自己破産

破産管財人はどのように調査する?管財人の役割と対象になる財産とは?

返済能力を超えてしまった借金は、自己破産の申し立てをすることで免責(返済義務を免除)してもらえます。

ただし、自己破産は「同時廃止」と「管財事件」の2種類に分類され、管財事件で手続きが進む場合には「破産管財人」が選任されることになるのです。その場合には、預金口座や不動産などの資産が細かく調査されるため、自己破産の手続きが完了するまでに時間がかかるでしょう。

この記事では、破産管財人はどのようにして債務者の財産を調査するのかについてまとめました。破産管財人とはどのような人物なのか、どのような財産が調査の対象になるのかについてもあわせて説明します。

目次

所有する資産の調査をする破産管財人とは?

破産管財人という言葉を聞いたことはあっても、どのような人物なのかを知らない人も多いと思います。まずは、破産管財人とはどのような人物なのかを見ていきましょう。

破産管財人とは「裁判所から選任された破産財団(債権者に分配される財産)の調査、管理、換価、配当を担当する弁護士」のことです。

自己破産をすると、債務者の持っている財産が調査され、一定以上の価値があるものについてはお金に換えられて、債権者に対して分配されます。

自己破産をしてもすべての財産が処分されてしまうわけではありませんが、生活に最低限費用なものを残しては換価処分(不動産などの財産を現金に換えること)されるのです。

自己破産では債権者に対して公平に換価された資産が配当されるため、その管理などを行うのも破産管財人の仕事になります。

そのため、破産管財人は債権者に対しては手続きの進行状況の報告をするために債権者集会を開き、必要に応じて債務者との面談なども行います。

破産管財人が行う調査内容とは?

次に破産管財人がどのような内容を調査するのかについて説明していきます。

破産管財人は次のような内容を調査していきます。

【破産管財人が行う調査内容】

  • 債務者がどのような資産を持っているか
  • 債権者一覧表に漏れがないか
  • 債権の金額に間違いがないか
  • 免責に該当するか

破産管財人は債務者の資産を調査する

破産管財人の行う調査の中でもメインといえるのが、債務者の保有している資産の調査です。

資産については自己破産の申立書と一緒に資産目録などを提出しますが、その内容が正確かどうかも破産管財人はチェックしていきます。

換価処分を免れるために財産を意図的に申告しない「財産隠し」だけでなく、債務者本人が財産の存在に気が付いていないケースもあるため、破産管財人によってしっかりと調査されるのです。

調査対象となる資産や調査の方法については後述しているので、そちらも参考にしてください。

破産管財人は債権者一覧表に漏れがないか調査する

破産管財人は債務者の資産だけでなく、債権者についても確認を行います。

自己破産の申し立てをする際には債権者一覧表も提出しますが、それに漏れがあると正確な債務を把握できませんし、換価処分した資産を公平に分配することもできません。

破産管財人は債権者一覧表に載っている債権者に対して「破産債権届出書」を送り、債権者は指定された期間内に債権届と債権があることを証明する書類を裁判所に対して提出するのです。

これによって自己破産の手続きを通して配当を受ける権利を得ることができます。

また、破産管財人の調査の中で債権者一覧表に記載されていない債権者がいた場合にも、同様の手続きを取ることになります。

調査期間中は管財人へと郵便物が転送される

自己破産の申し立てをした後、破産手続開始決定から免責許可が下りるまでの間は、債務者宛の郵便物は破産管財人へと転送されます。

これは破産法という法律で認められており、次のように記載されています。

破産管財人は、破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。

破産法 第82条 第1項

これは財産隠し、債権者の不申告、偏頗弁済(特定の債権者にだけ返済をすること)などを防止、発見することが目的です。 対象となるのは債務者名義の郵便だけなので、一緒に住んでいる家族宛の郵便や、ゆうパック、宅配便などは対象にはなりません。

また、破産管財人が受け取った郵便物は返してもらえます。調査を行う数ヶ月のことですし、日常生活に大きな影響はないでしょうが、重要な書類、期限のある書類が転送される可能性もあるため覚えておきましょう。

意図的に債権者を申告しなかった場合は免責されない

自己破産は手続きしただけでは借金の返済義務はなくならず、必ず免責を受ける必要があります。

ただ、免責不許可事由に該当する場合には免責が認められず、借金の返済義務は残ることになるので注意してください。

この免責不許可事由の1つに債権者を意図的に申告しないなどの行為が挙げられます。

財産隠しなども同様ですが、破産管財人の行う調査に協力しなかった場合には自己破産をしても免責されない可能性があるのです。

破産管財人は免責に該当するかを調査する

前の項目でも少しふれましたが、破産管財人は申立者が免責に該当するかどうかも調査をします。

免責許可 / 不許可を決定するのは裁判所ですが、破産管財人の意見は大きな影響力を持っているのです。

先ほど説明した免責不許可事由に該当するものがないかもチェックしますし、自己破産では「裁量免責」も認められています。

裁量免責とは免責不許可事由に該当するものの、裁判所の裁量で免責を認めることができるというものです。

例えば、借金を増やした理由がギャンブルや浪費の場合には免責不許可事由に該当します。

しかし、どのような経緯で自己破産の申し立てに至ったのかの説明を聞き、納得できる理由があると認められる場合には、免責とすることも可能なのです。

この裁量免責の可能性がないのかも破産管財人は判断します。

裁量免責について、法律では次のように記載されています。

(前略)裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

破産法 第252条 第2項

次のようなケースは免責不許可事由に該当しますが、裁判所の判断によっては免責されるケースもあるので、自己破産を申し立てる価値があるでしょう。

【主な免責不許可事由】

  • 財産隠しがあった場合
  • 資産を不当な価値で売却した場合
  • 闇金からの借り入れをしていた場合
  • クレジットカードのショッピング枠を現金化した場合
  • 借金の理由がギャンブルや浪費、投資、投機の場合
  • 虚偽の債権者名簿を提出した場合
  • 過去7年以内に免責を受けている場合 など

破産管財人が行う調査で対象となる資産

自己破産の手続きでは破産管財人が資産の調査を行いますが、具体的にはどのようなものが調査対象になるのでしょうか?

ここでは自己破産の申立書に添付する「資産目録」をもとに、どのようなものを対象に調査が行われるのかについて説明していきます。

資産目録に記載する内容

資産目録は自己破産の申し立てをする裁判所などへ行けば指定の用紙を貰えます。裁判所によって用意しているフォーマットに差はあるでしょうが、主に次のような内容について記載をします。

【資産目録に記載する内容】

  • ①所有する不動産(土地・建物・マンション)
  • ②現金や預貯金(預貯金通帳の写しも提出する)
  • ③貸付金(他者に貸しているお金)
  • ④所有する自動車、オートバイ(車検証の写しも提出する)
  • ⑤加入している生命保険、損害保険(保険証書、解約返戻金の証明書も提出する)
  • ⑥その他の財産で価値が20万円以上のもの(ゴルフの会員権・株式・貴金属など)
  • ⑦過去2年間で売却した不動産などの価値がある財産(売却などの事実を確認できる書類も提出する)
    ※ 売却だけでなく、借金のかた、質入れ、生命保険の解約なども含みます。
  • ⑧過去2年間に支払いを受けた退職金、保険金、慰謝料など
  • ⑨過去2年間に行った財産分与(離婚などに伴い行ったもの)
  • ⑩過去2年間に相続した遺産

資産目録に記載する内容を見ると分かりますが、単純に所持しているお金や不動産などだけが調査対象になるわけではありません。

誰かに貸しているお金や加入している保険、過去2年間にさかのぼって売却した不動産、解約した保険、支払いを受けた退職金や保険金、遺産相続などについても調査されるのです。

事業主は売掛金や在庫などの資産目録にまとめる

また事業主(過去2年以内に事業を営んでいた人を含む)は、次のような内容についても資産目録に記入をします。

【資産目録に記入する事業に関する内容】

  • ①未回収となっている売掛金
  • ②事業設備、在庫品、什器備品など
  • ③営業中の商業帳簿の記載について
  • ④営業中の税金の申告について

自己破産の申立書に添付する書類、資産目録の書き方などは管轄となる裁判所によっても違いがあります。詳しくは管轄の裁判所に問い合わせをするか、相談をしている弁護士に尋ねるのが確実でしょう。

破産管財人はどうやって財産を調査する?

破産管財人は様々な方法で申立人の財産を調査しますが、主な方法は次の2つです。

【破産管財人の行う調査方法】

  • ①提出された書類を精査する
  • ②債務者・債権者からの聞き取りを行う

自己破産の申し立てで提出された書類の確認

自己破産では申立書に加えて、先ほど説明した資産目録や債権者一覧表、預金口座の通帳なども提出することになります。破産管財人はそれらを精査していき、債務や換価できる財産の調査を行うのです。

また、破産管財人は申告されていない可能性がある財産についても調査できる権限を持っています。

例えば、口座を隠しているような場合には、銀行に対して破産管財人の権限を持って情報の開示を依頼できるのです。

債務者・債権者からの聞き取り調査

破産管財人は書類の精査だけでなく、実際に債務者や債権者からの聞き取り調査も実施します。

自己破産をする債務者は破産管財人と面接をすることになりますが、そこでは自己破産をするに至った経緯、借金の理由、現在の家計の状況、どのような資産を持っているのかなどを聞かれるでしょう。

破産管財人も仕事で行っているので、聞かれた内容に対して嘘偽りなく回答すれば問題ありません。覚えていないこと、すぐに回答できないことがあれば、そのまま正直に伝えて大丈夫です。

また、弁護士に依頼をしている場合には、代理人として同席してくれるケースもあり、30分程度で面接は終わるため大きな心配はいりません。

面接の場所は破産管財人側の事務所となるケースが多いようです。

破産管財人の調査では「否認権の行使」が行われることもある

破産管財人が持つ大きな権限の1つに「否認権の行使」があります。

これは、自己破産が開始される前に行われた行為の取り消しができる権限のことです。

例えば、自己破産の手続きをする前に所有していた不動産などの資産を不当に安く処分した、名義変更などで他人に譲渡した場合などには否認権の行使が行われます。

この権限によって換価処分を免れるために行われた行為を否認できるため、本来の正しい形で換価処分した資産を債権者へ配当できるのです。

自己破産で破産管財人による調査が行われるケース

ここまで破産管財人の役割や調査内容について説明してきましたが、自己破産では破産管財人が選任されないケースもあります。

どのような場合に破産管財人が必要・不要なのでしょうか?

管財事件では破産管財人が選任される

自己破産において破産管財人が選任されるのは「管財事件」になる場合です。

自己破産を申し立てる人が、一定以上の財産を持っているケースではそれらを調査、分配する破産管財人が必須になります。

管財事件では破産管財人が調査をするため手続き終了までに時間がかかり、管財人へ支払う費用も必要になるので覚えておきましょう。

同時廃止の手続きでは破産管財人が不要

記事の冒頭で自己破産は「同時廃止」という方法が取られることもあると説明しました。

そもそも債権者に分配できるような資産を持っていない場合には破産管財人を選任する必要がないため、自己破産の手続開始決定と同時に免責許可が下りるのです。

このような自己破産の手続きを同時廃止といい、この場合には破産管財人は選任されません。

ただし、法人の破産ではこのような手続きは行われず、必ず管財人が付きます。法人の場合には、破産をしても手元に残せる「自由財産」は認められないのです。

個人と法人の場合では様々な違いがあるので、法人の破産手続きを考えている方は注意してください。

自己破産が管財事件になる3つのケース

一定以上の財産を持っているケースでは管財事件になるといいましたが、具体的には次のような場合には管財人が選任されることになります。

①換価すべき財産を所有している

管財事件として自己破産が扱われる目安は、20万円を超える価値を持つ資産を持っている場合です。例えば、不動産などを所有しているケースでは評価額が20万円を超えるケースが多く、管財事件になるでしょう。

ただし、現金については20万円を超える金額を持っていても同時廃止になることもあります。

このあたりの判断は裁判所によっても異なるため、相談先の法律事務所や管轄の裁判所で確認することをおすすめします。

②換価すべき財産を持っている可能性がある

自己破産の申し立てをしたときに、20万円を超える換価すべき財産を持っている可能性があると判断された場合にも破産管財人が選任されます。同時廃止になるか、管財事件になるかは自分自身で選択することはできません。

この記事でも説明したように破産管財人の調査によって所有している資産は詳細に把握されます。

同時廃止で手続きをしたいと考えても、財産隠しなどは免責不許可事由にも該当するので、絶対に行ってはいけません。

③免責を許可すべきか調査する必要がある

債権者に配当できるような資産を持っていない場合でも、免責の判断が必要なケースでは破産管財人が選任されます。

この場合には、破産管財人による面接が複数回行われることも多く、免責を許可しても良いのかが慎重に判断されるのです。

破産管財人は資産・債務の調査が仕事!対応が不安な人は専門家に相談を

自己破産で管財事件になった場合、破産管財人が選任され資産や債務などを調査され、債権者への配当を行います。

債務者としては同時廃止になった方が費用も手間も軽く済みますが、不動産などの一定以上の価値がある財産を所有している場合には管財事件になるでしょう。

自己破産の手続きに不安があるなら、弁護士などの専門家に相談をすれば適切なアドバイスを貰えます。また、自己破産の手続きを依頼すれば、代理人として手続きを進めてくれますし、破産管財人の面接に同行してもらうことも可能です。

専門家の力を借りて、借金問題を解決しましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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