自己破産

滞納している賃料も自己破産で免責されるの? 強制的な立ち退きの可能性は?

滞納している家賃(賃料)は自己破産で免除されるのでしょうか。

もし免除されるなら、その後、同じ賃貸物件に住めるかどうかも気になりますね。

住めない場合はどのくらいの期間で住めなくなるのか、どのように対処すれば良いかも悩むと思います。

当ページでは、自己破産の仕組みをはじめ、滞納家賃と自己破産の関係についてお伝えします。

現在家賃を滞納していて、自己破産を考えている方は参考にして下さい。

目次

滞納している賃料は自己破産で免除される?

滞納している家賃(賃料)が自己破産で免除されるかどうかが気になりますね。

結論からお伝えすると、滞納家賃も対象になりますので、裁判所から免責を受けることで、支払い義務はなくなります。

まずは自己破産の仕組みから見ていきましょう。

自己破産の仕組み

自己破産は「もう借金返済の見込みがない」という場合に利用できます。

裁判所に「破産申立書」を提出した後、免責が認められれば返済義務がなくなります。

逆に言うと、「免責が認められなければ返済義務は残る」ということです。

免責が許可されない事情を「免責不許可事由」と言いますが、たとえば以下のようなケースですね。

  • ギャンブルによって多額の借金をした場合
  • 株やFX、先物取引、仮想通貨取引などで多額の借金をした場合
  • 財産を隠したり、壊したり、勝手に他人にあげた場合
  • 嘘をついて借金をし、クレジットカードで買い物した場合
  • クレジットカードで商品を購入して低額で現金化した場合
  • 特定の債権者だけに偏った返済を行った場合

常識的に考えて「これでは自己破産できないだろうな」と思う事柄が多いのではないでしょうか。

ただし借金理由が「ギャンブルや投資」という方は少なくありません。

パチンコやスロット、競馬、競輪のようなギャンブルに嵌まったから多額の借金が出来てしまった。

株のデイトレードや仮想通貨に失敗したから多額の借金が出来てしまった。

そのような方は多いはずです。

経済生活の再生の機会の確保

破産法の第1条(目的)には以下のように記されています。

破産法 第1条
この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。

つまり破産手続きの目的は、「銀行や消費者金融のような債権者に対する精算」と共に、債務者(お金を借りた側)の「経済生活の再生の機会の確保」があるわけです。

そのため、免責不許可事由に該当していても、多くのケースで免責が認められています。

パチンコや競馬、投資や浪費が借金の理由でも、よほど悪質でない限り、免責が認められる可能性があるということです。

しかしそもそもは免責不許可事由ですから、弁護士に相談し、打ち合わせを行いながら手続きを進めると良いでしょう。

滞納家賃は非免責債権ではない

免責不許可事由がなければ、免責を受けることで、債務の返済義務はなくなります。

しかし非免責債権と言って、以下のように免責されないものもありますね。

  • 税金
  • 国民健康保険料
  • 年金保険料
  • 婚姻費用
  • 養育費
  • 個人事業主の従業員の給料

上記の中に「滞納している賃料」は含まれないので、自己破産手続きが開始決定する以前の家賃(滞納分)に関しては、免責を受けて支払い義務がなくなります。

尚、開始決定以後に発生する家賃は免責されないので、支払う必要があります。

滞納家賃(賃料)の免責で立ち退きを命じられる?

家賃滞納が続くと、賃貸借契約を解除され、立ち退きを命じられる可能性が高くなります。

そのためには「信頼関係が損なわれる程度の債務不履行」が必要とされています。

1ヶ月くらいの滞納では「信頼関係が損なわれた」とまで言いがたいのですが、一般的に3ヶ月以上滞納が続けば、賃貸借契約の解除に繋がるでしょう。

ここで問題になるのは、自己破産と賃貸借契約は別ということです。

つまり、免責を受けることで滞納分を支払う必要はなくなりますが、大家にとっては関係ありません。

大家にとっては「家賃を滞納している」という事実が重要であり、だからこそ賃貸借契約の解除と立ち退きを考えるのです。

賃貸物件から立ち退くまでの期間

大家が賃貸物件から住人を立ち退かせるには、最短で数ヶ月かかります。

「3ヶ月以上の滞納が目安」と先ほどお話ししましたが、それ以降も様々な手続きが発生するのです。

まず裁判所に対して、「建物明渡の判決」を申し立てなければなりませんし、その後に「建物明渡の判決」が出れば、今度は「強制執行」を申し立てることになります。

そして住人が期限までに立ち退かない時にはじめて、執行官による強制執行が行われます。

「3ヶ月の滞納+強制退去までの期間」は一般的に4ヵ月~6ヵ月と言われています。

そう考えると「けっこう余裕があるんだな」と思われるかもしれませんが、家賃の滞納が続けば、いずれは退去になります。

退去となれば、新居探し、引っ越し準備、実際の引っ越し作業が入るので、早めに行動する方が良いでしょう。

強制退去を避けるにはどうする

強制退去を避けるには、その前に自分から引っ越すことですが、他にも方法があります。

それが「滞納家賃の支払い」です。

自己破産で免責を受ければ滞納分が免除されますが、自主的に支払うことは禁止されていません。

先ほどお伝えしたように、大家としても強制退去は手間と時間が掛かりますから、「早く滞納分を払って住み続けてほしい」と思っているのではないでしょうか。

そのため、自分から滞納分を払えば、住み続けられる可能性が高くなりますよ。

新居探しの手間や、引っ越し費用を考えても、今のアパートに住むことにメリットがあるかもしれません。

「良い機会だから引っ越そう」と考えていれば別ですが、慣れた場所に今後も住み続ける方が、気持ちは楽ですね。

ここで問題になりかねないのが、免責不許可事由です。

滞納家賃を支払うと免責不許可事由になる?

先ほどお伝えした免責不許可事由の中に、「特定の債権者だけに偏った返済を行った場合」がありました。

つまり、滞納している賃料の支払いが、特定の債権者への偏った返済に当たらないのか? という問題です。

一般的に滞納家賃の支払いは、それが1ヵ月~3ヵ月分であれば「偏った返済には該当しない」と言われています。

程度問題ですから、たとえば1年分の滞納家賃を一括で支払えば、偏った返済になるでしょう。

しかし1ヵ月、2ヵ月の滞納分なら、生活に必要な費用として、裁判所で認めてもらえることがあるのです。

ただし、自己破産における滞納家賃の支払いは微妙な問題なので、まずは弁護士に相談して下さい。

自己破産ではなく任意整理という選択肢

自己破産は「非免責債権を除く全ての債権」が対象になるため、滞納家賃も申告する必要があります。

しかし任意整理は整理先を選ぶことが出来ますね。

たとえば「銀行カードローンと消費者金融だけ任意整理して、家賃滞納分はそのままにしよう」という選択が出来ます。

自己破産のように、ほぼ全ての支払いが免除されるわけではありませんが、任意整理で再建できるなら、その方がメリットを感じられるかもしれません。

任意整理の効果

主な任意整理の効果は以下ですね。

  • 将来利息のカット
  • 遅延損害金のカット
  • 残った元本を3年~5年で分割払い

将来利息と遅延損害金がなくなり、残った元本を3年(36回)~5年(60回)で支払うのが基本です。

自己破産や個人再生のように裁判所に申請する手続きではなく、あくまでも任意の交渉ですから、希望通りの条件で和解がまとまらないこともあります。

自分で任意整理を行うのは難しいので、やはり経験豊富な弁護士、司法書士に相談しましょう。

任意整理しても官報に掲載されない

自己破産のデメリットに「官報への個人情報の掲載」がありますが、任意整理の場合は掲載されません。

「官報はあまり読まれていない。周囲に自己破産はバレない」とも言われますが、それでも知られる可能性はゼロではありません。

自己破産には「ほぼ全ての支払いが免除される」という強力なメリットがありますし、破産以外に再建が難しければ、必然的に選択することになるでしょう。

しかし任意整理の方が合っていることもありますから、双方のメリット、デメリットを考えて選択すると良いですね。

任意整理の体験談

参考までに任意整理の体験談をお話しします。

数年前、家賃を滞納した状態で、銀行系カードローンとクレジットカードを利用していました。

返済が厳しくなったので任意整理を考えたのですが、家賃を整理しようとは思いませんでしたね。

カードローンとクレジットカードを整理して、収入の範囲内で分割払いできれば、必然的に家賃も払えるだろうと思っていました。

実際、司法書士に任意整理を依頼して、銀行およびカード会社と和解し、無理のない範囲で借金を減らしているうちに、滞納家賃も解消できましたよ。

だからと言って、「任意整理で全て解決する」というわけではありません。

借金額、収入、仕事、財産、年齢、性別などを考慮した上で、整理方法を考える必要がありますね。

家賃滞納と自己破産に関する疑問

ここから家賃滞納と自己破産に関する良くある疑問を見ていきます。

賃貸契約時に連帯保証人がいる場合はどうなる?

自己破産で免除された滞納家賃分は連帯保証人に請求されます。

滞納家賃に限らず、借金を連帯保証している場合は同じですね。

本人が免責を受けても、連帯保証人の返済義務は消えません。

ただし賃貸物件に関しては、保証会社を付けている契約も多いです。

その場合は保証会社が肩代わりをする形になりますね。

引っ越しが必要な場合の費用はどうする?

滞納家賃を支払えずに立ち退きを求められ、実際に引っ越すケースがあります。

その場合の引っ越し費用はどうすれば良いのでしょうか。

大家や管理会社が負担することは考えづらいので、やはり自分で用意することになりますね。

ここで問題になるのは自己破産の職業制限です。

自己破産を申し立てた後、免責決定を得るまで、就けない職業があります。

たとえば以下のような職業です。

  • 弁護士
  • 弁理士
  • 司法書士
  • 税理士
  • 公認会計士
  • 社会保険労務士
  • 行政書士
  • 中小企業診断士
  • 宅地建物取引士
  • 土地家屋調査士
  • 不動産鑑定士
  • 警備員
  • 生命保険募集人
  • 証券外務員
  • 損害保険代理店
  • 貸金業者
  • 商工会の役員
  • 信用金庫等の役員
  • 旅行業務取扱管理者
  • 建築士事務所開設者
  • 公証人
  • 質屋
  • 通関士

上記に該当し、仕事から離れれば、たとえ一時的な休職でも収入が途絶えるのではないでしょうか。

場合によっては、同じ職業に就けないケースもありますね。

たとえば司法書士や社労士のような士業者の場合、短期間でも職を失うことはダメージが大きいです。

廃業が必要になるかどうかは分かりませんが、どちらにしても厳しい状況になるでしょう。

他にも、年齢的に同じ仕事に就けない、求人募集を探しても見付からない、というケースもありますね。

そのような懸念は、最初の段階で弁護士に伝えると良いですよ。

「職業制限に引っ掛かるかもしれない」と言えば、その際の対策を教えてもらえるかもしれません。

それでも仕事を失った場合は、アルバイト、パート、派遣などの働き方で、引っ越し費用を貯める必要があるでしょう。

もしくは家族や友人から融資を受けることが出来れば、それを元手に引っ越せるかもしれませんね。

自己破産しても新居は借りれるの?

自己破産すれば信用情報機関に事故情報が登録されます。

いわゆるブラックリストと呼ばれるものですが、それでも新居(アパートやマンション)と契約できるのでしょうか。

家賃の支払が必ずクレジットカード払いと決まっていて、指定されたカードを作る必要があれば契約は難しいですね。

事故情報が登録されている期間(5年~10年)は、基本的にクレジットカードを作ることが出来ませんので。

他にも、家賃保証会社によっては契約が難しいと言われています。

家賃保証会社の中には、貸金業者と同じように信用情報機関をチェックする所があるそうです。

対策としては、不動産仲介会社でしっかり希望条件を伝えることです。

「銀行振込みで家賃を払いたい」

「保証会社が必須の物件は避けたい」

そのように希望を伝えれば、担当者が条件に沿った物件を探してくれますよ。

大家に強制退去されないコツはある?

家賃滞納が続けば、やがて強制退去になるでしょう。

そのためには時間と手間が掛かるとお伝えしましたが、大家にとっても、出来れば円満に解決したいと考えているはずです。

大家や管理会社宛てに、ある日急に裁判所から自己破産の通知が届いたら、どう思うでしょうか。

おそらく心証は良くないでしょう。

しかし自己破産を申し立てる前に大家の元を訪ね、

「このたび、事情があって自己破産を申し立てることにしました。滞納家賃について現在、弁護士と相談しています。方針が決まりましたらご連絡します」

といった挨拶をすれば、それだけで印象は違います。

大家も感情を持った人間ですから、何も言わずに自己破産するよりも、しっかり話し合って下さい。

もちろん話し合う前に弁護士と打ち合わせを行って、今後の方針を決めて下さいね。

まとめ

滞納している賃料(家賃)に関しても、自己破産で免責を受ければ免除されますが、その場合は退去についても考える必要があります。

同じアパートやマンションに住み続けるなら、滞納分の支払いが必要ですが、「かたよった弁済」とみなされて免責が下りない可能性もありますので、しっかり弁護士と相談しながら進めると良いでしょう。

滞納家賃を払わずに引っ越す場合は、引っ越し費用を捻出する必要があります。自己破産を行うということは、経済的に苦しい状況と思われますが、それでも何とか用意しましょう。

自己破産手続きを行う前に、大家と話し合うことも大切です。せめて挨拶だけでも行うことが出来れば、その後の心証も変わると思いますので、積極的にコミュニケーションを取ってみてはどうでしょうか。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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