちろん、住宅や自動車、保険、有価証券などの財産を残すことができます。ただし、残せる財産の所有者が債務者でなければいけないので、ローン支払いが残っている場合は処分対象となります。

また、任意整理の特徴として、整理したい債務者を選ぶことができます。住宅や自動車など残したい財産の債権者を避ければ、処分されず財産を維持可能です。

特定調停

特定調停は、任意整理と同じく、借金減額・返済方法の調整を図る手段ですが、裁判所に仲介してもらい債権者との和解を図ります。任意整理と財産の取り扱いも共通していて、債務者本人が所有している現金や住宅、自動車などの財産を残すことができます。

個人再生

個人再生とは、裁判所に申し立てを行うことで、再生計画認可決定をもらい、借金の減額を実現する方法です。個人再生で残せる財産は、個人再生によって減額された借金総額の範囲内と定められています。減額の範囲内であれば、所有している現金や保険、有価証券などを残せます。

住宅については、住宅資金特別条項が制度として備わっています。本人所有や抵当権が設定されているなどの条件を満たせば、住宅を残して返済を続けることができます。

まとめ

今回は、自己破産による財産の取り扱いについて詳しく解説しました。

自己破産をすると、住宅や自動車などの高価な財産は原則換価処分されてしまいます。他にも預金や有価証券、保険なども価値によっては処分対象に含まれます。自由財産と認められている財産については、手元に残すことができるので、財産が何もない状態にはなりません。また、財産を残して債務整理するなら、任意整理や特定調停、個人再生なら財産を処分せずに済む可能性が高いです。財産隠しや勝手な処分をせずに財産の取り扱いに注意しながら、自己破産手続きを進めましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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