自己破産

自己破産したら生命保険の解約は必須?

生命保険を契約したままで自己破産はできるのでしょうか。

生命保険の解約義務に関しては、「解約返戻金の有無」および「解約返戻金の金額」が深く関わってきます。つまり、掛け捨て型の保険を契約している場合には、解約の必要はありません。問題は、解約返戻金が発生する「積立型の保険」を契約しているケースです。

当記事では、生命保険や自動車保険・火災保険・学資保険などのさまざまな保険の自己破産時の取り扱いについて解説します。積立型の保険を契約している人は必見です。

目次

自己破産時の生命保険解約は解約返戻金が判断基準

自己破産をしたとしても、すべての生命保険が解約を求められるわけではありません。解約するかの判断基準は、解約返戻金です。

こちらでは、自己破産時の生命保険解約と解約返戻金の関係性についてお伝えします。

解約返戻金なし、または20万円以下であれば解約は不要

掛け捨て型の生命保険は、自己破産時も解約する必要はありません。積立型であったとしても、解約返戻金が20万円以下であれば解約は不要です。

解約返戻金が20万円を超えていたら解約が必要

自己破産時の生命保険における解約返戻金が20万円を超えていると、解約の対象になります。

自己破産をするときは、一般的には財産を処分します。財産が現金化され、そのうえで債権者(借金相手)へ分配されるわけです。しかしすべての財産が必ずしも処分されるわけではありません。

財産として処分を求められる基準は「20万円」です。例えば、保有している自動車の価値が20万円を超えている場合も、財産とみなされ処分されてしまうわけです。つまり20万円の価値を下回れば、財産として自己破産後も保有し続けられます。

生命保険の解約返戻金は20万円を超えるケースがほとんどです。30歳男性が終身系の生命保険(1,000万円)に加入していたとします。保険料払い込みの満期が60歳であり、月の支払保険料は25,000円程度であったとすると、5年経過時点の解約返戻金は約97万円とされています。
参考:All About マネー「生命保険の解約返戻金とは?いくら戻る?

短い期間しか生命保険と契約していなかったとしても、20万円を超えるケースがほとんどなので、解約対象になる可能性が高いわけです。

※生命保険の契約期間が2年以下であれば、解約返戻金が20万円を下回ることもあります。

複数の生命保険に加入しているケース

1つの生命保険だけではなく、2つや3つの生命保険に加入している人はどうなるのでしょうか。

実は各保険の解約返戻金を合算して20万円を超えるかが鍵になります。つまり個別の生命保険の解約返戻金が20万円を下回っていたとしても、あわせて20万円を超えてしまえば解約対象になります。

たとえばAという保険会社の解約返戻金が15万円、Bという保険会社の解約返戻金が7万円であったとします。合わせると22万円となるので、解約の対象とされてしまうわけです。

自動車保険・火災保険・学資保険などの保険も解約が必要?

保険は生命保険だけではありません。自動車保険や火災保険、そして学資保険に加入している人も多いでしょう。

こちらでは生命保険以外の保険と自己破産との関係性に迫ります。自己破産するときには、生命保険以外の保険も解約を求められるのでしょうか。

掛け捨て型と解約返戻金が20万円を下回る場合は解約不要

生命保険と同じ基準が設けられています。掛け捨て型は、解約する必要はありません。積立型であったとしても、解約返戻金が20万円を下回っていれば解約は不要です。

解約が求められるケース

積立型であり、解約返戻金が20万円を超える見込みであるものは解約が必要です。解約が求められるケースの判断材料も生命保険と変わりありません。

ちなみに自動車保険については、基本的に掛け捨て型であり解約の対象外です。自己破産をしても自動車保険は契約し続けられます。

火災保険に関しては積立型もあります。学資保険に関しては、基本的に積立型です。火災保険も学資保険も、解約が求められる可能性があるのです。

賃貸物件に住んでいる人でも、近年では火災保険に加入するケースが増えています。過失がなくても原状回復費用を支払う必要が出てくることもあるからです。賃貸住まいの人も火災保険に加入している場合は、解約返戻金があるか確かめておきましょう。

複数の保険に加入しているケース

たとえば生命保険と火災保険、および学資保険に加入している場合はどうなるのでしょうか。

実は自己破産時の保険の解約基準である解約返戻金は、合算されるシステムです。生命保険の解約返戻金が10万円、火災保険の解約返戻金が7万円、学資保険の解約返戻金が10万円であったとします。合計27万円なので、20万円の基準を超えています。よって自己破産時は生命保険だけではなく、火災保険と学資保険も解約しなければなりません。

自己破産時に保険を解約しないで済む方法

生命保険や火災保険、そして学資保険などの解約返戻金が20万円を超えていると自己破産時には解約しなければなりません。しかし生命保険や学資保険は、家族のための保険でもあります。「なんとか保険を残したい」と考えている人も多いでしょう。

こちらでは、解約返戻金が20万円を超えていても保険を解約せずに済む方法をご紹介します。

自由財産の拡張許可を裁判所から受ける

自由財産とは、破産者の財産のうちで破産財団に属しない財産のことを指します。破産財団とは、破産者の財産のうち債権者(借金相手)に分配されるもののことを指します。つまり破産財団に組み込まれずに自由財産と判断されれば、自己破産をしても処分されることはありません。

自由財産には、破産者が生活する上で必要になる財産が組み込まれます。たとえば99万円までの現金は自由財産です。破産後の生活にも資金が必要なので、99万円までは保有できるわけです。

自由財産は決まっているものではなく、裁判所の判断で加えられます。まずは裁判所に対して、解約返戻金が20万円を超える保険がどうしても必要である、と説得しなければなりません。説得するためには専門的な知識も必要になるため、専門家である弁護士の力を借りるのがおすすめです。

自由財産の拡張にはコツがあります。手元に残る財産の総額を99万円以下にしましょう。規則上、現金99万円を保有した上で破産できます。よって財産の合計金額が99万円を下回っている場合には、解約返戻金も自由財産として認めてくれる可能性があるのです。

ただし裁判所によっても判断は異なるので、弁護士と相談の上、保険の取り扱いをどうするか決めましょう。

契約者貸付制度を活用する

保険会社から、解約返戻金を担保にお金を借りるのが契約者貸付制度です。

「契約者貸付制度=借金」ではありません。契約者が受け取れる「解約返戻金の前払い」に該当します。よって契約者貸付制度を利用すると、解約返戻金の額を引き下げられます。

現状で100万円の解約返戻金がある場合に、85万円を保険会社から借りるとします。解約返戻金は「100万円-85万円」となり、15万円に引き下げられるわけです。つまり契約者貸付制度をうまく利用すれば、解約対象外にできるのです。

契約者貸付制度には注意点もあります。裁判所に、財産隠しなどを疑われてしまう恐れもあるからです。得た現金の使いみちによっては、自己破産ができなくなる可能性も出てくるので注意してください。

契約者貸付制度を利用した場合は、必ず裁判所側に伝えてください。弁護士と相談の上で制度を利用するのもおすすめです。

契約者貸付制度で得た現金の使いみちに関しては、生活費や弁護士費用、および自己破産の手続費用であれば問題ありません。一方で宝くじを購入したり、競馬やパチンコなどのギャンブルに利用したりすると問題視されます。契約者貸付制度の使いみちは、明確に説明できるようにしておきましょう。

介入権制度を活用する

介入権制度とは、親族が代わりに解約返戻金相当額を支払うことで保険の解約を回避できる制度です。裁判所としては解約しようが解約しなかろうが、解約返戻金と同等の金額が提供されれば問題はありません。よって介入権制度を利用すれば、学資保険や生命保険を解約せずに契約したままの状態で自己破産できるのです。

しかし、親族に解約返戻金相当額を支払えるだけの財力がなければ利用できません。解約返戻金は数百万円に達することもあります。介入権制度の利用は、それなりの財産がある親族が協力してくれなければ難しいでしょう。

自己破産後の生命保険の加入はOK?

自己破産時に生命保険を解約したら、しばらく加入できないような取り決めはあるのでしょうか。こちらでは、自己破産後の生命保険の加入についてお伝えします。

自己破産時に生命保険を解約し、自己破産後にすぐに再び加入する行為は規制されていません。自己破産後の保険の加入は、まったく問題ないのです。

たしかに自己破産が保険会社に知られる可能性はあります。自己破産をすると官報と呼ばれる国が発行する機関紙に記載されてしまうからです。

しかし保険の場合は、保険金を支払うと補償の対象になるわけです。借金と異なり、返済というものはありません。保険料が支払われなければ、補償の対象外になるだけです。保険会社としてはリスクが低いので、自己破産が加入を断る直接的な理由になることはなりません。

確かに、自己破産をするとカードローンの利用やクレジットカードの利用は制限されます(自己破産後5年から10年程度)。個人信用情報に事故情報として登録されるので、契約自体ができないのです。カードローンやクレジットカードの利用ができなくなるのは、信用が大きく関わっているからです。

カードローンもクレジットカードも、お金を借りて利用するものです。カードローン会社もクレジットカード会社も、信用できない相手にはお金を貸せません。返済される可能性が低い、と判断できるからです。

解約したくない!自己破産時に保険を隠したらどうなるの?

自己破産すると財産を没収されます。そこで少しでも財産を残したいと考え、「解約対象の保険を隠す」といった行為をする人もいます。

自己破産時に保険を隠すと、免責不許可になるかもしれません。 免責とは「借金の帳消し」のことを指しており、消費者金融などの各種ローンの支払いが免除されるものです。保険隠しをすると、自己破産の中で最も重要な借金の帳消しが認められない恐れが出てきてしまうのです。

故意に保険を隠したらアウト!

財産だとは気づかずに申告していなかった場合は問題ありません。財産として取り扱いがされ、解約返戻金が20万円を超えていれば没収の対象となるだけです。

問題なのは、財産として保有し続けたいために故意に保険を隠しているケースです。故意の財産隠しは、免責不許可事由(免責が認められないケース)に該当します。

破産法にも、以下のように明記されています。

第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
(中略)
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
出典:e-Gov 「破産法 第252条第1項 第7項」

仮に免責が認められなくなると、借金はそのまま残る可能性が出てきます。つまり、借金を返済し続けなければならないことも考えられるのです。

最終的には裁判所が判断して免責するかを決定しますが、あまりにも悪質と判断されると保険解約どころの話ではなくなります。保険隠しは絶対に行わないでください。

免責決定後に保険隠しが発覚したらどうなる?

免責が決定したあとに保険隠しが発覚すると、罪に問われる可能性が出てきます。「詐欺破産罪」と呼ばれるに該当し、「10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方」が科される、とされているのです。

もちろん免責は取り消されてしまいます。 破産法の254条には、以下のように記載されています。

第二百六十五条の罪について破産者に対する有罪の判決が確定したときは、裁判所は、破産債権者の申立てにより又は職権で、免責取消しの決定をすることができる。破産者の不正の方法によって免責許可の決定がされた場合において、破産債権者が当該免責許可の決定があった後一年以内に免責取消しの申立てをしたときも、同様とする。
出典:e-Gov 「破産法 第254条」

「第二百六十五条の罪」とは、財産を隠したり破壊したりする行為のことを指しています。もちろん保険隠しは、財産隠しに該当し「詐欺破産罪」が適用されてしまうのです。

裁判所による保険の調査方法とは

保険の調査は、給与明細などから判断されるのが一般的です。所得控除の記載があれば、保険があると推定できるからです。

毎月、保険料の引き落としがあるはずです。通帳やクレジットカードの引き落としも調査されるため、保険を隠そうとしても裁判所に知られてしまいます。

自己破産時の保険の解約は解約返戻金に左右される

生命保険に限らず火災保険や学資保険など、保険の解約返戻金が20万円を超えると解約しなければならないことも考えられます。しかも解約返戻金は合算されます。すべての保険をあわせて20万円を超えると、没収の条件をクリアしてしまうのです。

解約したくないからといって、保険隠しは絶対にやめてください。「詐欺破産罪」を問われ、「10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方」が科されることもあります。

自己破産時の保険の解約については難しいところもあり、弁護士や司法書士への相談が必須です。契約者貸付制度などの対応策もあるので、専門家からアドバイスを貰った上で適切な方法を選択しましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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