自己破産

自己破産すると立ち退きしないといけない?

自己破産手続きを行うと「住んでいる建物から立ち退かなければならないの?」と悩んでいる方も多いと思います。

このページでは立ち退きに関して、自己所有のケースと、賃貸物件のケースに分けて解説します。

自己所有の建物の処分方法に『任意売却』と『競売』がありますが、主に『競売』について詳しくお伝えしますね。

目次

自己所有のケース

まずは自己所有の自宅のケースです。

住宅ローンを支払いながら自宅に住んでいる場合、「自己破産するとどうなるの? どのくらいの期間で住めなくなるの?」と疑問に思う方が多いようです。

自己破産を弁護士事務所などに依頼すると、住宅ローンの返済を止めることになりますが、すぐに退去する必要はありません。

やがて自宅から出ることになりますが、一定期間は住宅ローンを払わずに自宅に住むことが出来ます。

以下の2パターンで変わりますね。

1.任意売却

任意売却とは「不動産業者に買い手を見つけてもらって自宅を売却する」という方法です。

早期に買い手が見付かれば、住宅ローンを払わずに住める期間も終了します。

「自宅に住める期間が短くなるのか…」と思われるかもしれませんが、売買代金から引越し費用を負担してもらえることもあります。

金額は様々ですが、売買代金の中から30万円前後の引っ越し費用を貰えるケースもあるようです。

そのため、この後に説明する競売よりもスムーズな手続きと言えるでしょう。

2.競売

競売とは、裁判所によって買い手を見つけてもらう手続きです。

住宅ローンが払えなくなり、不動産を担保にして借りたお金を返済できなくなった時に行われるのが一般的です。

競売開始から自宅の処分、立ち退きまでの流れを見てみましょう。

立ち退きまでの流れ

競売が開始されると、裁判所は調査を行い、自宅の売却基準額を定めます。

その価格を元に「買いたい希望者」を募集して入札を行い、最も高い金額で入札した人が買受人となります。

分かりやすく言うと、オークションのようなシステムですね。

その後、買受人が代金を納付すると、買受人が物件(自宅)の所有権を取得しますので、自宅から出て行かなければなりません。

すぐに出て行かない場合は、買受人が裁判所に「引渡命令」というものを申立て、その後に「不動産明渡しの強制執行」を申立てることになります。

それにより強制執行が可能になりますが、すぐに自宅から強制的に追い出されるのではなく、まずは「明渡しの催告」というものが行われます。

裁判所の執行官が「○日に強制執行します」と伝える手続きですね。

それと共に、搬出業社が荷物の運び出しに必要な費用の見積りを行い、明渡しの催告後も立ち退かない場合は強制執行が行われます。

期間は1ヵ月半~2ヵ月と言われていますので、その間に自宅から立ち退く必要があるでしょう。

立ち退き時の対策はある?

自宅から運び出された荷物の保管料・引き取り料、強制執行の費用は自己負担です。

金銭的に苦しい中で自己負担を避ける、もしくは軽くするには、何かしらの対策が必要になりますね。

具体的には以下の3つです。

1.買受人から立ち退き料を貰う
2.任意売却へ切り替える
3.個人再生を検討する

強制執行になると、まずは買受人が費用を立て替えます。

その後、本人に費用を請求してくるわけですが、必ずしも全額を回収できるとは限りません。

そのため「自分から退去します」と買受人に伝え、交渉することにより、立ち退き料を貰える可能性が生じるのです。

買受人が応じる義務はなく、あくまでも交渉次第になりますが、もし立ち退き料を貰うことが出来れば、金銭的な負担は軽くなりますね。

2つ目は(前述した)任意売却です。

競売の前日までに手続き可能なら、任意売却に切り替えられます。

特に親族に自宅を買ってもらうことが出来れば、権利は失うものの、住み続けることが可能になります。

親族が難しければ、リースバックという方法もあります。

リースバックとは、「不動産業者が買い取った自宅に賃貸で住ませてもらう」という手法ですね。

親族間の売買と同様、権利は失いますが、そのまま住み続けられるというメリットがあります。

長年自宅に住んでいれば愛着もわきますし、「今さら引っ越したくない、今後も住み続けたい」と考えることもあるでしょう。

その場合に不動産業者に買ってもらうことにより、賃貸で住み続けられるわけです。

3つ目は個人再生です。

最初から自己破産の場合は別ですが、個人再生を選択することで、競売を止められる可能性があります。

個人再生は大幅に借金減額できる手続きです(基本的には元本が5分の1になります)

住宅ローン以外の借金が500万以下、収入を継続して得られる見込みがあれば利用できますが、それ以外にも利用条件がありますので、弁護士や司法書士に相談すると良いでしょう。

尚、住宅ローンの滞納者が競売を止めるためには、保証会社が弁済を行ってから、6ヶ月以内に申立てる必要があります。

立ち退き料の相場はどのくらい?

運搬費用や強制執行の費用を買受人が負担すれば、総額で60万~80万円はかかると言われています。

そのような費用は決して安くないですし、自主的に自宅から出て行くと言えば、費用の5割は払ってくれそうな気もします。

しかし(繰り返しになりますが)、買受人に立ち退き料を負担する義務はないため、数万円程度が相場と言われています。

もちろん買受人の状況やタイミングによっては、より高い金額を提示してもらえることもあるでしょう。

あくまでも交渉次第ということです。

立ち退き交渉を進めるには?

立ち退き料を貰えるかどうかは交渉によります。

私的な交渉のため、買受人の心理を考えて交渉を進めることも大切です。

たとえば、一般的に買受人は、代金納付から1ヶ月後に強制執行を行いますし、その際に10万円ほどの出費が発生します。

つまり1ヶ月以内に立ち退きを行えば、買受人は強制執行の費用を払わずに済むのです。

「1ヶ月以内に自宅から出て行きます」という前提で立ち退き交渉を進めることで、柔軟に対応してくれるかもしれません。

結果的に、充分な立ち退き料を貰えることもあるのではないでしょうか。

買受人の方から「立ち退き料を払います」と言ってくることはまずありませんので、自分から交渉を行うことになりますね。

自宅に住める期間はどのくらい?

ここまでお話ししたように、競売とは、裁判所で買い手を見つける手続きです。

住宅ローンの債権者は、滞納開始から6ヵ月過ぎた後に競売手続きに入ります。

実際の競売手続きに関しても、6ヵ月はかかると言われています。

そのため、滞納から退去までの期間は約1年と考えると良いでしょう。

「1年ある」と思えば気持ちは楽かもしれませんが、新たなスタートを切るためにも、早期に引っ越しが可能かどうかを検討して下さい。

任意売却と競売、結局どっちが良いの?

住宅ローンの債権者次第ではありますが、任意売却の方がスムーズに進むのではないでしょうか。

競売には心理的なプレッシャーもありますし、不動産業者にお願いして自宅を処分できるなら、その方がメリットも多いと思われます。

もちろん状況によって変わりますので、自己破産に詳しい弁護士、司法書士などに相談すると良いでしょう。

賃貸物件のケース

次に賃貸物件のケースを見ていきます。

基本的に賃貸物件(アパートやマンションなど)の場合は、自己破産しても出て行く必要はありません。

持ち家は自己破産で手放すことになりますが、賃貸のアパートやマンションから退去しなければならない、という決まりはないのです。

たとえ自己破産が大家や管理会社に知られても退去する必要はありませんが、家賃を滞納している場合は別ですね。

その点について詳しく見ていきましょう。

自己破産しても家賃は払える?

滞納家賃を自己破産に含めた場合は、賃貸借契約を解除されることがあります。

電気やガスは法律により、自己破産しても止められませんが、家賃は別ですね。

「それなら自己破産しても家賃だけ払おう」と思うかもしれませんが、ケースバイケースで難しいと言われています。

弁護士に自己破産を依頼すると、受任通知というものが債権者に送られますが、その後は勝手に返済できなくなります。

滞納家賃も弁護士に伝える必要がありますし、滞納分を優先的に払えば、かたよった返済とみなされることがあるのです。

その結果、「自己破産後の免責を受けられない」というケースも考えられます(自己破産しても免責を受けなければ、借金の支払義務は残ります)。

ただし、自己破産の本来の目的は「経済生活の再生の機会の確保」なので、裁判所によっては、1~2ヵ月分の滞納家賃の支払いが認められるケースもあるようです。

生活に必要な費用として認められる、ということですね。

しかし1年、2年のような長期間の滞納家賃を、自己破産前に一括で払うのは難しい、と言われています。

消費者金融や信販会社など、他の債権者との関係があるので、どうしても、かたよった返済になってしまうのです。

親族や友人に家賃を払ってもらう

かたよった弁済の定義に「自分の財産から他の債権者よりも優先に支払うこと」があります。

つまり、自分の財産ではなく、親族や友人のお金なら問題ありません。

親族や友人の状況次第ではありますが、「家賃くらいなら払ってあげよう」という方がいる場合は、お願いしてみると良いでしょう。

親族、友人が保証人になっていれば、どちらにしても未払い分が保証人に請求されます。

その前に事情を説明する必要がありますし、お願いしやすいタイミングではないでしょうか。

他にも、大家さんや管理会社を説得して、自己破産の開始決定後まで待ってもらう、という方法があります。

自己破産の開始後に処分されなかった財産や、新しく取得した財産で滞納分を払うのは問題ありません。

たとえば自己破産の開始後に得た給料から払うのは問題ない、ということです。

自己破産の開始後、自由財産から払うことは最高裁でも認められています。

滞納してもすぐには追い出されない

家賃を滞納しても、すぐにアパートやマンションを追い出されるわけではありません。

滞納は最低2ヵ月以上、その後、1週間程度の期間を定めて催告することが必要とされています。

さらに賃貸借契約の解除後も2ヵ月程度はかかりますし、その後の「明渡しの催告」に関しても、1ヶ月ほどの猶予期間があります。

もちろんスムーズに家賃を払う方が良いですが、期間的な余裕はある、と言えるでしょう。

引っ越しも考える

ただし契約解除後も家賃を支払う義務はあります。

自己破産前の滞納分は免責されても、その後の損害金は払う必要がありますから、「早期に引っ越しを考える」という選択も現実的です。

長期間の滞納家賃を払うよりも、安い家賃のアパートに引っ越す方が、結果的に家賃が安いケースもありますよ。

今より安いアパートに引っ越すことに抵抗を感じるかもしれませんが、背に腹は変えられません。

安いアパートでも良い物件はありますので、日頃から物件をチェックすると良いですね。

「自己破産中は審査に通らないのでは? アパートを借りれないのでは?」と思われるかもしれませんが、保証会社次第と言えます。

保証会社がクレジットカード、信販会社の系列なら難しいかもしれませんが、そうでなければ一般的に問題ないようです。

ただしタワーマンションのような高級賃貸の場合、事前に「自己破産や債務整理の経験はありますか?」と仲介の不動産会社に聞かれることがあるそうです。

あくまでも高級賃貸ですから、自己破産中に引っ越す場合には当てはまらないでしょう。グレードを上げるための引っ越しではありませんからね。

尚、自己破産すると信用情報機関にその事実が登録されますが、5年~10年で消えると言われています。

賃貸物件に住める期間はどのくらい?

もう少し賃貸物件に住める期間についてお話しします。

まず、賃貸借契約を解除する原因は「履行遅滞」です。

家賃が遅れている(履行遅滞)ための契約解除ですね。

その際、家主は契約解除の通知を事前に行うことになります。

また、家賃を1ヶ月滞納したくらいでは、賃貸借契約は解除できません。

「信頼関係が損なわれたといえる程度の債務不履行がなければ、賃貸借契約は解除できない」とされているからです。

どのくらいの滞納で「信頼関係が損なわれたと言えるか」に関しては、一般的に3ヶ月程度と言われています。

3ヶ月程度の滞納があり、賃貸借契約が解除された後、家主は「建物の明渡請求訴訟」を行うことが出来ます。

その判決が出るまでに、3ヶ月以上かかるケースが多いようです。

契約解除後も住み続ければ不法占拠者になりますので、裁判の勝ち目はありませんが、それでも判決までに3ヶ月以上かかる、ということです。

さらに判決後も、強制執行が行われるまでに時間が掛かりますから、「自己破産から最低でも1~3ヵ月は猶予期間がある。賃貸物件に住むことが出来る」と言えるでしょう。

まとめ

以上、自己所有と賃貸物件、それぞれのケースで解説しました。

自己所有の場合は「任意売却」と「競売」という方法に分かれます。

賃貸物件の場合は家賃滞納による退去の可能性がありますが、対策や期間を参考にして下さい。

それぞれで事情は異なりますので、状況に合わせて選択して下さいね。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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