自己破産

自己破産すると保険募集人への影響はどうなるの?

保険募集人で活動している方は、自己破産してしまうと資格が剥奪されるのではないかと思う方がいます。

確かに自己破産を選ぶ事で保険募集人に就けなくなる可能性はあります。そのため、資格が剥奪されてしまうのではないかと不安になってしまうのではないかと思います。

しかし、必ず資格が剥奪されるわけではありません。そこで、自己破産をした場合の「制限期間」「剥奪されないには」「自己破産以外の方法」などを詳しく解説していきます。

目次

自己破産しても保険募集人が必ず失効されるわけではない

保険会社や銀行員として保険を取り扱っている人のほとんどは「保険募集人」という資格を持っている方が多いと思います。

この保険募集人の方が自己破産をしてしまうと「資格が停止されてしまう」と思う人もいるのではないでしょうか?

結論からお伝えしますと、自己破産を選択した場合は保険募集人の資格は停止されてしまいます。

しかし、手順を間違えなければ資格を喪失することなく資格が復帰(復権)し、仕事を継続することができます。 ですが間違った手順で手続きを行うと、仕事への影響が出てしまう可能性もあります。

そもそも自己破産とは?

自己破産とは、財産や収入が不足し借金返済の見込みがない状態(支払不能)を裁判所に認めてもらう事で、借金の支払い義務が免除される手続を言います。

自己破産を行うことで借金を支払う義務がなくなる(これを免責という)ため、これまで借金返済に当てていた資金を生活費に当てることができるようになります。

自己破産は誰でも利用できる制度ではなく、以下の方々が利用できます。

  • 支払不能であると裁判所より認められた場合
  • 過去7年以内に免責(借金の免除を受けた)を受けた事がない方

破産法第2条11項より「裁判所から免責許可決定が得られる事(免責)ができれば、借金を0にし、返済を免れる事ができる」と定められています。

これは借金の額は一概に〇〇万円以上だとは言えず、裁判所が「この方は借金の返済を行う事が難しい」と判断した場合のみに自己破産を行う事ができます。そのため、借金の総額や収入・資産の状況で総合的に判断されます。

資産がなく、今後も収入がギリギリ生活できる程度しか見込めない場合は借金額がそれほど多くなくても、自己破産が認められる可能性があります。

一方で借金を作ってしまった原因によっては借金の帳消しに当たる「免責許可」を出せない可能性があります。その場合は、後述します少額管財にて手続きを行っていきます。手続きの最中に、弁護士から依頼された破産管財人より「裁量免責が妥当である」と意見を貰う必要が出てきます。

そもそも保険募集人とは?

保険募集人とは、「生命保険契約の募集を行う者」とされております。つまり、保険の営業をするための資格と言えます。保険の営業を行うためには、生保一般課程試験に合格した上で、保険業法第三編(第275条以下)において必ず保険募集人の登録の義務や業務の制限が規定されています。

そのため、保険営業の仕事を行うためには必ず「保険募集人資格」の取得、そして「金融庁に登録する」必要があります。

保険営業は、保険業法第300条および内閣府令で禁止されている行為も多く、コンプライアンスの徹底等を行う必要がある業種とも言えます。

保険業法第300条および内閣府令の禁止行為例

  • 他社の誹謗中傷
  • 契約者の保護にかける行為
  • 誤解される恐れのある比較・表示
  • 告知義務違反を勧める行為
  • 不適正な乗り換え募集 等

何らかの理由によって保険募集人が剥奪されてしまうと、そもそも仕事ができなくなってしまう可能性が高くなると言えます。

また保険募集人の仕事は主に保険営業の仕事になります。一般的なサラリーマンと同様に毎月決まった額の給料を貰っている方もいれば、歩合制として活動している保険募集人もいらっしゃいます。

歩合制として働いていると、毎月の収入が非常に不安定になる方もいらっしゃいます。生活費を補填するためにキャッシングを行ってしまう方も一定数いるのではないでしょうか?

そういった意味では歩合制で働いている保険募集人の方は自己破産の可能性が固定給で働いている保険募集人よりも高くなると言えそうです。

手続き中は保険募集人の業務に制限される

自己破産をすることで「資格制限」というものがあります。この資格制限は手続き開始~免責許可(自己破産手続きが終わり、借金が帳消しになった状態)までかかります。

自己破産を行うと決めたら、まずは弁護士や司法書士へ依頼します。通常は相談してから正式依頼まで時間がかかります。しかし、まれに初めて相談した日にそのまま依頼をする事もあります。

正式依頼まで時間がかかる場合としては

  • 不動産を持っている
  • 退職金の見込みがある
  • 生命保険の解約返戻額

等の資が残っている可能性がある場合です。

そのため、自己破産を行う際は入念に調べる必要があります。他には保証人となっている負債がないか確認をします。

相談の結果で依頼が正式に決まると、弁護士・司法書士はお金を貸している側(債権者)に通知を送ります。ここから自己破産に向けて動き出す事になります。これを受任通知と言います。

自己破産は破産法という法律に則り、裁判所を納得させられるだけの資料を集めて、負債を返す事ができない事情をまとめた書類を提出していきます。 弁護士に相談してから申し立てを開始するまで早い方でも2~3ヶ月程度がかかります。必要な書類が集まらず、半年以上かかってしまう方も珍しくありません。

裁判所に申し立てを行うと、申立書の内容を確認されます。自己破産の方法も同時廃止や少額管財の方法があり、期間は裁判所などによって一概に言えませんが、少額管財の場合は申し立て開始~免責までの期間は最短でも3.5ヶ月以上はかかるとされます。

少額管財は以下のような流れとなります。

申し立て→破産手続き開始→破産管財者の専任→財産や負債原因の調査→債券者集会→免責

期間は申し立てから破産手続き開始で2週間~1ヶ月ほど、破産手続き開始から債券者集会まで2~3ヶ月ほどです。債券者集会が1回で終わらない場合は1~2ヶ月後に再度集まります。債権者集会が終わり、資産がない場合は終了(免責)となる流れです。

一方で同時廃止は少額管財よりも期間が若干短い期間になる事が多く、3~4ヶ月で免責となる場合があります。

少額管財と同時廃止は自己破産の手段の1つになりますが、同時廃止の方がやや期間が短く金額も1万円~3万円ほどになっております。

少額管財は20万円~となり、同時廃止よりも高額になる事が多く、期間も同時廃止よりも長い事が多いです。

同時廃止か少額管財を自ら選ぶことは出来ず、裁判所が判断します。同時廃止と少額管財の違いは資産があるかで判断されます。また、借金ができた原因によっては同時廃止で行うことは出来ず、少額管財として手続きを行う場合もあります。

実際の自己破産は業務に支障がない場合も

実際に保険募集人が自己破産を行った場合は、免責までの期間は資格制限がかかるために仕事に影響が出てしまいます。

しかし、実際にはすでに保険募集人として就労している場合は業務に支障なく手続きを行う事ができる事が可能になる事もあります。

保険法第307条には以下のような文章があります。

【資格の取り消し 等】 内閣総理大臣は、特定保険募集人(生命保険募集人)が次の各号のいずれかに該当する時は、第276条若しくは第286条の登録を取り消し、また6月以内の期間を定めて業務の全部もしくは一部の停止を命ずる事ができる。
「参考元:保険業法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口

ここで確認していただきたいのは、「業務の全部もしくは一部の停止を命ずる事ができる」と記載されていることです。「業務の全部もしくは一部の停止を命じなければならない」では無いのです。総理大臣(の委託を受けた金融庁)が必ずしも資格の剥奪を行うとは限らないのです。

つまり保険募集人の資格を剥奪するかどうかは任意なのです。

一方で法人による破産手続きの決定があったときには、保険募集人の資格を利用する事はできません。個人は必ずしも報告義務はないため、制限を受ける可能性が下がります。

資格の制限・取り消しの可能性はありつつも、自ら自己破産の手続きが開始した事を申告しない限りは資格の制限をされる事なく手続きが完了してしまう事になります。

任意整理や個人再生は取り消しの心配はない

債務整理の中では自己破産が保険募集人の資格制限の可能性があります。 債務整理は4つの手続きがあり、保険募集人がおこなった場合の影響を確認します。

任意整理

→貸金業者と債務者の直接交渉になります。 裁判所を通さずに和解を目指す事になるため、仕事・資格に影響される事はありません。

過払い金請求

→任意整理同様に貸金業者と直接交渉を行います。 裁判所を通さないため、こちらも仕事・資格に影響される事はありません。

個人再生

→裁判所へ書類を提出し、借金の大幅な減額を行う方法です。 個人再生自体には資格への制限がありません。そのため仕事への影響もありません。

このように任意整理や個人再生の場合は、仮に職場に知られたとしても資格制限や就労には影響がありません。

保険募集人を使う仕事である保険営業にも制限がありません。一方で自己破産も自己申告しなければ制限を受けずに業務を続ける事は可能になります。しかし、前述したとおり保険法によって「登録を取り消し、また6か月以内の期間を定めて業務の全部もしくは一部の停止を命ずる事ができる」と記載がある以上は、取り消しされる可能性も否定できません。

絶対に保険募集人の資格を失いたくない場合は、まずは自己破産からではなく任意整理や個人再生から始めていくことをお勧めします。

就業中に自己破産を行った場合

就業中に自己破産を選択した場合は、会社に対してどのように行動すれば良いのでしょうか。後述する就労前や保険募集人所得前ではリスクが非常に高いですが、就業中の自己破産はそこまでリスクが大きくありません。

保険法でもあったとおり、「~取り消しまたは業務全部もしくは一部の停止を命ずる事ができる。」と記載されております。つまり、保険募集人の登録を取り消すかどうかは金融庁の任意のため、必ずしも資格を喪失・剥奪されるわけではありません。 金融庁への報告義務もなく、登録が当然ながら効力が失うという法律がありません。

国・金融庁からの罰はありません。一方で自己破産が会社に知られてしまった場合は、就業規則に抵触してしまう可能性があります。

資格自体には問題がなくても、保険会社によっては「就業規則で自己破産者は解雇する」と就業規則で定めている場合があります。他にも就職したタイミングで自己破産の経験がないか確認をとる会社もあるようです。自己破産者自体は官報に載っているため確認しようと思えば確認ができます。

そのため就業規則などで「自己破産が確認できた場合は、解雇する事ができる」などの記載がある場合は不利な立場になってしまう事が考えられます。

就労する前に自己破産を行った場合

就労・登録を受ける予定だった方が自己破産を受けてしまった場合はそもそも登録を受ける事ができません。また、各保険会社の問題になりますが、免責許可を受けて復権した場合でも、自己破産した事実があれば就職に不利に傾く可能性があります。

保険法第279条にある「登録拒否事由」では以下のような記載があります。

内閣総理大臣(実際は委託の金融庁)は登録申請者が「破産者で復権を得ないもの」に該当する場合は、その登録を拒否しなければならない。
「参考元:保険業法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口

このように免責許可を受けて復権を得ない場合は法律によって登録を拒否されてしまう場面が出てしまいます。

そのため、自己破産を行う場合は保険募集人の登録を終えてから自己破産を行う必要があります。保険募集人自体は自己破産しても、復権さえ出来れば登録は可能になります。

このように就労・登録前に自己破産を行なってしまうと、登録ができなくなることや職場から官報にて確認される事で知られる可能性があります。 これから保険募集人の資格をとりたい方は、自己破産ではなく任意整理や個人再生などの別の債務整理方法を行う事をおススメします。

自己破産以外であれば、保険法279条の【登録拒否事由】に該当しませんし、官報に載るわけではありませんので職場から調べられる事もできないので採用時の問題にもなりにくいです。

自己破産の手続きは専門家に相談する

保険募集人を持っていた状態で自己破産をしてしまえば、法律上は資格制限や免許の取り消しが可能になってしまいます。しかし、法的には自己破産した事を国・金融庁に報告する義務はありませんし、金融庁も自己破産した=登録免許の取り消しを行わなくてはならないというわけではありません。あくまでも免許の取り消しもしくは制限を行う事ができる、という任意的な取り消しになります。

しかし、実際に自己破産を行なってしまうと免許の取り消しが100%ないとも言い切れません。また職場も就業規則によって「自己破産者は解雇することができる」という文章が盛り込まれていると、仕事を辞めざるを得なくなる可能性や職場に居づらくなる可能性もあります。

その点、資格制限・免許取り消しの可能性を考えることなく、債務整理を行いたい場合は任意整理や個人再生を選択する事も1つの検討材料になります。自己破産は資格剥奪の可能性がありますが、任意整理や個人再生は官報にも載らず、資格剥奪の可能性がありません。

しかし個人の借入れ状況や収入・資産の状態・今後の就業状況によってはどの方法が最適なのかは個人で判断するのは非常に難しいです。

自己破産する・しないに関わらず、まずは債務整理に強い弁護士・司法書士に相談し、最適な道筋を共に考えるのが最も良い選択ではないでしょうか。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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