自己破産

生活保護でも自己破産はできる?

借金、生活保護、自己破産の関係についてお話しします。

借金がある場合の生活保護の申請や、生活保護を受けながらの自己破産など、シチュエーションごとに記載していますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。

結論からお伝えすると、生活保護の受給中でも自己破産できますし、自己破産後に生活保護を受けることも可能です。

ただし注意点もありますので、今から詳しく解説しますね。

目次

借金がある場合、生活保護は申請できるの?

まずは借金がある場合の生活保護申請についてお話しします。

生活保護を受ける条件に以下があります。

  • 世帯収入が最低生活費以下であること(基準額は自治体によって異なる)
  • 預金、貯金、現金、土地などの財産が無いこと
  • 家族や親族(両親・子供・妻・夫など)から生活援助を受けられないこと
  • 病気や怪我などの理由から働けず、収入を得る見込みがないこと

特に重要なのが「収入が最低生活費以下であること」です。

基準額は各自治体によって異なりますが、一般的には月11万円~13万円以下が目安のようです。

「借金があれば生活保護を禁ずる」という条件はありませんので、借金があっても受給自体はできます。

しかし役所で申請を行ったけれど拒否された…という体験談も見られますね。

その場合に考えられるのは、生活保護の使い道です。

もし役所の担当者に「生活保護を借金返済に使うのではないか?」と疑われれば、拒否される可能性が高いでしょう。

生活保護は「衣食」「住居」「医療」「介護」「出産」「葬祭」などの用途に使うことが出来ます。

憲法25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」に基づいているからです。

つまり、生活保護の費用を借金返済に回すことは原則、認められていないのです。

生活保護の不正受給の問題

近年、テレビやネットで「生活保護の不正受給」が話題になることが多く、自治体としても、より慎重にならざるを得ないのでしょう。

先ほどお伝えしたように、生活保護の根底には「健康で文化的な最低限度の生活」がありますので、借金の有無だけで判断されるのは問題があるのかもしれません。

「借金があるから最低限の生活が出来ない」という状況もありますしね。

しかし現状、多額の借金がある場合、生活保護の前に自己破産を考えるケースが多いようです。

借金の整理方法として、他に個人再生や任意整理もありますが、返済義務がなくなるのは自己破産だけです。個人再生も任意整理も、元本を減らし、利息をカットする手続きなので、その後の返済が必要になります。

今後も収入を得られる見込みがなく、多重債務で生活が苦しい場合は、まず弁護士事務所に相談すると良いでしょう。

経験豊富な弁護士なら、現在の状況を総合的に判断して、自己破産や生活保護のアドバイスを行ってくれるでしょう。

生活保護を受けながらの自己破産

次は、すでに生活保護を受けている方が自己破産を考えるケースです。

生活保護を受給しながら自己破産を申し立てても問題ありません。自己破産(免責)で借金の返済義務がなくなっても、収入が発生するわけではありませんからね。

無収入や低収入の状況が続けば、破産後も生活保護を受給できるでしょう。

「自己破産は多額の借金が対象になるのでは?」「少額の場合だと難しいのでは?」と思われるかもしれませんが、支払い不能な状態が続いていれば自己破産できます。

たとえ100万以下の借金でも、収入を得る見込みが全くなければ返済は厳しいので、生活保護の受給者が自己破産を考えるのは一般的です。

ただし免責不許可事由に該当していれば、自己破産を申し立てても免責を得られない可能性があります。

免責不許可事由とは、借金理由がギャンブルや浪費だったり、一部の債権者にだけ優先的に返済していたり、財産を隠したり、壊す行為を言います。

実際は免責不許可事由があっても、悪質さの程度や収入状況など、裁判所が様々な事情を考慮した上で、免責を認めるケースが多いです。

そのため、パチンコやスロット、競馬、競輪のようなギャンブルが借金の理由だとしても、弁護士や司法書士のような専門家に相談しましょう。

自己破産後に生活保護の申請は可能?

次は自己破産後の生活保護の申請についてです。

自己破産を申し立てると、価値ある財産は処分・換価され、債権者に分配されますが、破産手続き開始後の収入は手元に置けますし、普通に生活も出来ます。

しかし職業制限に該当して、「仕事を失ってしまった、今後の収入の見通しが付かない」というケースもあるでしょう。

職業制限に該当する仕事とは、たとえば以下ですね。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 税理士
  • 旅行業者
  • 生命保険募集人
  • 警備業
  • 建築業
  • 公証人

上記のような職業に就いていた場合、免責決定を得るまでは離れる必要があるのです。「一旦仕事から離れると復職は難しい、新しい仕事も見付からない」ということも充分に考えられるでしょう。

もしくは職業制限に関係なく、「自己破産前から生活が苦しい、破産後も改善する見込みがない」という状況もあります。

めぼしい財産も収入もなく、生活が困窮すれば、当然ながら生活保護の申請を行えますし、受給要件に該当していれば、スムーズに認められるのではないでしょうか。

先ほど「借金があると生活保護の申請が難しくなる」とお話ししましたが、自己破産によって返済義務はなくなりますし、その後5年から10年はローンを組んだり、クレジットカードを作ったり、消費者金融からの借入れが出来ません。

そのように借金が無くなる上に、新たな借入れも出来ないので、生活保護を受けやすくなると言えますね。

尚、自己破産の手続き中でも、生活保護の申請は可能です。

自己破産の費用は免除されるの?

ここで気になるのは、自己破産の費用ではないでしょうか。

自己破産には「同時廃止」と「管財事件」があり、管財事件になれば高額な費用がかかります。

裁判所に納める予納金だけでも、少額管財で20万円かかりますし、他に弁護士費用も必要です。

その場合、「どのように費用を捻出すれば良いのだろうか」と悩むかもしれません。

自己破産前から生活保護を受けており借金で苦しんでいれば、お金を用意するのも難しいのではないでしょうか。

そのような時に利用したいのが法テラス(日本司法支援センター)です。

法テラスを利用する

法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助を利用すれば、費用の立て替え払いを行ってもらえます。

民事法律扶助の利用には「収入等が一定額以下」という条件があり、目安は18万2千円以下です(最新情報は法テラスの公式サイトで確認して下さい)。

通常は弁護士費用だけですが、生活保護を受給していれば、上限20万円の範囲で予納金も立て替えてもらえます。

立て替えてもらった費用は、2ヵ月後から月1万円(もしくは5,000円)ずつ支払うことになりますが、生活保護の受給者は返す必要がありません。

つまり、生活保護受給者は「お金をかけずに自己破産手続きを行える」ということです。

また、生活保護を受給していない場合も、弁護士費用を分割払いできるので、法テラスを利用するメリットは大きいでしょう。

法テラスは個別の弁護士から申し込める

法テラスの民事法律扶助は、個別の弁護士事務所からも申し込めます(持ち込み方式と言います)

その弁護士が法テラスに対応している必要はありますが、自分で選んだ弁護士に自己破産をお願いできる上に民事法律扶助を利用できる、というメリットは魅力的です。

また、普通に法テラスの地方事務所に申し込むよりも、早期に自己破産に着手できます。

通常は資力審査というものが必要で、約1ヶ月かかりますが、「持ち込み方式」なら待つことなく、弁護士に自己破産を依頼できますよ。

借金問題に詳しい弁護士なら、「生活保護の申請サポート」を行っていることが多いので、安心して任せられるのではないでしょうか。

弁護士事務所の選び方は様々ですが、インターネットで公式サイトを比較して、信頼できそうな事務所に無料相談してみる、無料相談の感触で実際に依頼する、という方法もありますね。

自己破産のメリット、デメリット

ここで一度、自己破産のメリット、デメリットをまとめましょう。

自己破産のメリット

自己破産のメリットはイメージしやすいのではないでしょうか。

やはり最大の魅力は「借金の支払い義務がなくなること」です。

多重債務で苦しんでいても、自己破産で免責が認められれば、返済義務がなくなります。

他にも、「金融機関は差し押さえの執行力を失う」「自由財産は手元に残る」といったメリットがあります。

自由財産とは、自己破産しても没収されない財産です。

99万円以下の現金や、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、パソコンの1台目も自由財産と言われています。

自己破産のデメリット

自己破産のデメリットとして考えられるのは以下です。

破産後5年~10年は借金することが出来ない

自己破産すると信用情報機関に登録されるため、各種ローンを組んだりクレジットカードは作成したりはできません。

消費者金融、銀行系カードローンの利用も難しいので、借金癖があれば、新しい生活に慣れるまで苦しい日々が続くかもしれません。

しかし自己破産するということは、すでに収支のバランスが崩れているわけですし、強制的に借金できない環境に身を置くことで、金銭感覚は修正されるものですよ。

もちろん生活保護受給中は借金が難しいと思いますし、どちらにしても大きなデメリットではないでしょう。

連帯保証人がいれば迷惑をかける

自己破産して免責を受ければ返済義務はなくなりますが、連帯保証人の義務は消えません。

つまり、「破産者の免責と連帯保証人は関係がない、結果的に連帯保証人は借金を背負う」ということです。

消費者金融のような無担保・無保証の借金だけでなく、連帯保証人付きの借金がある場合は、自己破産前に保証人に事情を説明すると良いでしょう。

そして連帯保証人も返せない金額の借金なら、共に自己破産する必要があるかもしれません。

官報に住所、氏名が掲載される

国が発行している「官報」に破産者の住所、氏名が掲載されます。

「官報を熱心に読み込む人間は少ない」と言われていますが、今はインターネット版があり、30日分は無料で閲覧できるので、もしかしたら自己破産が誰かに知られてしまうかもしれません。

特に「破産者マップ」のようなサイトがまた現われれば、そこから誰かに知られてしまう可能性はゼロではないでしょう。

借金、生活保護、自己破産に関する疑問

最後に借金、生活保護、自己破産に関する疑問を見ていきましょう。

生活保護費で借金返済するとどうなるの?

生活保護の費用から借金を返すとどうなるのでしょうか?

冒頭で「生活保護の費用を借金返済に回すことは原則、認められない」とお伝えしましたが、それでも実際に払ってしまった場合ですね。

その場合は生活保護の支給がストップする可能性があります。

「借金の取り立てが厳しくて、どうしても返済が必要だった」というケースでも、やはり認められないので注意して下さい。

銀行系カードローン、クレジットカード、消費者金融だけでなく、住宅ローンも対象になりますね。

「バレなければ良いのでは?」と考える受給者もいますが、銀行口座の入出金履歴から知られる可能性があります。

あくまでも生活保護は、最低限の生活をするための費用です。借金返済に回すと日常生活が厳しくなるので注意して下さい。

生活保護受給者への督促、取り立て、差し押さえ

生活保護を受給すると、通常は借金ができません。カードローンやクレジットカードの与信審査に通る可能性が低いからです。

しかし受給前から抱えている借金は別ですね。

その場合、生活が苦しくて生活保護を受給しても、金融機関のような債権者は無関係なので、今までと同じように督促を行ってくるでしょう。

厳しい取り立ては貸金業法で禁止されていますが、それでも一定の取り立て行為は認められていますから、滞納状態が続けば、生活保護の受給に関係なく、取り立てが始まると思います。

やがて仮執行宣言付きの支払督促が届き、差し押さえの手続きに進むこともありますね。

生活保護を受給していれば、通常は差し押さえる財産がないものですが、自宅に住むことは一定の条件下で認められていますから、最終的に持ち家を差し押さえられる、ということは考えられます。

どちらにしても借金を返せない状況なら、自己破産を考えて下さい。

先ほどお話ししたように、生活保護の費用を借金に回すことはやめて下さいね。

せっかく受給できたのに、停止することになりかねませんので。

生活保護受給者が自己破産すると税金はどうなる?

自己破産しても免責されない債権を「非免責債権」と言います。

国民健康保険料、年金保険料、婚姻費用、養育費などと共に、「税金」も非免責債権なので支払い義務は消えません。

ただし破産後に生活保護を受けていて、その後に発生する税金に関しては、「一時執行停止」の措置を取ることができます。

一時執行停止とは、「一時的に税金の支払いを猶予される」という制度です。

非免責債権が免除されるわけではないので、生活保護の終了後に支払うことになります。

生活保護受給者は管財事件ではなく同時廃止なのでは?

「自己破産の費用は免除されるの?」の法テラスの項目で、管財事件についてお伝えしました。

管財事件で予納金がかかる場合も、「上限20万円は法テラスが立て替えてくれる」という内容でしたね。

しかし一定の価値ある財産がなければ、通常は同時廃止になりますし、「生活保護受給者の大半が財産を持っていないのでは?」と思うかもしれません。

現金や預貯金を持っていない生活保護受給者は多いかもしれませんが、前述したように、一定の条件下で持ち家に住むことは出来ます。

そして自己破産を行えば、持ち家も処分・換価されるので、管財事件になり得るのです。

免責不許可事由が疑われる場合は管財事件になりますから、やはり同時廃止とは限らず、管財事件になるケースがありますね。

まとめ

このページでは、借金、生活保護、自己破産の関係についてお伝えしました。

借金を抱えながらの生活保護申請、生活保護受給者の自己破産、そして自己破産後の生活保護と、シチュエーションは様々です。

大切なのは、自己破産のメリット・デメリットを踏まえた上で、実際に弁護士に相談することですね。

自分ひとりで悩んでいても解決しませんが、弁護士のような専門家に相談すれば、解決の糸口が見付かることが多いですよ。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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