自己破産

自己破産による職業制限とは?仕事への影響はある?

自己破産には、借金がゼロになるポジティブなイメージよりも、財産を失うなどネガティブなイメージも強いです。ネガティブなイメージの中には現在の仕事と続けられるのか、これからの仕事に影響しないかというイメージもあるでしょう。

本記事では、自己破産における職業制限について、制限される仕事・されない仕事や現在の勤務先での扱いなどを詳しく解説します。職業制限のない任意整理と個人再生についても解説するのでぜひ参考にしてみてください。

目次

自己破産における職業制限とは

自己破産をすると、一部の職業を制限されてしまいます。一部の職業の欠格事由に破産手続きを行っていることが含まれているからで、自己破産を終結し復権するまでの間、職業を制限されます。破産者であることが職業制限がかかる条件なので、まず自己破産の流れを見ていきましょう。

  • 自己破産の申し立て
  • 破産手続き開始決定
  • 免責審尋
  • 免責許可の決定
  • 復権

自己破産の申し立て時点では、まだ手続きは始まっていないので破産者ではありません。破産手続きが始まったはじめて破産者と扱われ、免責するかどうかの協議を経て、免責の許可が決定するまでは破産者です。免責の許可を得て、制限されていた職業に登録しなおすことで復権となり、制限を解かれます。

破産手続き開始から免責許可決定までの期間は、自己破産者ごとに異なります。2~3ヵ月で復権できることもあれば、住宅の売買などが絡み、1年以上かかることもあります。

自己破産において、免責が許可される事例は全体の約95%以上と言われており、ほとんどが前述したタイミングで制限が解かれることになります。

ただ、免責が不許可になっても復権する場合があり、免責不許可から10年を経過すれば復権します。他にも、免責を得られず返済を続けてすべての債務がなくなった時や破産手続きを廃止した時にも復権するので、職業制限は適用されません。免責が不許可になる条件を下記の表にまとめましたので、念のため確認しておきましょう。

免責不許可事由 内容
財産隠し 財産の回収を免れようと故意に隠すこと
換金行為 財産を勝手に売却し換金してしまうこと
偏頗弁済 特定の債権者にのみ返済を行うこと
ギャンブルや浪費 ギャンブルや浪費が原因の借金は自己破産できない
虚偽報告 帳簿や名簿を偽って報告すること
詐欺行為 詐欺的行為で欺くこと

自己破産によって職業制限される仕事・されない仕事

自己破産によって職業制限される仕事には、士業や団体企業などが該当します。該当されると思われがちですが制限されない仕事もあるので、復権まで制限される仕事と制限されない仕事の両方を確認していきましょう。

復権まで制限される仕事

破産手続き開始から免責許可まで制限される仕事は、士業や一部の公務員、団体企業、その他指定された業種に分かれます。制限される仕事は多岐に渡り、すべてを紹介できませんが下記の表にまとめましたので、あらかじめ確認しておきましょう。

制限される職種 具体的な仕事名
士業 弁護士・弁理士・司法書士・行政書士・税理士・通関士・宅地建物取引士・公認会計士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・中小企業診断士・社会保険労務士 など
一部の公務員 公証人・人事官・都道府県公安委員会・公正取引委員会・教育委員会 など
団体企業 商工会議所・信用金庫・日本銀行 など
その他の職種 質屋・貸金業者・旅行業務取扱管理者、登録者・生命保険募集人・警備員・警備責任者・建設業・風俗業管理者・調教師・騎手 など

職業制限されず普段通り働ける仕事

職業制限される仕事は、士業や公務員、旅行業務取扱管理者など、他の人のために何かを提案したり、ものを売ったりするなど、信用が大切な仕事が多く含まれています。

一見、信用が大切で職業制限されるような仕事として、保育士・社会福祉士・介護福祉士・消防士などが「士」がつく職種も含まれます。他にも、医師や教員なども職業制限の対象外です。

以前は職業制限に対象だった職種には、企業の取締役・監査役が含まれていました。現在は職業制限にかかりませんが、委任契約が切れることで一度取締役から退く形にはなります。改めて取締役に選任されれば、自己破産手続き中であっても取締役に戻ることは可能です。

制限されない職種 保育士・社会福祉士・介護福祉士・消防士・医師・教員・企業の取締役・企業の監査役

一般的な職業はほとんど制限されない

士業や一部の公務員、一定の職種では職業制限されてしまいますが、医師や保育士、教員などの職種には制限がかからず、多くの職業は普段通り続けられます。制限に当てはまらない人にとっては、ほとんど影響はありません。

自己破産には、その他のデメリットもありますが、職業制限におけるデメリットはなくなりますね。

私法上の資格も制限される

自己破産で制限されるのは、職業だけではありません。民法の規定によって定められている欠格事由にあてはまる私法上の資格も制限されます。後見人など財産の管理に関わるので、職業制限と合わせて理解しておきましょう。

私法上の資格 役割
後見人 判断能力のない人に代わって財産の管理をする
後見監督人 後見人を監督する
保佐人 判断能力がとても不十分な人に代わって財産の管理をする
補助人 判断能力が不十分な人に代わって財産の管理をする
遺言執行者 遺言の通り相続を処理する

自己破産の職業制限における勤務先での扱い

自己破産において特定の職業に制限を受けますが、既に勤務している場合はどのように扱われるのでしょうか?職業制限の対象になる職業とそうではない職業に分けて、どのように扱われるのかをご紹介します。

職業制限の対象になる職業なら要注意

職業制限の対象になる職種に就いている方は、自己破産が終結し復権するまで、その仕事を続けることができません。復権するまで他の部署に異動するか、求職を申し出るかなどの選択肢があり、転職するのも一つの方法でしょう。

もし自己破産している事実を隠して働き続け、後から発覚すれば解雇する正当な理由となります。通常、自己破産をした事実が会社に通知されることはありませんが、職種によっては官報をチェックしている場合があります。官報とは、国の機関紙であり、記載項目のひとつに裁判所が行った各種手続きが含まれており、自己破産者の個人情報が掲載されます。直近30日分の官報であれば、インターネット版官報で気軽に見られるので、バレるかもしれません。不動産業や金融業、保険関係などは官報を見る機会が多く、隠しきることはできないでしょう。

また復権した後の就業にも注意が必要です。職業制限を受けると、資格はなくなりませんが、登録を抹消しなければいけません。復権後、再登録することになりますが、すぐに自己破産前のように働けない場合もあるでしょう。士業などは信用が欠かせないので、自己破産をしたことが知れると、信用を失い、仕事に影響が出るおそれがあります。

自己破産を理由に解雇することは不当解雇に該当する

職業制限の対象では職種に就いている方には、仕事で影響を受けることはありません。もし官報などで会社にバレたとしても、自己破産を理由にした解雇は不当解雇に該当するので、違法な解雇となります。

自己破産が原因で仕事を失うことはないので、自ら転職を考えなくても、現在の勤務先で安定した収入を目指すことができます。

自己破産の職業制限において考えられる対策

自己破産で職業制限の対象となる職種に従事していると、破産手続き中は働くことができないので、あらかじめ対策しておく必要があります。対象ではない職種においても自己破産した時事実を知られないためには対策が必要です。自己破産における職業制限への対策を見ていきましょう。

会社にあらかじめ報告し転属・休職を申し出る

職業制限を受けている間は、該当する職種に就くことはできません。債務者本人が転属や転職、休職などを判断することになりますが、自己破産してからではなく、あらかじめ報告するようにしましょう。

破産者になってからは当然働くことができないので、そのまま働いてしまうと違法になります。報告するタイミングを逃し、後から発覚したならば、自己破産が正当な解雇理由となり、職を失うリスクもあります。

自己破産を検討している段階で報告しておけば、勤務先によっては配慮してくれる場合も多いです。資格を必要としない部署への転属や復権までの休職を了承してくれるかもしれません。

自己破産をすると、現在の仕事を辞めなければならないと考えている方もいるでしょう。すぐに退職する必要はないので、まずは報告・相談して破産者になっている期間の扱いを決めることが大切です。

給与の振込先を別の口座に切り替えておく

自己破産は職業制限を受けるだけでなく、債権者へ返済を行うために、財産を回収・換価処分し分配します。預金も財産に含まれ、20万円以上の預金は処分対象です。もし、銀行からお金を借り入れていたら、銀行口座は凍結され、口座残高と借金を相殺することになります。

破産手続き上、債権者に申し出る旨の通知を送るため、借入をしている銀行にも自己破産したことを知られます。この場合、銀行は口座を即座に凍結するので、口座に対して入金はもちろん、入金もできなくなることがほとんどです。

そこで、勤務先の給料日が来て振り込もうとしても、口座が凍結されているために給与振り込みがエラーになります。すぐさま自己破産とわかることはないですが、何らかのトラブルを抱えていることは伝わってしまいます。事情を話すことになり、自己破産した事実を知られるでしょう。

会社に自己破産をした事実をどうしても知られたくないなら、口座が凍結される前に、給料の振込先を借入していない銀行に変更しておきましょう。すると、口座凍結が原因でバレることがなくなるので、自己破産したことがバレにくくなります。

職業制限を避けるなら自己破産以外の債務整理を検討しよう

自己破産をすると職業制限が適用されますが、任意整理や個人再生を選択すれば、仕事への影響はありません。自己破産と手続きの内容が異なるので、任意整理と個人再生をそれぞれどのような手続きか解説していきます。

任意整理

任意整理とは、債務者と債権者が交渉して、借金の減額や返済条件の緩和を実現する債務整理の方法です。似ている債務整理に特定調停という方法があり、交渉において簡易裁判所が間に立ちます。任意整理では、弁護士や司法書士に依頼するのが一般的で、裁判所を挟まずに交渉を進められて、スムーズな債務整理を期待できます。また、弁護士や司法書士などの専門家が受任した時点で取り立てがストップするので、苦しい取り立ても速やかに止められるのもメリットです。

借金の減額は、自己破産が債務を帳消しするのに対して、任意整理では利息制限法に基づいて上限金利を超える金利の返済をカットする方法で行われます。他にも、弁護士や司法書士の交渉次第では、将来利息や遅延損害金のカットを実現するので、借金を大幅に減額できる場合もあります。

ただし、借金の元金を減額するのは難しいと言われています。また返済していくことが条件なので、返済しきれないほどの借金があると、任意整理では借金問題の解決は難しいでしょう。

個人再生

個人再生とは、自己破産と同様に裁判所に申し立てる債務整理です。個人再生をするための条件は、借金が5,000万円以内であること、減額後3年間で返済できる継続収入があることを求められます。場合によっては5年間まで延長を認められますが、基本的には3年で返済できる個人再生案を裁判所に提出し、認可を得て、減額後の債務を返済していくことになります。

個人再生の減額幅は、100万円までの減額または借金総額の5分の1までの減額です。例えば500万円の借金を抱えている方が個人再生すると、400万円減額し100万円にまで債務を圧縮できます。

個人再生の特徴は、住宅ローンを残せる特例を利用できることです。自己破産では住宅ローンが残っている場合はもちろん、完済していても換価処分され、債権者に分配されます。個人再生で認められている「住宅資金特別条項」の条件を満たせば、住宅ローンを除外して債務を整理できます。他の債務が圧縮され、住宅ローン返済の負担も軽減されるので、住宅を残して債務整理したい方に最適な方法です。

住宅資金特別条項を利用するには、条件があるので、下記にまとめた条件を確認しておきましょう。

  • 住宅の建設もしくは購入に必要な資金かつ分割払いの債権であること
  • 住宅ローン債権を被担保債権とする抵当権が設定されていること
  • 住宅ローン以外の抵当権設定登記や差押登記がないこと
  • 債務者が所有していること
  • 債務者が居住していること
  • 代位弁済後6ヵ月を経過していないこと

まとめ

本記事では、自己破産における職業制限について解説しました。

自己破産によって職業制限を受ける職種には、士業や一部の公務員、団体企業などが含まれます。一方で、医師や教員、保育士、介護士などは含まれず、その他の一般的な職業も職業選択の対象外です。

職業制限されている職業に就いている場合は、破産手続き中資格を使えなくなるので、転属や求職をあらかじめ申し出るようにしましょう。対象になっていない職業でも会社にバレたくないという方は、給与振込先が凍結されていて知られるを防ぐために、口座を変えておくのがおすすめです。

任意整理と個人再生では職業制限はないので、手続き内容やメリット・デメリットなどを自己破産と比較・検討した上で、最適な方法で債務整理を行いましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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