自己破産

自己破産すると家賃はどうなる? まだ住めるの? 引っ越しが必要?

家賃を滞納している状況で自己破産するとどうなるかが気になりますね。

同じアパートやマンションに住み続けられるのか、それとも引っ越しが必要になるのでしょうか。

このページでは、そのような疑問を持っている方向けに、滞納家賃と自己破産についてお話ししています。

まずは自己破産の基本を解説しながら、その後に滞納家賃に関して詳しく説明しています。

自己破産を考えている場合に参考にして頂ければと思います。

目次

自己破産の基本

まずは軽く自己破産の基本をお伝えします。

自己破産の目的は「債権者のために財産などを精算する手続き(破産手続き)」と「債務者のために債務をなくす手続き(免責手続き)」に分かれます。

つまり自己破産とは、「裁判所に申立てて財産を精算し、免責許可をもらって借金をゼロにする手続き」と言えるでしょう。

免責を受けても養育費や税金などは残りますが、それ以外の全ての借金(カードローン、キャッシングなど)の支払い義務はなくなります。

自己破産の2種類の手続き

自己破産の手続きは「同時廃止」と「管財事件」に分かれます。

同時廃止

自己破産手続きの開始と同時に終了するのが「同時廃止」です。

精算する財産がなく、免責が認められない事情(免責不許可事由と言います)がなければ、免責の手続きだけが進むことになります。

申立て以外に費用はかからず、東京地方裁判所の場合は16,000円ほどで済むようです。

弁護士や司法書士に依頼すれば別途、依頼費用がかかりますが、それ以外の費用は低いと言えるでしょう。

手続きの大まかな流れは以下です。

1.破産申立書などの書類を用意して裁判所に申立てる
2.破産手続の開始決定を受ける
3.破産手続が終了する(同時廃止の決定)
4.免責手続きで免責許可決定、もしくは不許可決定となる

管財事件

精算する財産があったり、免責不許可事由に該当したりする場合は、裁判所で破産管財人が選任されます。

そして破産管財人が財産や、免責不許可事由の事情を調査します。このような手続きを「管財事件」と言います。

管財事件の場合、破産管財人の報酬予納金として50万円ほどかかります。

また、郵券や官報広告費用のような、同時廃止でも発生する費用に関しても、同時廃止より少しずつ高くなります。

尚、東京地方裁判所など、一部の裁判所では「少額管財」という手続きが認められています。

管財事件の中で、「短期間で調査が済む場合は期間を短縮し、それと共に破産管財人の報酬も少額にする」という手続きです。

この場合、管財人の報酬は20万円程度まで押さえられますが、条件として「弁護士を代理人として破産申立てを行うこと」と定めている裁判所が大半のようです。

手続きの大まかな流れに関しては、同時廃止と共通する部分も多いですが、管財事件は、より時間が掛かります。

具体的には、破産管財人が資産、債権者の調査、過払い金の回収、資産の換価、免責不許可事由の調査を行います。

その後に債権者集会を経て、破産手続きの終結、免責許可決定などが決まります。

免責不許可事由

ギャンブルや浪費などが原因の借金は「免責不許可事由」に該当しますが、多くのケースで免責されています。

裁判所が事情を考慮して免責を認める「裁量免責」という制度があるからです。

ただし免責不許可事由かどうか、もしくは認められるかどうかは微妙な問題なので、弁護士や司法書士のような専門家に相談すると良いでしょう。

今からお話しする滞納家賃の支払に関しても、免責不許可事由が絡んできます。

自己破産と滞納家賃の関係

「もう自己破産しかないか…」という段階では、アパートやマンションの家賃を滞納していることが多いです。

その場合、「自己破産すると滞納家賃はどうなるの? その後も賃貸物件に住むことは出来るの?」という疑問が生じるでしょう。

結論から申し上げると、滞納家賃も免責の対象になるため、「支払わなくてもよい」と言えます。

ただし自己破産手続きの開始決定後の家賃に関しては、支払う必要がありますね。

退去すれば別ですが、同じアパートやマンションに住み続ければ支払うことになります。

また、自己破産前の滞納家賃が免責になり、支払義務がなくなっても、今度は賃貸借契約を解除されるリスクが高くなるでしょう。

滞納家賃を自己破産に含めると退去になる?

アパートやマンションを借りると賃貸借契約が成立しますが、家賃滞納は契約違反になりますので、家主は解除が可能です。

賃貸借契約の解除によって契約がなくなりますから、借りている側は退去しなければなりません。

しかし家賃を滞納してすぐに解除されるわけではなく、一般的に「3ヶ月以上の滞納が条件」と言われています。「信頼関係が損なわれる程度の債務不履行」が必要とされているからです。

つまり、家賃を1ヶ月滞納するくらいでは、「信頼関係が破壊されたとまでは考えられない」ということです。

逆に言うと、滞納家賃が3ヵ月以上になれば、家主から賃貸借契約の解除される可能性が高くなる、ということですから、現段階でどのくらい家賃を滞納しているかがポイントになるでしょう。

「3ヵ月以上の滞納家賃を含めて自己破産を行い、免責を受けて支払義務がなくなると、家主側も契約解除に向かいやすい」ということですね。

退去時期はいつ頃なの?

では、自己破産後に免責を受けて、家賃の支払義務がなくなった場合、いつごろ退去になるのでしょうか。

まずは家主と話し合いを行って、立ち退き日を決めることになるでしょう。

「1ヵ月後の○月○日に立ち退きます」と話し合いで決まれば、その日までに物件探しと引っ越しを行うことになります。

中には猶予期間を嫌がり、裁判や強制執行を行う家主もいますが、即時退去にはなりません。

強制的に立ち退かせるためには「不動産明渡訴訟」が必要となり、短くても2ヶ月程度はかかりますし、強制執行前の「明渡し催告」でさらに1ヶ月程度かかります。

そうは言っても、やがては退去になるでしょうから、早い段階からアパートやマンションなどの物件を探し、物件が見付かれば引っ越し準備を行うと良いですね。

契約解除後も同じアパートやマンションに居座れば家賃が発生しますし、常識的にも、道義的にも、退去を考えるのが自然です。

ケースバイケースではありますが、3ヵ月分の滞納家賃を払うよりも、安い賃貸物件を探して引っ越す方が、結果的に安く済むケースも多いですよ。

「引っ越しは手間が掛かる」と考えるかもしれませんが、新たな生活のスタートとして気持ちを切り替えることで、スムーズに物件探しや、引っ越しの準備に取り掛かれるのではないでしょうか。

滞納家賃だけ支払ってもいいの?

それでも「今のアパートから退去したくない」と考えることがあるでしょう。

長年住み続けているアパートで愛着があったり、健康問題や年齢により引っ越しが難しかったり、というケースもありますね。

その場合に考えるのは、自己破産前に滞納家賃を支払うことではないでしょうか。

借金整理の方法として、自己破産以外に個人再生や任意整理がありますが、たとえば任意整理なら、全ての借金を対象にする必要はないため、滞納家賃を外して整理可能です。

クレジットカードと消費者金融だけ任意整理する、という選択肢が出来るのです。

しかし自己破産は滞納家賃を含めることになりますし、それにも関わらず滞納家賃だけ支払ってしまうと「かたよった弁済(偏頗弁済)」とみなされ、免責不許可事由になる可能性があります。

「かたよった弁済(偏頗弁済)」とは、特定の債権者を特別扱いすることです。

優先的に支払を行ったり、担保を提供したりすれば「かたよった弁済(偏頗弁済)」になりますし、家主も債権者に当たるため、勝手に滞納家賃を払えないのです。

そして免責が下りなければ、自己破産を行っても借金は免除されません。

尚、「かたよった弁済(偏頗弁済)」の時期に該当するケースとしては、「自己破産の直前~免責決定まで」と言われていますが、詳しくは弁護士事務所に相談して指示を仰いで下さい。

上記は自己破産の開始決定前の滞納家賃ですから、開始決定後に発生する家賃は払っても良い、と言われています。

つまり、開始決定後に生じる家賃は支払える、ということです。

賃貸物件から退去しないためには?

「自己破産してもアパートやマンションから退去したくない」という場合の対策についてお話しします。

第三者に滞納家賃を支払ってもらう

一つ目は第三者に滞納家賃を支払ってもらう方法です。

自己破産する本人が特定の債権者を優遇すれば「かたよった弁済(偏頗弁済)」に当たりますが、あくまでも本人が支払う場合です。

「自分の財産の中から、他の債権者よりも優先的に支払ってはいけない」というのが「かたよった弁済(偏頗弁済)」なので、第三者の弁済は禁止されていません。

もし家族や友人に家賃を払ってもらえるなら、頼んでみてはどうでしょうか。

両親や兄弟、親友にお願いすることで、滞納家賃がクリアになるかもしれませんし、実際そのように解決している人も多いですよ。

自己破産を打ち明けるのは勇気が要るかもしれませんが、「もう一度人生をやり直したい」「経済的に立ち直って再生したい」と説明することで、「滞納家賃くらいは払っても良いか」と援助してくれる方が現われるかもしれません。

ただし家族の場合は「家計が同一かどうか」に注意して下さい。

夫が自己破産を進めていて、妻が生活用の口座から滞納家賃を支払うなどのケースでは「かたよった弁済(偏頗弁済)」に該当する可能性があります。

同居していない父親が滞納家賃を払うのは問題ありませんが、同一家計の場合は注意が必要です。

また、入居時に連帯保証人を付けている場合は、どちらにしても連帯保証人に支払い義務があるため、前もってお願いすると良いですね。

「今は滞納家賃を払えないけど、その分を立て替えてもらえれば、自己破産開始後のお金で返せる」としっかり説明することで、連帯保証人が納得してくれる可能性も高いでしょう。

自己破産手続きの開始決定後に支払う

二つ目の対策として、自己破産手続きの開始決定後に支払う方法があります。

開始決定後に得た財産(新得財産)や、開始前から持っていて生活のために残された財産(自由財産)から支払う行為は認められています。

「開始決定後」という注意点はありますが、滞納家賃の支払い自体を禁止されているわけではないのです。

自己破産が始まると、家主からの滞納分請求や強制執行は出来なくなりますが、破産者が自分の意思で支払うことは可能です。

その場合はあらかじめ家主と話し合い、賃貸借契約の解除をしないようにお願いする必要がありますね。

裁判所で認めてもらえるケース

特定の債権者を優遇することは「かたよった弁済(偏頗弁済)」に該当する、と前述しましたが、短期間の家賃滞納分なら、裁判所によっては認めてもらえることがあります。

破産法の第1条に「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする」とありますし、住居は生活の基盤ですからね。

裁判所にもよりますが、1~2ヶ月程度の滞納なら、例外的に認めてもらえるかもしれません。

ただし「何ヶ月分まで認められるのか?」はケースバイケースです。

1年などの長期滞納の一括返済に関しては「かたよった弁済(偏頗弁済)」に該当する可能性が高いようです。

あくまでも程度問題ということです。

敷金を滞納家賃に充当する

入居時に払った敷金を滞納家賃に充てる、という方法があります。

一般的に敷金は自由財産と考えられていますので、家主の許可があれば滞納家賃に回すことも可能でしょう。

ただし減少分の敷金を要求されることもあり、支払うことで「かたよった弁済(偏頗弁済)」と裁判所にみなされる可能性もゼロではありません。

家族や友人のような第三者に敷金を肩代わりしてもらうのが安全です。

家主との話し合いが大切

以上が賃貸物件から退去しないための対策ですが、まずは家主との話し合いが必要になります。

話し合いによって滞納家賃を待ってもらったり、第三者からの支払を認めてもらったり、何より会話が大切ですね。

借金地獄で苦しみ、リボ払いの多重債務生活が長くなると、人間不信に陥ることがあります。

その結果、全てをネガティブに捉えがちですが、実際に大家や管理会社と話し合うことで、ポジティブな方向に進むケースもありますよ。

家賃を滞納しないことが第一ですが、実際に滞納が続いていれば、その時点から出来る対策を行って下さい。

退去後に新居は見付かる?

自己破産前から住んでいる賃貸物件に住み続けるよりも、「新しいアパートを探して引っ越す方が良い」と考えるケースで気になるのが、「自己破産しても新しい賃貸物件は見付かるのかどうか?」ではないでしょうか。

自己破産だけでなく、個人再生や任意整理をすれば信用情報機関に登録されます。

いわゆるブラックリストと呼ばれるものですが、その場合、一定期間はクレジットカードや消費者金融の利用が難しくなります。

「賃貸物件の契約にも支障が出るのでは?」と考えてしまうものですが、不動産の賃貸借契約には影響がないと言われています。

ただし家賃が「クレジット払い」の物件に関しては、利用できない可能性が高いので注意して下さい。

他にも、連帯保証人を付けるのではなく、保証会社必須の物件の場合も、審査に通らないことがあります。

そのため、家賃がクレジット払いの物件は避ける、保証会社の利用が必須の物件は避ける、というスタンスで探してみると良いでしょう。

不動産仲介業者で相談すれば、希望物件の詳細な条件を伝えられますし、条件に沿ったアパートやマンションを探してくれますよ。

自己破産は弁護士、司法書士に相談しましょう

滞納家賃がある場合の自己破産手続きに関しては、細心の注意が必要になります。

お伝えしたように「かたよった弁済(偏頗弁済)」に該当する可能性があるからです。

裁判所によっても判断、処理が異なる部分ですし、実績豊富な専門家(弁護士や司法書士)に相談すると良いですね。

「自己破産中だけど滞納家賃を払おう」と思って実際に支払った結果、免責が下りず、借金だけが残った…というケースは笑うに笑えません。

そのような事態を避けるには、自己破産が得意な弁護士、司法書士への相談が安心です。

まとめ

滞納家賃がある場合の自己破産手続きには注意が必要です。

家賃だけを支払うと「かたよった弁済(偏頗弁済)」となり、免責不許可事由に該当する可能性があります。

同じ賃貸物件に住む場合は第三者に肩代わりしてもらったり、自己破産の開始決定後に支払ったりすると良いでしょう。

もしくは安いアパートに引っ越して、新たなスタートを切るという選択肢もあります。

いずれにしても滞納家賃がある場合は、弁護士や司法書士のような専門家への相談から始めると良いですね。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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