自己破産

社長が自己破産すると会社代表を辞めなくてはいけないのか?

会社経営をしていると、借入れをしている事も決して珍しくはないと思います。 借入れの額が大きくなったことによって、社長個人が自己破産をしてしまうと会社代表も退く必要があるのでしょうか?

また、社長個人が自己破産すると会社も破産しなくてはいけないのでしょうか?

ここでは社長個人が自己破産した場合、代表を退く必要があるのか? また、代表取締役やCEO個人が破産した後に、再び代表取締役になることは可能なのか解説していきます!

目次

社長個人のみの自己破産は可能

法律上は、個人と法人は別人格を持っています。そのため、個人の資産と法人の資産は、別として考えています。 例えば、日本の大企業であるTOYOTAの社長である豊田章男さんは、個人の資産も多くあります。しかし、豊田章男さん個人の資産が、そのまま会社であるTOYOTAの資産にはならないということです。

自己破産に関しても個人・法人それぞれが自己破産しても問題はありません。そのため、個人である代表取締役のみの自己破産は可能になります。 代表取締役(個人)が破産した場合は、代表取締役名義の家や車などの個人資産のみが失われる形になります。会社名義の資産は維持されるため、会社名義の社宅や車は残される事になります。

会社の負債も、社長個人が会社債務の保証人になっている場合は、社長個人の自己破産によって保証義務はなくなります。しかし、会社の負債自体は残るため社長個人が返済を継続するか、会社を別個人もしくは法人に譲渡し、返済を行なっていく必要があります。

実際は一緒に自己破産申請する事が多い

実際は法人・会社だけを存続させて、社長個人が破産するというケースは非常に稀です。

理由としては、3つあります。 1つ目は会社の代表取締役が破産すると、自動的に会社と社長個人の委任契約が失われます。つまり、自動的に会社の代表取締役から、自動的に下ろされてしまう事になります。そのため会社は、代表取締役が不在となる状態となってしまいます。 会社自体に負債を抱えているのに関わらず代表取締役がいない状態になると精算手続きを進める事ができないため不都合が生じます。負債を抱えている会社を引き取ってくれる個人・法人がいない場合は精算を行うために裁判所から会社破産の手続きを勧められる場合があります。

2つ目は代表取締役個人が会社に対して資金の貸付を行なっていることや、会社からの給与を止めていた場合です。 代表取締役・役員が会社に対して貸付をしている場合は、貸付金が代表取締役の資産となります。社長個人の自己破産の原則として、資産の精算が入ってきます。そのため、代表取締役個人が会社に対して貸付金の請求を行なっていきます。会社からの給与を止めていた場合も同様で、本来会社から代表取締役個人に払う予定だった未払いの給与額はそのまま代表取締役の資産(債権)になります。貸付金や未払金の額が多額になっている場合は、会社が払えなければ破産を選ぶしかない可能性が出てきます。

3つ目は零戦企業の場合は、会社と個人の資産がきちんと区別されない事が多く、社長個人の自己破産でも、法人の資産調査が必要になるケースがある可能性がありからです。

以上の理由をもとに現実的には社長個人が破産すると同時に法人・会社も破産することが多い理由です。

自己破産しても取締役は可能

現行の法律では、自己破産の手続き中でも再度代表取締役になることは何も問題はありません。

現在の会社は【会社法】で規定されています。 会社法の欠格事由は次の通りになっています。

1:法人
2:成年被後見人・被補佐人
3:会社法違反・金融商品取引法違反の罪を侵し、刑執行後もしくは執行を受ける事がなくなった日から2年を経過しない者
4:3以外の法令違反により禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたはその執行を受ける事がなくなるまでの者(執行猶予中は除く)
会社法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口より

法的な違反をした者が期間を設けて代表取締役になる事ができないとされております。つまり、自己破産の手続き中でも株式会社の代表取締役に就任する事は可能になります。

会社存続の場合は一度退任する必要がある

多くの場合は、会社と社長個人の自己破産は同時に行います。 しかし、事業別に整理をすることによって会社破産をせずに済む場合もあります。 このような時には、社長個人は自己破産し、会社自体は継続する事も可能になります。

しかし、気を付けないといけないのは、前述した通り社長個人からの会社への貸付金や会社から給与を猶予している場合です。その際は、自己破産時に半強制的に、会社から社長個人へ債権(お金)を渡す必要があります。 そのため、会社から社長個人に債権(お金)が移動する際は多くのお金が動く事になり、会社の資金管理に注意が必要になります。

それでも、社長個人のみが自己破産し会社存続が見込める場合は、一度代表取締役から退任する必要があります。 これは民法に規定されており、代表取締役の自己破産によって「民法653条3項により会社との委任契約が終了する」事となります。代表取締役は、会社法の607条1項5号によって破産が「法定退社事由」となりますので、法律に乗っ取って一度代表取締役から退任する必要があります。

退任後は、株主総会を開き取締役の再任の決議を受ける事で、再任を受ける事ができます。 法律上は、自己破産の手続き中でも取締役に再任される事は可能ですが、事前に債権者の理解を得ておく必要があります。

会社と個人が同時に自己破産する金銭的メリット

理論上は、会社と社長個人が別に破産するという方法が取れますし、強制的に同時破産を勧めているわけではありません。 しかし、中小企業や1人会社の場合は、殆どが同時破産を行う事が多いです。理由としては以下のとおりです。

  • 社長の自己破産により会社の代表者が不在になる。
  • 会社を破産させなければ、債権者が損益処理できない
  • 中小企業、1人社長は個人と会社の資産が明確に区別されていない場合がある。

自己破産・会社破産はネガティブなイメージがありますが、破産するということは借金を0にする手段であります。会社法に乗っ取って、早期の経済的再生ができるように規定が設けられています。 社長個人の自己破産手続き時でも、代表取締役になることができるという者、早期の経済的再生ができる1つになります。

また会社と個人が同時に破産するメリットとしては、法人破産でも少額管財を利用できるため、合計最低額20万円で済む場合があります。

以前は、通常の会社を破産しようとすると、高額な金額(予納金)が必要でした。 法人の場合は、取引関係や資産が複雑になり、必ず管財事件になります。そのため通常管財では、最低70万円の金額が必要でした。

個人は、これとは別の予納金が50万円から必要になるため、120万円のお金が必要になったということもあったのです。

現在は、最低20万円から個人の自己破産・会社破産を行う事が可能になりました。

会社破産でも少額管財が使えるパターン

法人破産でも、少額で行う事ができる少額管財ですが、主に東京地裁では3つのパターンが挙げられます。

  • 法人併存型
  • 法人単独型
  • 法人精算型

法人併存型とは、法人の規模が小さく実態は、個人と法人が混同していた状態です。 この場合は、法人・個人に同じ破産管財人がつく事になるので、予納金は最低20万円程度に済む事になります。

法人単独型とは、法人・個人ともに資産が殆どない場合で、法人だけを単独で自己破産させる場合です。実質的に廃業状態にあり、法人に明らかに資産がない場合は、法人だけを単独で破産させることです。

法人精算型とは、法人に多少の資産・債権があり、若干の換価業務が必要でもそこまで複雑でなければ、少額管財を認めることができるという制度になります。

これらが制度としてあることで、予納金が20万円で済むケースが非常に多くなりました。しかし、いずれに場合にも弁護士が必要となります。司法書士や本人申し立ては不可能となります。

法人破産・個人の自己破産の費用の調達

法人の少額管財が認められれば、最低20万円~の費用で納まり、個人の自己破産と法人破産は安く抑えることができます。

しかし、法人破産の場合は弁護士が必要になるため、弁護士費用を別に用意する必要があります。 法人と個人の破産手続きの弁護士費用は、別々になることもあり少額管財と合計すると、60~100万円程度の費用を準備する必要があることも珍しくありません。

法人破産を行う場合は、事前に弁護士に相談することになりますが、一般的には売掛金があればそれらを回収し破産費用に充てます。 売掛金だけでは難しい場合は、事業譲渡や会社資産の売却によって破産費用を捻出する事を検討する必要があります。

実際に、売掛金の回収や資産売却は、担当弁護士と必ず相談する必要があります。 なぜなら、資産の売却や事業譲渡後に裁判所から委託された破産管財人により、売却価格・事業譲渡費用が適正でないと判断された場合、破産手続きが否認されてしまう可能性があります。

本来の破産管財人の仕事として、債権の回収や事業の売却となっています。それらを勝手に資産売却されるのは、許される行為ではないと見なされる可能性があります。 あくまでも、自己破産を準備するための最低限の行為だけが許されます。

会社の経費として会社代表個人の破産費用を払っても良いのか?

厳密に伝えると会社と、個人はあくまで別々の人格を持っています。 そのため、個人のために弁護士費用を払うということは、会社が個人のためにお金を出すのと変わりありません。 結果として、法人の債権者を害する行為と捉えられてもしたがないと言えます。つまり、破産管財人に否認されてしまい法人破産・自己破産ができない可能性があります。

一方で破産費用に関してはよほどの事情がないかぎり、柔軟に対応すべきという声もあります。

平成22年8月27日大阪地裁では、法人が社長個人の弁護士費用を支払ったケースで、破産管財人が費用を認めないとしたケースもありました。

この辺りも弁護士と相談し進めいていく必要があります。

まとめ

会社経営をしていると資金確保の為に、社長個人の借金が増えていく事があります。 個人のみの自己破産は法律上可能ですが、中小企業や1人会社の経営では個人と法人の同時破産が多いです。

また個人のみで破産した場合は代表取締役から強制的に一度退任することになる為、代わりに代表取締役の方がいないと代表不在の法人になってしまいます。その為、代わりの代表取締役がいなければ会社破産をせざるを得ないケースがあります。

一方で、社長個人の自己破産手続き期間中でも代表取締役になる事は可能ですし、一度退任しても株主総会を経て再度代表取締役に就任する事ができます。 そういった意味では会社破産はリスタートが切りやすい制度であります。

実際に、法人・個人の破産は弁護士に相談する必要になります。債務整理に強い弁護士に相談し、一緒に方向性を作っていく必要があります。一度法人・個人の自己破産を検討されている方は相談されてみてはいかがでしょうか?

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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