自己破産

自己破産をすると収入は没収される?収入に関わる条件や生活への影響は?

自己破産手続きによって、免責許可が決定されると、財産を債権者への返済に充当する代わりに、借金が帳消しになります。処分される財産としては住宅や自動車、保険などが含まれます。自己破産を検討している方にとって、新たな生活を始める上で、財産に収入が含まれるのかは気になるところでしょう。

そこで本記事では、自己破産における現金の取り扱いについて詳しく解説していきます。収入に関わって、自己破産するための条件やその後の生活への影響なども解説するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

目次

収入に関わる自己破産するための条件

自己破産は、任意整理や特定調停、個人再生といった債務整理の中でも、最終手段と位置付けられる方法です。そのため、借金を帳消しにしたいからといって誰でも選択できる方法ではありません。自己破産するためには、収入の有無も関わってくるので、どのような条件があるか見ていきましょう。

支払い不能であること

自己破産は、債権者への支払いができない「支払い不能」の状態でなければ、手続きを開始することができます。自己破産について定めている破産法に以下のように規定されています。

破産法第十五条 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続きを開始する。

(引用:「e-Gov」破産法 第十五条

多額の債務が発生していたとしても、十分な収入があり、返済できる状態であると裁判所が判断すれば自己破産することはできないのです。支払い不能かどうかを判断する際、利息を免除した上で3年以内に完済できるかを基準に、債務と収入のバランスを見ます。

例えば、借金が720万円で収入が月10万円だった場合、借金720万円を月々の支払いに換算すると20万円の返済が必要になるので、支払い不能と見なされるでしょう。収入が月20万円だったとしても、全額返済に充てるのは現実的ではなく、支払い不能と認められる可能性が高いです。また生活保護を受給しているならば、そもそも受給したお金を返済に充てられないので、支払い不能と判断されるでしょう。

一方、借金が720万円で収入が月50万円であれば、月々20万円の返済に対応できる可能性が高く、自己破産は認められない可能性が高いです。

自己破産手続きのためのお金を用意できる

自己破産手続きをするためには、予納金と言われるお金が必要です。予納金とは、自己破産手続きを開始するための裁判所必要で、1万円~50万円納めなくてはいけません。収入や預金から予納金を捻出できない場合は、原則自己破産することができません。

借金に苦しむ方にとっては、予納金を準備するのは容易ではないでしょう。予納金を用意できないから絶対自己破産できないわけではなく、裁判所は相談に対応しています。支払いを免れることはできませんが、裁判所によっては分割支払いに応じてくれる場合があります。予納金を準備できない時は、まず裁判所に相談するのがおすすめです。

裁判所に相談したものの、分割支払いに応じてもらえないこともあります。その場合は、住宅を売却して費用を工面する方法があります。住宅など財産を自己破産前に処分し返済に充てることは認められていませんが、裁判所費用または弁護士費用に限って財産の売却が認められています。売却できる持ち家を持っている方は検討したい方法です。

それでも予納金を準備できない場合は、親族や友人などの第三者に頼む、裁判所費用が貯まるまで自己破産を待つことになるでしょう。

自己破産で免責許可されないケース

自己破産を認められない条件として、破産法には免責不許可事由が規定されています。免責不許可事由の中には、収入などのお金の使い方に関わるものもあります。破産法252条第1項を参考にまとめると免責許可されないケースは以下のようになっています。

免責不許可事由

  • 債権者を欺くために、財産を隠したり、損壊したりすること
  • 財産を換金して破産手続きに影響を与えたこと
  • 特定の債権者に返済した(偏頗弁済)
  • 浪費やギャンブルなどによって借金をした
  • 詐欺によって財産を取得した
  • 裁判所に嘘をつき申告した

収入に関わる免責不許可事由としては、財産隠しと浪費・ギャンブルによる借金が挙げられるでしょう。

自己破産で免責許可されると、住宅や自動車、保険などの財産を失い、一定以上の現金や預金も処分対象です。収入で得た現金や預金などを隠し裁判所を欺いた場合、自己破産は認められません。もし隠したまま自己破産が成立しても、その後に発覚すれば詐欺破産罪に問われ、懲役または罰金を受けることになります。できるだけ収入を残したいと思っても、絶対に隠してはいけません。

収入などのお金を浪費・ギャンブル・投資などで使い借金をしていた場合も、自己破産が認められない可能性が高いです。ショッピングやパチンコ、競馬、株などに収入をつぎ込んでいる場合は、債務整理が難しくなるでしょう。

自己破産は収入がなくてもできるのか

自己破産するためには、支払い不能であることが求められるとわかりました。借金に対して現状の収入では返済できない場合と解説しましたが、そもそも収入がない場合は自己破産できるのでしょうか。収入がない状態の位置づけも合わせて確認しておきましょう。

自己破産には返済能力は求められない

自己破産は債務の支払い義務を帳消しにする債務整理であり、収入がない状態に関わらず、返済能力は求められません。一方、任意整理や特定調停などの債務整理については、借金を減額して返済を続けていくので、返済に対応できる収入が必要になります。

収入がなくても自己破産できますが、免責不許可事由に該当していれば、当然自己破産は認められません。収入がなくなった理由が、ギャンブルや浪費などであれば難しくなるでしょう。

また、収入がない・職がない状態は、収入・職がある人に比べると不利に働く場合もあります。生活態度や生活内容に着目され、免責にふさわしくないと判断される可能性があります。現在無収入・無職であっても、就職活動をしている、やむを得ない理由がある状態であると示すことで、免責許可に向けてプラスに働くでしょう。

収入がない状態の位置づけ

収入がない状態には、置かれている状況によって様々です。例を挙げるとすれば、無職・専業主婦または主夫、病気、ケガ、障害などの状態が該当するでしょう。自己破産は免責不許可事由に該当していなければ収入は求められませんが、それぞれの状態で自己破産を成功せるために意識したいポイントがあります。

まず無職の場合ですが、「働ける状態だが動いていない」よりも「働く意思があって就職活動をしている」という方が、生活態度の面で良い印象を与えることができます。自己破産は今後の生活を立て直してもらいたいという目的があるので、生活態度は重要な要素です。

専業主婦・主夫の場合も、無職の場合と同じく、生活態度で示す必要があります。パートで働き始めた、家計管理を見直し家計簿をつけている、浪費をやめたなどの取り組みをアピールできれば、自己破産手続きがスムーズに進むでしょう。

病気・ケガ・障害を抱えている方は、やむを得ず収入・職がない状態であって、自己破産において不利になることはありません。裁判所では判断できない精神疾患などを抱えている場合は、病状を証明する診断書や障害者手帳などを用意しておくと良いでしょう。

自己破産における収入の取り扱い

収入に関わる条件などをクリアして自己破産をした場合、借金がなくなる代わりに、一定の財産は処分されます。収入も財産に含まれ、処分対象になる場合・ならない場合があります。自己破産における収入の取り扱いを解説していきます。

すでに支払われている収入

すでに支払われている収入について、その収入がどのように管理されているかで取り扱いが異なります。手元に持っているなら現金として、銀行口座に預けているなら預金として、自己破産で換価処分になるかが判断されます。

現金については、99万円以下の現金については自由財産として認められます。自由財産とは、自己破産で処分されない財産なので、自己破産をしても一定の現金が手元に残ります。

預金が処分されるかどうかには、20万円というボーダーラインがあります。20万円以上の預金については処分対象になるので、銀行口座を解約しなければいけません。ここで注意したいのは、口座あたりの預金ではなく、預金全体で20万円が基準になることです。複数の口座に預金を分けている場合は、預金の合計が20万円以上だと処分対象になります。

支払われる予定がありまだ支給されていない収入

収入は、まだ支給されていないが、来月に支給される、ボーナス月に支給されるなど、支払われる予定がわかっている場合があります。その場合、破産手続き開始決定時点で発生している収入について、収入の4分の3は差押禁止財産・4分の1は自由財産と扱われるので、収入の4分の1は手元に残ります。賞与・ボーナスも同様で、支給される日が決まっていれば、一部が処分対象となります。

例としては、4月20日に破産手続きを開始し、4月25日の給料日に20万円の給与が支給されるとします。破産手続き開始時点で20万円の給与が発生しているので、5万円を残して15万円が換価処分されます。

まだ支払い予定がなく将来的に発生する収入

給与・賞与・ボーナスといった収入は、働き続ける限り、将来的に発生する収入があります。決定していないものの、来月の給与、ボーナス月の支給などもありますが、処分対象になるのでしょうか。

自己破産における収入の取り扱いは、あくまで破産手続き開始決定時点で発生している収入です。そのため、将来的に発生する財産だとしても処分対象にはなりません。自己破産後は普段通り給与・ボーナスなどを財産として所有することができます。

自己破産における収入の取り扱いで気になるポイント

自己破産における収入の取り扱いにおいて、いくつか疑問を持ちやすいポイントをまとめてみました。未払金や差し押さえられている収入などについて、あらかじめ理解しておきましょう。

未払いの収入は処分対象になるのか

支払われる予定があったものの、未払いのままになっている収入があるかもしれません。未払金については、職場に対して支給を要求する権利があります。

自己破産においては、職場に対して未払いの収入を要求する権利にも効力が働き、権利そのものを差し押さえることも可能です。そのため、未払いの収入であっても、処分対象になる可能性があります。

すでに差し押さえられている収入は戻ってくるのか

債権者への返済が滞っていると、債権者から給与を差し押さえられる場合があります。収入がすでに差し押さえられている場合、その収入が戻ってくることはありません。収入がなくなっており支払い不能と認められるので、自己破産手続きを開始しましょう。

場合によっては、差し押さえが取り下げられることもあります。これまでに差し押さえられた給与は戻ってきませんが、取り下げ後は給与をもらえるようになります。

自己破産手続きに収入を証明する書類は必要か

自己破産手続きにおいて、債務者が支払い不能かを判断する必要があるので、収入を証明する書類の提出を求められます。給与収入については、数か月分の給与明細を提出しましょう。預金口座で収入を管理している場合は、口座残高に限らず、所有しているすべての口座の通帳を提出する必要があります。

収入など自己破産がその後の生活に与える影響

自己破産によって、借金は帳消しになりますが、一定の収入をはじめとする財産を失うので、その後の生活がどうなるのかも知っておきたいポイントです。収入など自己破産がその後の生活にどのような影響を与えるのかご紹介していきます。

住宅や自動車などの財産を失う

自己破産をすると、99万円以下の現金や20万円以下の預金など、一定のすでに支払われている収入は手元に残せます。ただし、価値の高い財産については、ほとんどの場合財産は処分され、その後の生活に支障をきたす可能性が高いです。

住宅については、ほとんどの場合処分対象となります。ローンを完済していたり、現金一括購入していたりしても、住宅には高い価値があるので、債権者への返済に充てられます。どうしても住宅を残したい場合は、第三者にローン返済・購入してもらう、財産を残せる債務整理を検討するといった方法をとる必要があります。

自動車は、中古車市場での価値が20万円以上である場合、自動車ローンが残っている場合は処分対象です。自動車ローンを返済しきっていて価値が20万円以下の自動車は手元に残せる可能性があります。また特例として、親の介護や病気の治療などで車が必要不可欠な場合にも自動車の維持を認められるかもしれません。

クレジットカードをつくれない・ローンを組めない

自己破産をすると、信用情報に傷がつき、ブラックリストに登録されます。信用が前提になるクレジットカードやローンは一定期間利用できません。クレジットカードで高額商品を購入したい、ローンを組んで住宅・自動車を購入したいと思っても不可能です。モノを購入してはいけないというわけではありません。現実的ではありませんが、現金で住宅・自動車を購入することは可能です。

ブラックリストに登録されるのは、5~10年と言われています。ブラックリストから抹消されればクレジットカードやローンを利用できるようになります。ただし、クレジットカード会社やローン会社が独自にブラックリストを作成している場合もあるので、金融事故を起こしたローン会社・クレジットカード会社は避けるのがおすすめです。

免除されない債務は払い続けなくてはいけない

自己破産ではほとんどの債務が免除されますが、一部の債務は残ります。払い続けなければいけない債務には、養育費や慰謝料、損害賠償などがあります。その他にも、税金は納める必要があるので、まったく支払いがなくなるわけではありません。

保証人・連帯保証人に迷惑がかかる

債務者本人の債務は免除されますが、財産で支払いきれなかった債務は残ります。残った債務の支払い義務は保証人・連帯保証人に移るので、債務者の代わりに支払うよう、債権者から一括請求が行われます。支払えた場合にも金銭的負担をかけますが、もし支払い能力がなかったら財産を失ったり、債務者と一緒に自己破産したりするかもしれません。

保証人・連帯保証人にはどうしても迷惑がかかってしまうので、あらかじめ承諾を得るようにしましょう。自己判断だけで手続きを進めてしまうと、自己破産後もトラブルを抱えることになります。自分で自己破産を検討している状況や保証人・連帯保証人への影響を説明できない時は弁護士に依頼するのがおすすめです。保証人・連帯保証人への説明だけでなく、その後の対応についてもサポートしてくれるでしょう。

保証人・連帯保証人になれない

自己破産をするとクレジットカード・ローンと同様に、一定期間保証人・連帯保証人になることができません。子どもがいる場合、学業に充てる収入が捻出できなかったとしても、奨学金の保証人になれず、お金を借りられません。子ども名義で借りられる例外はあるものの、自己破産には子どもの将来に影響を与えるリスクがあります。

就職や昇進には影響しない

自己破産が直接的に就職や昇進に影響を与えることはありません。会社に知らされることもありませんが、給与を差し押さえられた場合は発覚するおそれがあります。会社によって自己破産の捉え方が異なるので、印象が悪くなることもあるでしょう。あらかじめ給与が支給される口座を変更しておけば、差し押さえで発覚することはありません。

まとめ

本記事では、自己破産における収入の取り扱いについて詳しく解説しました。

自己破産において、すでに支払われている収入は現金・預金として扱われ、金額に応じて処分対象かどうか判断されます。来月の給与など支払いが決まっている収入については、破産手続き開始決定後発生している給与が対象になり、4分の3が処分対象です。まだ発生していない将来の収入は対象ではないので、自己破産後普段通り受け取れます。

収入に関わる自己破産をするための条件やその後の生活への影響も参考にして、収入の取り扱いを理解した上で、自己破産手続きを進めましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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